第二十八話 明後日に向かって走れ!
「感動のシーンの所、申し訳ありませんが・・・。
なにか、忘れ物をしてるような・・・」と四谷さん。
「フム、そういえば、なにか、もやっと気になるような・・・。
布団は畳んだし、燃えるゴミは出したし、朝食後にちゃんとガスの元栓も閉めたし、朝刊もチラシはチェックしたし・・・」
「いえ、まあ、そんな重要なことではないとは思うのですが・・・」
え?寝起きって、ごはん食べる以外に、そんなに色々なイベントがあるんだねえ・・・。
布団って、畳むものなの?そんな労力を使ったら、またぞろ朝っぱらから寝込むんじゃ、ないかな?
そしたら、また布団を敷かないといけないし、やっぱり万年布団が効率的だよねー・・・。
ゴミだって半年はスルー出来るはずだよね?私の部屋は溜まる前に、なんか知らん間になくなっているけど・・・。
ガスは私の部屋ではとっくに止められているし。一度閉め忘れてガス中毒になった時に大家さんが閉止して、それ以来開栓してくれないのだ・・・。カップ麺が主食の私には湯沸かしポットが唯一にして十分な調理道具だし、下手に充実させてしまうと大家さんの関心や同情を損なって、かえって食いっぱぐれになりかねない。
昔、高級スポーツカーで道端の仕事場に通勤するお乞食さんの話が流行った。
プロにあるまじき脆弱な危機管理能力だと嘲笑った(私って、セミプロだし・・・。orz)。
乞食(「こつじき」と読むらしい)に重要なスキルは「無一物」であるといにしえの賢者が言っていた。
実はお金持ちの道楽だったというのがネタバレだった。どんな人でも「タダ飯」は甘露なんだなあとしみじみした。
S様という人が(匿名希望です。「エスサマ」とお読みください)取り巻き共々に町中をタカり歩いたけれど、「やんちゃな奴やけど仕方ないなあ」とか、意外とみんな好意的だったんだよね。
それが何を思ったのか、「今日は俺のおごりだぜい!」とか言ってパンとかワインとか大盤振る舞いしたらしい。
そしたら連れの一人が「持ってるんなら自分の食え!面白半分で貧乏人にタカるな!」とブチ切れたらしい。分かる!判るよ!その気持ち!!
蘇民将来も似たようなもんだよ。アポなしで襤褸着て夜中に押し掛けてチェックインしてくれるホテルなんて無いし!規定通りに対応してるのに恨まれるベルマンこそが被害者だよ。
蘇民将来さんは多分民宿業で規定が緩かったから目こぼしが出来たんだと思うのですが・・・。
そもそも、農耕民族と狩猟民族との認識の差異もある。
農耕民族にとってはムラという集団の組織防衛が優先される。定住型の社会において住所不定の流れ者はもれなく不審人物であってノングラータだ。下手に手を出すと組織が破壊されるし。
狩猟型だとみんなが漂泊者だから、立場は同等だし、群れから離れた人は要救助者だ。放置したら死んでしまう。マレビトは敬うべしという戒律は相互扶助の知恵だ。
要は人それぞれに立場があって、守るべきものが違うんだよね。
それを邪険にされたと怨み、親切にしてくれたと優遇するのは神様にあるまじき偏狭な考えだよ。
巨旦将来は悪い人で蘇民将来は良い人だと決めつけるのは余りにも自分目線に過ぎるよ。
巨旦将来は普通の人で、蘇民将来は有り難い人と思うのが社会人だよ。
そもそも、見知らぬ他人にも親切な蘇民将来さんなら、身内の巨旦将来が不幸になったら胸を痛めるだろうとか、なぜ気付けないのだろう?
神様ならドーンと!「蘇民将来に免じて、村ごと丸っぽ守ってやる」と宣える度量が欲しいもんだよ。
人間は愛嬌、神様は度量!!
偏狭な性格では神様とは呼べない!
あ。
偏狭な神様って・・・。
・・・。
ふと、思い出した。
「『おば』さん・・・」




