第二話 ピンポンダッシュとの戦い
「あいつはまたやってくる・・・」
私のハンターとしての勘がそうささやく。
私は扉のノブに手をかけたまま待ち受ける。
一分、二分、三分・・・。
ピンポーン・・・。来た!
探偵小説を読んでいて本当に良かった。
『ホシは犯行現場に必ず舞い戻る』という定説を知らなかったら、今のこの瞬間の私はいなかっただろう。
私は物語に託された叡知の深さに感銘し、かつ過去の自分の勤勉の成果に導かれた自らの素晴らしい判断力にしばし酔いしれた。
その間はどれ程の時がながれたであろうか?
10分も経ってはいないとは思ったが、気がついてあわてて扉を開けたときには、またまた誰もいなかった・・・。
油断した自分を叱りたい。
勝って兜の緒を締めるべきであった。いや、そもそも勝っていないし・・・。
私には勝利者然として悠々と去っていく相手の姿がありありと幻視
できた。私は、敗残してしまったのだろうか?
ピンポーン。
しかし、定説に基づいて鷹は再び舞い戻る。
そして私は挽回せんと引きちぎらんばかりにドアノブを引っ張った。
・・・・・・・・・・。
・・・疲れた。
ぶっちゃけ端折らせてもらうと。
あれから7度ほど同じ作業を反復させてもらった。
私の反射神経も度ごとに覚醒していき、今ではピンポーンの「ピ」
で開扉できるまでになった。
それでも姿を見れない。
そしてコペルニクス的転回がひらめく。
「チャイムを押す前に戸を開ければ良いのでは」と。
誤字報告、ありがとうございます。
ろくにホームページを見ないもので、こんなシステムを知りませんでした。
お礼、並びに反映遅れましてすいません。
こういうのって、指摘されて初めて気付くものなんですねー。