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第十二話 神女、なのかどうか・・・。

言葉っていうものには綾がある。異常体質はあんまりだと思う。せめて特異体質と言ってほしい。

もちろん、私がそんな異常体質、もとい特異体質なんかだとは自覚も心当たりもないし、寝耳に水である。


「神女っていうのはどういう存在なのですか?」


「おば」さんはまたまた学校の先生みたいなもったいぶった口振りで説明を始める。

「私は女神なので人間にとっての上位存在です。ですので、下位存在の人間からは私の姿は認識できません。

しかし、まれに人間の中から神を見、聞き、知る変質者が現れます。それが神女とか『覗き見る者』と呼ばれます」

だから、綾というものを考慮してほしい。変質者とか覗きとか、あんまりな気がする。


「神女の力とは何ですか?」

「力?神女とは神と対話する者であって何の能力もありません。

だから、何度も言いますが、あなたは何の能力もありません。無能力者です。無能力者が何らかの能力があるとは思えません。だって、能力があったら無能力者とは言いませんから」

こらこら、いつの間に私は無能力者右代表に就任しているんだ?

うーーー。ここまで清々しくこき下ろされると首を括る気にもならない。もしお酒が入っていたら大暴れしていたと思う。

ふっ。「おば」さん、命拾いしたわね・・・。


「おい待て!」

大家さんが声をかける。

「はい?」

「女神は神女にしか見えないんだな?」

「その通りですが?」

「さっきから俺もずっと見えてるが?」


「・・・」

「・・・」

「・・・」


うー、なんか気まずい・・・。

ブランド自慢の友達の靴下をふと見ると100均だった時。しかも、周りの子も同時に気付いた時。そんな感じ。


「コホン・・・。

あなたは女性ですか?」

「どつくぞ!」

口で言うより手の方が早い大家さんの攻撃を、「おば」さんは扉の攻防戦で見せた一瞬のパチンという消滅で避ける。

こういうのを見るとやはり人間種類ではないんだろうとは思う。でも、女神というよりは、やっぱり「おば」の付く人っぽい。だって、威厳が無さすぎるし・・・。


「あなたは『神殺し』の大罪を犯すつもりですか!」

「おば」さんは玄関から片目だけ出して震えながらこちらを見ている。前回よりも距離が近いのは馴染みになったと思う油断だろう。とんだ平和ボケである。


「あのな。100歩譲って俺が女だから、神女かも知れないとしてもだ。さっき、お前はこいつを唯一無二の神女だとか言わなかったか?」

「それは・・・。もしかしてお二人は一卵性双子とか?」

どう見ても大家さんと私では年が違いすぎる。双子のパラドックスにしても、容姿も何も違いすぎてアインシュタインもビックリだよ。

「もし大家さんが女性と言われるのなら」

大家さんがギロリと「おば」さんを睨む。「おば」さんはちょっとビクッと肩を震わせるものの言葉を続ける。

「もし大家さんが女性と言われるのなら、異世界という特異性故に神女が二人という可能性もあるかも?」

なんか考えが柔軟と言うよりもいい加減な思い付きのような気がする・・・。


「こんばんは。おや、珍しい。うずっちの所にお客様ですか?」

お隣さんが帰ってきた。


「おお、お前もこっちで飲め。

ちなみにこいつは異世界の女神だ。残念だが人間には認識出来ないそうだから」

「そうですか。

こんばんは。私は四谷と申します。よろしくお願いいたします」

「おば」さん、当惑してる。

「四谷さんは男の人だよ」と私。

「おば」さんはしばらく考え込んでから言った。

「人を外見だけで判断するのは良くないですよ」

心情、察するものはあるのだけれど、それは無茶振りですよ。しかも自分は大家さんを男性と決めつけてたし。


「はい。私は身も心も社会的にも戸籍的にも男性です」


「おば」さん、ガックリとうずくまる。ダメージ50というところですか?

でも、思えば私は唯一無二が無くなった以上は、残ったのは無能力者右代表という称号だけだ。HPゼロですよ・・・。


久しぶりに海が見たくなった。なみだ。



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