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地底探検  作者: 新庄知慧
21/126

21 あたし会社いってない

「疲れた。疲れた。死にたくなったさ」




「出ずっぱりって、会社か何かの仕事?」




「会社と違う。あたし会社行ってないよ」




「ふうん」




「今日も大変だったの。朝番だったんだけどね、へんなお客さんで」




風俗関係の人か、と君は気づいた。色々詮索してもつまらないと考え、君は口を閉ざしたが、チヒロの方から問わず語りに語ってきた。




「昼の客の方がね、変態みたいなやつが多いの。はげおやじとか、もうすぐ死ぬんでないかと思うような、なまら歳くったじじいとか。あたしの前にひざまづいてね、あたしの見たいってね、しみじみせがんできたりするの。じじい!ばっかみたい。見せる気になんかなれないよね、商売だから見せちゃるけどさ、やんなっちゃう。




それからさ、若いのでも、自衛隊はおかしいの多いよ。あれ、あれよ、おしっこ。おしっこよ。おしっこ飲ませてくれっちゅうのさ。別に飲ましちやってもいいけどさ、おいしくないしょ。おしっこ。そう思わない?」




急に機関銃みたいに喋り出したので、あっけにとられたが、その通りだと思って君は「うん、そう思う」と言って同意した。




「でも、夜は夜でさ、酔っ払いばっかさ。乱暴はするし、お風呂の中でいびきかいて眠っちゃうのもいるよ。眠るくらいならいいけど、そのままポックリいかれちゃったら大変でしょ。いやだよ、ホントに」




自分で自分の言葉にうなづいて、チヒロは言う。




「いやなこと多いよ」




「いや、でも、その、会社員と違うその仕事、続けにゃならんというのは、お金が欲しいからなの?」




「うん」




「大変だね」




「うん」




ちょっと間があって、




「でも何ともないの」




「いやな客ばっかでも?」




「うん」




「いやな客でも、かわいそうな人たちだって思うから?」




「うん」




 チヒロは車窓の向こうの吹雪の空を、ぼうっと眺めている。そして語る。




「うん。何かいやんなっちゃうけど。かなしいような、さみしいような、なんもかもいやんなっちゃうよ」




「落ち込む・・・・?」




・・・・・つづく

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