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もうじき免許皆伝

ブクマ、評価、ありがとうございます



「もしかして、誘惑する事が不正なのですか?」


 アダージョ医師を見ると、コクリと頷いている。監察官は、そんな私達を、静かに見ていた。


「王太子殿下は、いまだに婚約者がいらっしゃいません。年の近いご令嬢方は、その婚約者の座を得んと、必死になっております。中には、媚薬などを使い、王太子殿下に迫ろうとする方も現れ、王室はずっと警戒なさっておられました。そこで、新しく法律がつくられたのです。『少人数の密室で、我が国の王族に、誘惑等、迫る行為を不正とし、禁止する。これを破った者は、罰として禁固八年の刑とする』というもので、少人数に対しては、具体的には記載されておらず、今の条件も、当て嵌まってしまうのではないかと」


 なるほど。『前の人』の人格のままだったら、王太子殿下と同じ部屋で、人目も少なければ、そのまま迫っていた事は予測できる。子供の頃から迫っていたとの事なので、今更感はあるけれど、『密室』で、『監察官に確認される』条件が揃えば、不正と認定されてしまうだろう。ピンク女は、それを見越して、私が部屋に運ばれてから、すぐに監察官を呼んだのだ。あざとく、悪役令嬢を陥れるヒロインってところだな。


「ねえ~、なんで誰も何も言わないのぉ? キャレイが来たのよ? キャレイの声、聞こえなかったぁ? ねえレオンったら~」


(うわ~。すごいキャラ来たわ~。すごいキャラ来たのよ? すごいキャラの声、聞こえなかったぁ? レオンったら~)


 脳内でふざけたモノマネをしていたら、脳内だけじゃなくて少し漏れ出してしまったらしい。一番近くにいたアダージョ医師が、盛大に噴いた。咳払いをしながら、やめてくださいと囁いてくる。

 王太子殿下を見ると、あんな面白い台詞を投げかけられたのに、普通に対応している。狂気! それも漏れてしまったようで、アダージョ医師は肩を震わせた。


「コホン、諸々の事情はありますが、フォルテ・エイトビート侯爵令嬢が、王太子殿下に対して不正を行ったという事実は確認できませんでした。事情聴取は、これにて終了させていただきます。ところで、監察官としては、見過ごせない事実も発覚したのですが」

「…………えッ、あ、それってもしかして私の……」

 私の前世還りの事かと思いきや、監察官に私が発言する前に、アダージョ医師が小声で制してくれた。

「前世還りの件は、極秘事項にあたりますので、どうか今はその事実を口にせぬよう」

「えッ」

「王室と、極々身内、そして、発覚した際に関わった人間のみ知れる情報です。くれぐれも口外する事無きよう」

「はあ……」


 急に人格が変わったら、誰もが前世還りなんじゃないかなと気付くと思うのだけれど。コンプライアンス違反と言われて罰されるのも嫌なので、きちんと話は聞いておく。

 監察官は、王太子殿下に縋るようにしてくっついているピンク女に向けて口を開いた。


「キャレイ・ポンティ男爵令嬢。先程から、貴女は王太子殿下のお名前を呼び捨てていらっしゃいますが、不敬罪が成立ですよ?」

「ええッ、ひどぉ~い、なんでぇ? 王立学園の生徒は皆平等ですよぉ? キャレイはレオンとお友達だし、今まで、レオンから呼び捨て禁止って言われてないもの~」

「お二人とも、王立学園を卒業されましたので、既に平等の立場にはなっておりません。王太子殿下を男爵令嬢が呼び捨てにするなど言語道断。不敬罪で極刑すらありえますが」

「ひッ、ひどぉい! ひどぉい! そんなのおかしいです!」

「いや、全くおかしくないです。ですが、今夜は無礼講。特に罪には致しません。今後はお気を付け下さい。監察官としてご忠告致します。では、私はこれで」


 監察官は、私にも頭を下げてから、静かに部屋を出て行った。私はピンク女のモノマネを小さな声で練習しまくる。隣の医師はその度に肩を震わせる。ピンク女はわなわなと全身を震わせ、肝心の王太子殿下は無表情で突っ立っているだけだった。何かないの? さっきからずっと静かにしているようだけど。


「レッ、レオン~、私、どうしたらいいのぉ? 私達、卒業してもお友達でしょぉ?」

「…………いや、学園を卒業した後は、今までのようにはいかない。君は、下位の貴族の令嬢だ。社交界のマナーにのっとり、それらしい言動につとめるべきだよ」

「……はッ?」

「私と一緒にいるだけのつもりならば、今日はもう帰ったらいいと思う。たしか、足を怪我していた筈だが……もう治ったのか?」

「はッ!」


 はッて、声を出して驚く人、漫画の中だけじゃなかったのね。さっきから笑いすぎてお腹が痛いので、無茶苦茶笑うのを我慢してしまったわ。ピンク女は、顔を青くして、じりじりと後退して行った。あれ、絶対怪我してないわ。王太子殿下にエスコートしてもらう為の嘘ね。『前の人』は、あんな女の嘘のせいで消滅してしまった。ちょっと可哀想だ。

 なんの挨拶もなく、そろそろと後ろ向きに部屋を出て行ったピンク女。だいぶ自由だ。アダージョ医師はポカンとしているし、王太子殿下は溜息をついている。


「ひどぉい」


 なんとなくモノマネを口にしてみたら、二人からほぼ同時に、やめろと叫ばれた。




ちょっとふざけすぎました。面白かった~って思っていただけたら、下の方の★をよろしくお願い致します!

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