表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

なぁんだ、婚約破棄じゃないのかぁ~(仕入れたモノマネ)

タイトルがかわっております。『悪役令嬢』の部分を『リリーフ令嬢』にしました~



「もしや、前世還りですか?」


 青褪めた顔をした白い人が、小さな声で私に問う。他の二人もハっとしたように、私を見た。


「前世還りというものがよくわかりませんが、今の私には、違う世界で暮らしていたというふわっとした記憶しかありません。曖昧で、詳しい事はほとんど思い出せず、その時の自分の名前や年齢なども、憶えてはいないんですけど……」


「今まで、侯爵家のご令嬢として過ごしてきた事は、憶えていらっしゃいますか?」


「いえ。まったく。ですから、お教え下さい。何故私は、そちらの紺色の髪の男性に疎まれているのか。先程は、どういう状況だったのかを」



 白い髪の青年、フラット・アダージョ医師が、説明してくれた。ちなみに彼は、伯爵家の三男だそうだ。ピチピチの二十五歳。その若さで王立学園の顧問医師に選ばれるのはかなり優秀であることらしい。自分で言っていた事だから、後ほど裏付けが必要。

 今日は、王立学園の卒業パーティーの日。そこまで聞いて、これは、やはり断罪劇の真っ只中だったのでは? とワクワクした私は、続いての説明に少しがっかりした。


 紺色の青年、レオン・グランディーザ王太子殿下は、私の婚約者ではなかった。遠縁にあたる、幼馴染なのだそうな。幼い頃から、王太子殿下の美しさにメロメロだった私は、ストーカーのごとく纏わりつき、婚約者になりたいと泣いて暴れていたらしいのだが、周囲がそれを許さなかった。我儘言って泣き喚くような女、王太子妃には相応しくないものね。ゆくゆくは、王妃になるのだ。そんな女が選ばれるわけがない。

 前世還りというのは、極稀に起こるらしい。その人物が、どうしても受け入れられない事が起こった時に、全ての記憶を消して、魂ごと消えてしまうらしいのだ。その器に、仕方なく、前世の人格を移す。まるまる記憶が残っているとおかしな事になってしまうので、ふわっとした記憶しか移らない。だが、魂は、前世のものが入り込むのだ。完全に性格は変わる。人格形成は、環境に左右されるものだからだ。


「受け入れられないほどのショックな事って、なにかしらね。婚約していたわけではないのだから、王太子殿下の浮気が原因で婚約を破棄されたからってわけでもなさそうだし……」


「人聞きの悪い事を言うな。そもそも、貴様など子供の頃から相手になどしていなかったわ」


 さっきから腹の立つ言い方ばかりする。この人嫌い。『前の人』は、こんな男の、どこがよかったのだろうか。顔? 地位? 理解に苦しむ。


「まあ、理由なんてどうでもいいわ。さっきのイカれたピンク女か、そちらの冷酷そうな王太子殿下が原因ってのはなんとなく察したから。あ~あ、可哀想。魂が消えてしまう程のショックを受けさせられても、犯人はとぼけちゃうんだから。前の人も浮かばれないわねぇ」


 顔を見るのも嫌になり、王太子から目を背けた。アダージョ医師は困ったように微笑んでいる。


「きッ、貴様! 遠縁だからと甘やかしていれば図に乗りおって! さっきだって、足を怪我したというキャレイに腕を貸していただけのところに現れて、一人で騒ぎ立てたんだろうが! 卒業パーティーで騒ぎを起こして他の卒業生達に迷惑になるから、貴様はもう帰れと告げた。何がそんなにショックだというのだ。自業自得だろうが!」


「ああ……それは、ショックだったかもしれませんねぇ」


 アダージョ医師は、静かに言った。フォルテ嬢は、この世の終わりだと感じたのかもしれませんね、と。


「は…………?」


「王太子殿下は、これまで、どなたの事もエスコートをされない主義でした。婚約者がいればまた別でしたでしょうが、貴方は、ご令嬢をお近くに置くような事を、今までしてこなかったでしょう?」

「ああ、それが?」

「ですが、今日は、怪我をした令嬢に、腕を貸しておられた。エスコートをされていたのです。幼い時から王太子殿下を見詰め続けてきたフォルテ嬢は、絶望したでしょうね。まさか、自分はずっと拒絶され続けてきたのに、ぽっと出の男爵令嬢が、殿下の腕を取っていたのですから」

「…………」

「しかも、御自分も卒業生だというのに、パーティーに出ずに帰れと言われるなんて……」

「そ、それは……」


 私は、キラキラした青年二人による寸劇を、他人事のように眺めていた。だって、他人事だ。器の中身は、情緒の欠片もないコメディ大好き人間に入れ替わっている。何か面白いネタを拾えないかと、ただただ無言で眺めるぐらいしか用は無い。監察官も同じようで、呆然としながら二人の会話を聞いていた。面白いネタ探しはしていないだろうが。


 そんな最中に、ノックもなく、部屋の扉が開け放たれた。どぎついピンク色が、飛び込んでくる。異物。異物でしかない。


「レオン~、決着ついたぁ? 悪役令嬢がレオンを誘惑する徹底的証拠を、監察官にバッチリ見てもらったぁ~?」





もうちょっとしたら、ちゃんと話が動き出す予定

下の方で評価などよろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ