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最終話だよ心配ご無用

更新おそくなりました。

最終話です。



「違和感とは?」


 クレシェンドの疑問は、まっとうだった。


 弟であるクレシェンドでさえも、私が素顔で姿を現した時には誰だかわからなかった。聞いてもすぐには信じられなかったという。それが、先程のアクイーヌは、まっすぐに私に向かって魔法を撃った。しかも、当然のように、私をフォルテ様と呼び、昔から虐められていたとアピールした。


「まるで、姉上の顔を、以前から知っていたかのような」


「ええ、知っていたんだと思うわ。そうよね、悪意の人」


 私は説明する。以前から顔を知っていたから然程驚かなかった事。恐らく、本当に直前に、彼女がこの部屋に入り込んだ事。彼女の父親が拘束されてから今まで、私を攻撃できるほど近くまで来たのは今回が初めてなこと。さきほど躊躇なく私に攻撃魔法を使ったという事は、私にコーティング魔法が施されている事に気付いていないからだし、だからこそ、これまでに私に接近して暗殺しようとすれば、その場でなんらかの反撃がなされた筈だ。わざわざ、限られた人間しか入室できない部屋に入り込んで私に攻撃をするなんて危ない橋を渡るような女ではない。今までの経緯を考えると、計算高い女に違いないからだ。


「なんの事か、わかりませんわ」

「あら、しらばっくれるの?」


 真実を白日の下に晒す魔法を使う。アクイーヌの唇が、むにむにと歪み、本人の意思とは関係なく勝手に話し出す。


「昔、一度だけ、白塗りを落とした顔を見てしまったのよ! 美しかったわ。何故、隠すのか不思議だった。でもね、そのおかげで、貴方は王太子殿下から見向きもされなかったわ! 遠い御親戚で、多分一番婚約者に近しい筈なのにね! 加えて、その苛烈な性格から、なかなか婚約者になれなかった。そんな貴方にも順位で負けていた私は、どうしても許せなかったわ。だって、こんなに美しく、優しい、優秀な私が、未来の王妃になれないのよ? そんな事ってある? だから、先の三人の婚約者を暗に殺害したわ。お父様を使って、それを全て、貴方のせいであるように噂を流した。それからは、私にとって有利な条件で話が進んだわ。白塗り令嬢は、婚姻後、暗殺されて、その後に私が王太子妃になる。その計画を聞かされた時、笑いが止まらなかったわ。だって、ようやく、真に王妃に相応しい私が、その立場を手に入れられる事に決まったんだもの。それなのに、貴方は白塗りをやめ、お父様は拘束された! 私は貴方を絶対に許さないわ!」


 激しい。なんというか、お友達にはなれないタイプだ。周りを見渡すと、全員ドン引きしている。ようやく口を閉じる事ができたアクイーヌは、自分が口にしてしまった恐ろしい告白に、真っ青になっている。


「まあ、なんていうか~、アレですね。私に暗殺の攻撃魔法を撃たなかったのは、不幸中の幸いですよね?」

「…………どういう事よ」

「さっきの事忘れてしまったの? もし、私を殺そうとしたら、その力は、そのまま貴方に返っていたわよ? いえ、返らずに新しい魔法のスイッチを押してたかもしれない。私を殺害しようとすると、相手がミンチになる魔法とかもかけてたから~」


「R18Gになっちゃうから!!」


 いつものように、王太子殿下の手が伸びて来て、私の口を覆う。もうこれ慣れ過ぎて、日常だわ。ほぼ日課。嫌になる。


 ちょっと精神的に追い詰められておかしくなってしまったアクイーヌは、騎士達に拘束され、どこかへ引きずられて行った。


 私もまた、その場にいた全員に囲まれて、追い詰められて、皆の真剣な様子に可笑しくなってしまい、爆笑している内に、気付いたら、婚約の書類にサインをさせられていた。これってパワハラじゃない? 家族まで一緒になって婚約婚約寧ろ結婚とか騒いじゃってさ。





「あ~あ、結局、貴方と結婚する羽目になるのね~」


「羽目になるとか言うな。光栄に思え!」


 私と王太子殿下は、いつかのカフェの個室で向かい合ってパンケーキを食べていた。私は、マカダミアナッツのパンケーキ。王太子殿下は、あの謎の白いクリームのパンケーキだ。奮発して、彩フルーツのカクテルパフェも追加注文してある。

 婚約者になった二人は、周囲の希望もあって、仲を進展させるため、頻繁にデートを重ねていた。おかげで、なんだかちょっと甘酸っぱい関係になりつつある。私も、彼に絆されてきた。


「一年後には結婚だなんてねぇ」

「なんだ、不服か?」

「不服ってほどじゃないんだけど、少し心配事。貴方にしか解決できないのよね」

「私に? なんだ? 私に解決できる事なら、出来る限り力になるが」

「本当?」

 殿下に手を翳す。ふわりとした霧のようなものが、彼の顔にかかった。


「…………おい、今何をした」

「まあ怖い顔。だから、心配事を解決したのよ」

「何の魔法だ?」

 笑顔になった王太子殿下の手がわきわきっと動く。あれ、私にアイアンクローをかます準備よ。暴力男。怖いわぁ。

「あのね、浮気されたらぶっ飛ばしたくなる程度には、貴方の事が好きなのね、私。国王になられた後だって、側妃とか認められないの」

「…………過激だな。というか、それほど好かれているとは思わなかったぞ。直接言われると照れる」

「だから、浮気されたら、千本の針が貴方の口に飛び込む魔法をかけたの」


「怖いっつうの!!」


「だって、浮気しなければいいだけの話よ?」

「うッ……浮気はしない!」

「じゃあ、大丈夫よね? 嬉しいわ、レオン」

「ぐう……」


 席から立ち上がり、座っている隣に立つ。色々研究して編み出した最高の笑顔を作り、王太子殿下の胸に飛び込む。以前よりも逞しい。私が筋肉好きな事を告白してから、こっそりと鍛錬しているらしい。可愛らしい一面もある婚約者で嬉しいわ。


 リリーフしてからどうなるかと思ったけれど、優しい家族や、素晴らしい魔法の才能、そして、浮気をしない婚約者を手に入れて、大変満足。これからもトラブルは起きるかもしれないけど、私この世界で幸せになります。


 心配ご無用よ~!





最後まで読んで下さってありがとうございました!

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