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天才魔法使いと呼んでください

いつも読んでくださってありがとうございます



「は!? は!? なんで? なんで私がその女に殺害予告されてるわけ? 誰にも恨みを買うような事してないのに? こんなに気のいい私を殺害?」


「本気で言ってるのか?」


 王太子殿下の質問は、かなり失礼なのではなかろうか。

 そりゃあ、調子に乗って、癖の強い令嬢のモノマネをしたり、変な魔法を編み出して、ちょっとした手違いで貴族男性達の秘密を暴いたりしてしまったわよ? でも、それだけで殺害される道理はないんじゃない?


「クラワッソ侯爵令嬢は、現在、行方をくらましている」


 国王陛下が、よく通る声でそう言うと、辺りはシンと静まった。家族は前もって話を聞かされていたのか、それほど驚いた様子はない。驚いているのはただ一人。私だけだ。


 クラワッソ侯爵令嬢、アクイーヌは、ステルスの魔法持ちだ。国王陛下のその言葉を聞いて、私はすぐに国王陛下夫妻と王太子殿下、私とその家族にあらゆるコーティング魔法をかけた。即ち、『悪意を持ってその身に触れようとした瞬間に一万ボルトの電撃を喰らう魔法』と『攻撃魔法を撃つとその三十倍の威力で返ってくる魔法』、そして、先日も大活躍した、どこからともなく現れるメリケンサックの剛腕達にボコボコにされる魔法だ。その他、とにかく私達を傷つける事は、万に一つも有り得ない状態にした。


「もう大丈夫です。透明人間がどこで何を画策しようと、ここにいる私達の誰一人危険に晒される事はありません」


「さすがネオ・フォルテだわ!」

「陛下! 私達の未来の義理の娘に、勲章を!!」


 女子の皆さんが盛り上がっているが、私は国王陛下に話の続きを促した。感心した様子だった陛下は、ハっとして、説明を続けてくれる。


 アクイーヌは、どうやら良い子を演じていたらしい。クラワッソ侯爵の捕縛の報を受けると、顔を酷く歪ませた。報せた事務官は、令嬢のあのような顔は、生まれて初めて見たと声を震わせていたという。一緒に屋敷を訪れた護衛官がいなかったら、腰を抜かしたまま、帰って来られなかったかもしれない。そんな恐ろしい顔だった。

 侯爵家の取りつぶしとともに、令嬢には厳しい戒律で有名な修道院へ入る事が命じられた。荷物をまとめてその日の夕方には屋敷を出発する予定だったが、迎えに行った護衛からは、令嬢が姿を消したという報告がなされた。


「それで、送られてきたのが、その手紙、ですか」


「そうだ。魔法を使って送られてきたので、差出場所は特定できていない」

「王宮ですよ」

「んん?」

「話している間に魔法を辿って探ってみました。その手紙は、王宮の西館から送られてきています」

「何!?」


 私の言葉を聞き、国王陛下が部屋の外に合図を送る。どうやら、部屋の様子を透視出来る使用人がいるようだ。すぐさま護衛騎士がなだれ込んできて、私の前に跪く。あれ、あの人がいる。私が足を挫いた時に、運んでくれた筋肉の人。こういう人に傅かれるの萌えるわ~。


「その手紙を出した人間は、西館に潜伏しています。あ、でも、魔法を使ったのが西館にいる時だったってだけで、今はどこにいるのかわからないわね~」

「そのような事もわかるのですか?」

「うん、そうね。ちょっと待って。王宮内に、捕縛網を張り巡らせますので」


 アダージョ医師によると、魔法は本当に想像力が全てらしい。


 目を閉じた。誰も何も口にしなかった。暗闇を想像する。そこに、大きな水色の光る滴。静かに、揺れながら、落下する。すぐに、波紋が広がった。スウ、と何重もの波紋が、暗闇を覆っていく。範囲を拡げろ。この部屋。部屋を出て廊下を進め。王宮内の全ての場所へ。行き渡った波紋は、その範囲内で大きな金色の蜘蛛の巣を作った。

 探せ、探せ。クラワッソ元侯爵令嬢を探すのだ。探して見つけ次第、赤い目をした蜘蛛の子達が、彼女に襲い掛かる。じわりじわりと間合いを詰めて、最後は一気に。令嬢は足を蜘蛛の巣に捕られて身動きできない。噛み付け。噛み付け。大きな悲鳴をあげさせろ。


「きゃああああああああ!!」


 部屋の隅で、大きな悲鳴があがった。魔法が解けたのか、女性の姿が現れる。体のあちこちに蜘蛛を引っ付けて、倒れる事も出来ずに号泣していた。


「あらあら。既にこの部屋の中に入り込んでたのね。結構優秀じゃない?」


「痛い痛い痛い! これ! この虫をなんとかしてえええ!」

「蜘蛛って、昆虫だったかしら?」

「どっちでもいいわよ! こいつらを消して!」

「はい、どうぞ」


 蜘蛛と捕縛網を消す。令嬢の顔や体は、あちこち噛み痕らだけだが、命に別状はないだろう。


「フォルテ! 避けろ!」


 ニヤリと笑った令嬢が手を翳す。王太子殿下の叫び声。私に向かって飛んでくる火の玉。一瞬の事だった。





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