表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

王国サスペンス劇場

不快な表現が多々あると思います。すみません。



「お茶会のマナーなんて微塵も知らないけど」


 ファーストネームを呼び合う魔法が、どういう意図で使われたかは、あれからあの場にいた全員で考えたが、はっきりとした答が出なかった。単純に王太子と仲が良い事をアピールするためではないかという意見も出たが、私は、ファーストネームを呼び合っている内に、王太子殿下が本当に仲が良いと錯覚する事を狙っているという意見に賛成だ。

 ならば、お茶会を開いて、彼奴をおびき寄せ、動向を探ってみようという事になった。アダージョ医師が解析したファーストネーム某の魔法は、既に防御できるようになっている。王太子殿下も、学園でかけられた魔法は解除済みだ。


「貴様は誰にも話しかけるな。話しかけられても答えるな。目の前の食べ物に手を伸ばすな。音をたてる未来しか想像できないから、紅茶も飲むな」

「うっわ。うるさい。小姑かよ」

「なんだその口のきき方は!」


 本日私は、王太子殿下にエスコートをされている。夜会でも誰もエスコートをしてこなかった殿下がそれを許す、謎の令嬢の役だ。私本人とは気付かれまい。なんたって、白塗りメイクは封印したのだから。

 ピンク女は、必ず王太子殿下の前に現れる。マナーなど何も勉強していない女だと聞いた。最近こちらに現れた私よりも酷い筈だ。学園を卒業したのだから、男爵令嬢などが、既に王太子殿下に気軽に声をかける事など出来ない。そんなルールを無視して、彼女は現れる。そして、魔法が解けた殿下に向かって、更に不敬を働く事だろう。なにせ、殿下の腕には私。今まで社交界に姿を見せた事のない、美しい令嬢がいるのだから。


「それより。私の事、ずっと『貴様』と呼ぶつもり? 親しさをアピールして、ピンク女を怒らせる作戦でしょ?」

「謎の女なんだから、本当の名前など呼べんだろう」

「じゃあ、仮の名前で呼んだら? マイラブなんてどうかしら?」

「マイラ……呼べるか!」

「ハニーなんてどう?」

「断る」

「まあ、照れ屋さん」

「照れているわけではない」

「女性慣れしてないのね。そういえば婚約もまだだっけ? 王太子なんでしょ。その辺どう考えてるの?」

 それまで機嫌は悪そうだったがわりと普通にしていた王太子殿下の顔が強張った。足をぴたりと止め、私を横から見下ろす。じっと見つめてから、小さく溜息をつく様子は、アンニュイ。

「…………学園を卒業して……しばらくしたら、フォルテと婚約する予定だった」


「は?」


「だから、貴様と婚約する予定だったと……」

「待って待って、白塗りと? 弟から、クソとか呼ばれてる女と!? 何? 貴方の趣味が悪いの? それとも、自らを逆境に置いて楽しむタイプなの?」

 混乱して、声が大きくなってしまった。王太子殿下に人差し指で唇をむにりと押さえられハッとする。周りは、こちらを見ていない。慌ててごめんなさいと言うと、殿下は、少し離れた所にあるテーブルを指差した。二人でそちらに移動する。真剣な顔をしている私達についてくる人間はいない。


「あれだけ評判の悪かった女だ。嫁の貰い手など無いだろう?」

「いやいや、それが王太子妃になるとか、どんな冗談よ?」

「一族からあの娘を流出させるわけにはいかなかった。だから、彼女の望み通り私と婚姻を結ばせて、その後で……」

「あ、殺すつもりだったんだ。何かの事故で」

 まさかのサスペンス展開。私は名探偵ではないわよ? 大丈夫? そんなネタぶっこんでこられても困るんだけど? あらでも待って。『前の人』が消えた原因だけど、こうなってくると、誰かの陰謀説もアリなんじゃないかしら。ショックを受けてというよりは、ショックを受けて消えてしまいたくなるように、仕向けられたのでは?


「仕方なかった。彼女が周囲の言葉を聞いて私を諦めてくれれば、そんな計画をたてる必要は無かったのだが……」

「諦めるような女じゃなかったのね」

「これまで私には、別に三人の婚約者がいた。だが、三人とも、不自然に死亡している。証拠はないが、殺したのは、フォルテ・エイトビート令嬢であると、噂されているのだ」

「証拠はないの?」

「無い。だが、他に動機を持つ人物は、いない」

「他にいない……? そうかしら…………?」

 急展開よ。三人の婚約者の死亡。それに関わっていたかもしれない『前の人』。でも、今までの話を統合すると、『前の人』は、ただの性格の悪い小者。アホだから、暗殺に関わるような事は無いと思うのよね。


「酷いわ、レオンったら!!」


 急に聞こえてきた甘ったるい声に顔をあげると、私達のテーブルの横で、ピンク女が、仁王立ちしていた。




しばらく更にゆっくり更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ