第06話 初ダンジョンへの準備
休みに入って、ヘインツの寄越した馬車で、家へと戻った。
両親にはダイアモンドクラスに入った事と、成績が主席である事を報告し、毎度の事ながら親バカな所を見てしまう。
シーリアにも見せてやりたいものだ。
(フィの今の両親はどんな感じなんだ?
今度聞いてみよう。)
健介は親バカ2人を眺めながら考える。
「後期からダンジョンへの進入が許可されるの。
まだ入るつもりは無いけど、2年生の間に一度は入ってみるつもり。」
と健介。
「まあ、ダンジョン?
危険なのでしょう?」
ミレーヌが心配そうに見てくる。
「危険らしいけど、勝てない相手と戦うつもりは無いし大丈夫よ、お母様。」
と健介が安心させる。
いくら才能ある身体でも、無謀に突っ込んでいくほどバカではない。
「シーリア、お前なら引くべき時を弁えていると信じているよ。」
とヘインツ。
「ええ、大丈夫ですわ。お父様。
勝てない相手から逃げても恥にはなりません。
勝てる算段をしてから、次に勝てば良いのですから。」
と健介。
「それは貴族としては少し情けないな。」
とヘインツが苦笑する。
「魔物や魔族相手に誇りをかざしても意味がありませんわ。お父様。
人の誇りは人にしか判らないものです。」
と健介。
すると、ヘインツは黙り込んでしまった。
ミレーヌも少し驚いたような顔をしている。
「そんなに驚く事ではありませんよ。お父様、お母様。
私も魔術学校に行って色々と教わりました。
同じ人でも、例え貴族でも、誇りを持たない、誇りを理解できない者は少なくないのですから。」
と健介。
この話はシーリア本人とも話していた。
シーリアは箱入り娘だったから、他の人の価値観や違いを受け入れる器が小さかったが、今は大分マシになっている。
自分と他人の違いを受け入れる事が出来るようになって、視野が広くなってきていた。
「確かに、そうだな。
お前の言うとおりだ。」
とヘインツが頷く。
どこか寂しそうな顔をしていた。
この休みの間もフィを屋敷に招いて訓練を欠かさなかった。
フィとも話し合って、ダンジョンへ降りる事を決めたのだ。
だが、やはり直にではない。
ダンジョンに入ると言う事は、命がけの事だからしっかりと準備が必要だ。
目標はあくまで転生魔法を使えるようになることである。
その為の準備段階で死んでは意味がない。
そこで、町の武器を扱う鍛冶屋へと出向いた。
学校から支給される剣も悪くは無いが、命がけで乗り込むダンジョンである。
もっと手に馴染む、使いやすい武器が欲しい所である。
「へえ、沢山あるね。」
とフィ。
「ええ、1つ1つ手にとってしっかり見定めると、時間が掛かりそうですね。」
と健介。
「リアはどんな剣にするの?」
とフィ。
「さあ、判らないわね。
とにかく、使いやすそうな物を探すわ。
フィも下手に拘らずに、使いやすいと思うものを探しなさい。
命を預ける武器なのだから。」
と健介。
「そうね。
判ったわ。」
とフィ。
その2人のやり取りを少し離れた所で見ている鍛冶屋の親父。
少女2人が剣を品定めしているのをじっと見守っていた。
厳しい表情で何を考えているのか判らない。
2人は気にせず、剣を1本1本丹念に見て回った。
店に入って2時間ほど、粘りに粘ってフィは1本の剣を持って振り回していた。
「その剣が気に入ったの?」
健介が尋ねる。
「ええ、重さもバランスも丁度良い感じ。」
とフィ。
彼女が持っている剣は、片刃の直剣である。
無骨なデザインだが、鋭い刃先は良く切れそうだった。
「私も良いのが見つかったわ。」
と健介が短めの剣を2本両手に構えて見せる。
「双剣?」
とフィが意外そうに見る。
通常の剣よりも短めの剣が、同じデザインで2本。
それは若干湾曲した片刃の剣で、日本刀に近いデザインである。
日本刀に比べると、剣の幅が広く装飾の彫がされている。
「うん。
これが良い感じなのよ。
慣れるには少し時間が掛かるかもしれないけど、良いと思うわ。」
と健介。
剣の重量バランスもなかなか良い。
シーリアの身体能力と魔力なら十分に使いこなせるだろう。
2人で選んだ剣を、鍛冶屋の親父に頼んで屋敷に届けてもらう。
鍛冶屋の親父が最終調整とやらをしてくれるらしい。
剣の扱いについて助言してくれた。
厳しい顔に似合わず、良い親父さんである。
数日後に屋敷に届いた剣は、鍛冶屋の店で見た時とは比べ物にならない程綺麗になっていた。
どうやら、剣を磨いて研ぎ直してくれたらしい。
「あら〜、綺麗なものね。」
とミレーヌが剣を見て言う。
「お母様は危ないから触っちゃ駄目よ。」
と健介。
「もう、この子ったら母親を子供扱いするんじゃないの。」
とミレーヌが顔を赤くする。
それを見てフィと健介が笑う。
ミレーヌが一緒だとフィも楽しそうだった
2人はそれぞれの獲物を持って、裏庭の訓練場と化している場所へ移動した。
裏庭は綺麗な草地だったのだが、2人の訓練のせいで今は荒地に近い状態になっている。
それを見て、シーリアの両親は溜息を禁じ得ない様だ。
御愁傷様ではあるが、訓練場としてはちょうど良いので、場所を変えるつもりはなかった。
いつも通り、そこで訓練を始めた。
新しい剣だから身体に馴染ませるように、それ程本気ではない。
1日1時間の訓練を2回やる。
双剣の扱い方は学校では教えてくれない。
それでも普通の剣術が判っていれば、応用で済むものだ。
双剣が身体に馴染んでくれば、後は普通の剣術同様、その人の才能の問題である。
10日ほど掛けて、徐々に全力での戦いへと進めていった。
フィは大分馴染んだようだが、双剣に切り替えた健介はまだ違和感が残っていた。
それでもフィとの模擬戦に耐えられるのは、シーリアの身体の素質のお陰だろう。
シーリアの身体の感覚からすると、やはり双剣の方が性に合っているようだった。
本来の精神と魂が戻れば、どうなる事か。
「大分慣れてきたわね。」
とフィが肩で息をしている。
「ええ、さすがにまだ違和感があるけど、大分良くなったわ。」
と健介も肩で息をしている。
魔術を使った高速戦闘でも何とか扱えるようになっていた。
これなら学校に持ち帰って使っても、問題は無い。
魔術学校は個人の武器の持ち込みも許可されている。
魔術の方も、剣と同じくらい真剣に訓練をしていた。
まだ教わっていない魔術の応用、炎や氷の魔法を2人で放っている。
一応、教科書にはやり方が載っていたから2人でそれを試した訳だが、普通の人間には簡単に出来る事ではない。
休みの間に、攻撃魔法の基本4つ、炎、氷、雷、風を大体出来るようになっていた。
まだ攻撃魔法を使うのには時間が掛かりすぎる感じだが、これも慣れの問題だ。
魔術の基礎である魔力操作の錬度を上げれば、より早く魔法を使うことが出来る。
そんな訳で、魔力操作の訓練も毎日欠かしていない。
2年の後期が始まると、授業の内容から一般教養の内容が更に減った。
代わりに魔術に関する授業が増えた。
「魔術付与ね」
フィが呟く。
「興味深いわね。」
と健介も頷く。
魔術付与が新しく教科に加わった。
これは魔法陣を代表とする魔術を行う補助をする為の技術である。
武器や鎧に魔術付与して強化する事も可能だ。
魔術付与の基本は魔法陣である。
適切な魔法陣を描いて行使する魔法は、威力や精度が飛躍的に向上する。
魔力の魔法への変換効率が格段に上がるし、細かい制御がやり易いのだ。
しかし、魔法陣は余り戦闘では使われない。
書いている暇は無いからだ。
「これはしっかり勉強しないとね。」
とフィが健介に言う。
健介も黙って頷く。
転生魔法を行うには、魔法陣は必要不可欠。
誰にも言えないから、2人だけで魔法の儀式を行う事になる。
高い才能をもつ2人だが、魔法陣を書き損じてしまえば、下手すると2人とも死ぬ。
魔術付与に使われる記号などは目新しいものだったが、魔術付与のその内容自体は健介にはある意味見慣れたものだった。
(プログラムに似ているな。)
健介は微妙な懐かしさに胸がざわつく。
記号の意味と組み合わせの内容が判っていくに連れ、魔術付与がどんな物なのかを理解し始めた。
魔術付与を学習する事2ヵ月。
「フィ、ダンジョンに入る前に、武器と防具を魔術付与して置きましょう。」
と健介がフィに考えを言う。
「え、でも出来るかな?」
とフィが自身なさげだった。
フィはまだ魔術付与について理解が進んでいないらしい。
この辺りは健介の経験がものを言っていて有利だった。
それから3日掛けて、健介はフィに魔術付与について教え込みつつ、剣と鎧に入れる魔術付与の記号の組み合わせを考えた。
フィも何とか理解したらしく、健介のしている事を見つめている。
健介が説明してやると、うんうんと頷いて可愛い。
「それじゃ、この記号の組み合わせで武器に彫を入れましょう。」
と健介が考えた記号の組み合わせを見せる。
「なんだか綺麗な模様みたい。」
とフィが記号の書かれた紙を見て言う。
記号は必ずしも文字のように別けて書くものではない。
記号と記号の角度と繋がりによって、その作用が変わってくるので、行とか列とかの概念も通じない。
だから、全体を見ると模様のように見えるのだ。
フィは剣が1本だけだが、健介は双剣だ。
「うう、泣きそう。」
と健介。
「頑張ってね。」
とフィは手助けする気は無いようだ。
こういう所は冷たい。
紙に書いた記号部分を切り抜き、剣の上に乗せて印刷の要領でインクを剣につける。
そして、そのインクの部分に魔力を込めながら鋼のミノで彫っていく。
1日で終わる作業では無いので、訓練中もインクが落ちないように気をつけて、夕方から作業に戻る。
「2人とも最近夕方から見ないと思ったら、何やってるの?」
とクリンが部屋に入ってきた。
クリンにはしばらく夕方からの自主訓練を休むと言ってあった。
「剣に魔術付与してるのよ。」
とフィがミノで剣を彫ながら答える。
「え!?
魔術付与って、あれでしょ、魔法陣とかの?」
とクリン。
2人が彫り続けている剣をマジマジと見ている。
「そうよ、クリンもしっかり勉強しておきなさい。」
と健介はクリンに振り向きもしない。
「そ、それは何の模様なの?」
とクリンは少し落ち込んだ声で聞く。
健介はそれに気付かずに答える。
「強化と軽量化と電撃。
それと防錆。」
「へ、へえ、すごいね。」
とクリンが泣きそうな声だ。
と言うより、既に涙声だ。
「ど、どうしたの?」
と健介はクリンを見る。
フィも驚いてクリンを見た。
「だ、だって・・・あうう」
クリンが泣き出した。
健介とフィはアタフタと慌てる。
「ちょ、ちょっとクリン、どうしたの?」
とフィ。
「だって、私だけ、ヒッ、仲間はずれ、ヒッ、何だもん。」
クリンは泣きながら訴えた。
健介とフィは顔を見合わせて、思わず苦笑する。
全くこのお嬢様は・・・
「クリン、別に仲間はずれにした訳じゃないのよ?」
とフィが慰める。
「そうよ、クリン。
魔術付与はまだクリンには出来ないから、一緒に居ても退屈だろうと思ったの。」
と健介も慰める。
「本当?
仲間外れじゃない?」
クリンは涙目で2人を交互に見る。
「本当よ。
クリンが嫌じゃなければ、ここに居ても良いのよ。」
とフィ。
「クリンも魔術付与教えるわよ。」
と健介。
そんな訳で、クリンに魔術付与を教えながら、剣に彫をする毎日を過す。
クリンも頭の良い子で、しっかり教えてやればそれなりについて来る。
教官の教え方が判りにくいのだろう。
フィの彫りが終わると、フィがクリンの相手をするようになって、健介は彫に集中出来るようになった。
「触っても大丈夫?」
クリンがフィの片刃の剣を見ている。
「大丈夫よ。」
とフィ。
「ビリビリしない?」
クリンは電撃を心配しているようだ。
「電撃は魔力を流し込まないと発生しないわ。」
とフィが説明してやる。
すると、クリンは剣を持って刀身を眺めた。
「軽いのと模様以外は普通の剣と変わらないね。」
とクリン。
「光り輝くとでも思ったの?」
とフィが笑う。
「ち、違うもん。」
クリンが膨れた。
図星のようだ。
フィが剣を取って、剣に魔力を軽く通す。
すると、剣の表面からパチパチと静電気ように青い電気の光が見える。
「わあ、凄い。」
とクリン。
「なかなか良い出来ね。」
とフィが満足そうだ。
「私が考えたんだから当然よ。」
と健介が2本目を彫ながら言う。
「この模様、リアが考えたんだ?」
とクリン。
「そうよ、クリンも使って良いけど、ちゃんと理解出来るまではお預けよ。」
と健介。
理解して無い魔法具を使うのは危険があるし、これくらいは理解出来ないと後で困るかもしれない。
これもクリンの為だ。
「うん、がんばる。」
とクリン。
少々甘えん坊だが、素直で良い子だ。
クリンはシーリアと同年代のはずだが、ずっと子供っぽい。
1年前は貴族の殻を被っていたが、今は普通の女の子の様に振舞っていた。
地が出たのだろう。
クリンがその模様を理解出来るようになるまで10日を要した。
他のゴールドクラスのメンバーはまだまだ悩みまくっているのに比べれば、随分速い理解振りだ。
クリンはリアとフィに実力を引き上げられている。
クリンはその魔術構成模様を修正し、電撃から炎に替えて自分の剣に彫り始めた。
クリンの趣味らしい。
健介とフィは時々クリンのところへ行って、様子を見てやった。
クリンは寂しがると泣いてしまうから。
「リア達はまだダンジョンに行かないの?」
クリンが剣を彫ながら訊く。
「それは、クリンを置いて行っても良いと言う事?」
と健介が意地悪く言う。
「だ、駄目。」
クリンが不安そうな目で見つめてくる。
「こら、クリンを苛めないの。
大丈夫よクリン。
私達もまだ準備があるし、クリンが彫り終わるまで待ってるから。」
とフィが睨んで来て、クリンを安心させた。
母性本能をくすぐられたらしい。
「焦って彫っては駄目よ。
1彫り1彫りにしっかり魔力を込めてね。」
と健介がアドバイスをする。
「う、うん。判った。」
クリンがまじめな顔をして彫る作業に戻る。
魔力を込めて彫るのは結構疲れる。
魔力も消費するし、精神的にも疲労する。
魔力の操作が上手く出来ないものには出来ない事だ。
そう言う意味では、クリンも優等生なのだ。
「それじゃ、また来るから。
しっかり彫ってね。」
2人はクリンの部屋を後にする。
クリンが2人の仲間に加わってから、フィとリアは随分和やかになった気がする。
フィの中のシーリアも真面目な性格だし、目標がシビアであるからどうしても互いに厳しくなってしまう。
だが、クリンが居ると脱力してしまうのだ。
2人にとっては丁度良いマスコット的存在である。
「そう言えば、ダイアモンドクラスからはもうダンジョンに入った人がいたわね。」
とフィ。
「そうなの?
まあ、私達には関係ないわ。
急いで入る理由は無いし、生きて帰る為にしっかり準備しないとね。」
と健介。
魔術学校ではダンジョン踏破、魔物討伐に関する戦績表が張り出されて、定期的に更新されている。
ちなみに、行方不明者は申請された帰還期限までに戻っていないものが発表されるし、ダンジョンに入った生徒が遺体を発見した場合には死亡発表がなされる。
ダイヤモンドクラスではどちらも出ていないが、普通クラスの生徒で行方不明が出ているらしい。
「そうね。
と言っても、私達の準備はクリンだけなんだけど。」
とフィはクスクスと笑う。
「意外な仲間が増えたわよね。
彼女も優秀だから良いけど。」
と健介も笑う。
「2人より3人の方が生き残れそうだしね。」
とフィ。
クリンの実力は2人より1ランク下だが、2人を除けばトップクラスであるのは間違いない。
フィとリアが強すぎるのだ。
2人は携帯できる保存食や薬品、寝袋やお宝を入れるための袋が数枚、タオルなどの日用品、予備の短剣やナイフ等等。
これらの必要な物は既に用意していた。
それ以外に2人は6本のライトを用意している。
ライトと言っても、それは木の棒に魔術付与で光の魔術構成を刻んだものだ。
3人でそれぞれ2本ずつもって行く事にしていた。
一応、ランタンも持っていくが、これは念の為である。
ダンジョンの奥深くに入ったら、ちょっと買い物と言う訳にはいかないのだ。
魔術付与を使ってさらに便利な魔法の札を用意した。
木の薄い板を2百枚近くに、魔法を封じ込んだのだ。。
爆炎、火炎壁、氷結、突風、静寂、防壁、閃光。
数十枚ずつ用意して置いた。
強敵が現れた時に、かく乱や逃走の為に使えるだろう。
後はクリンの準備が終わるのを待つだけと言う暇な時間を過ごしている。
食堂でお茶をしながら話す。
「そう言えば、オルンはどうしてるかな?」
と健介が思い出す。
「なに?
気になるの?」
とフィがニヤニヤして訊く。
(てか、お前の身体の事だから・・・
いいのか?)
と健介は内心思いつつ。
「いや、全然そう言うのじゃないわよ。
ただ、シーリアの騎士だと言ってたのに、この不甲斐無さはどうかと。」
健介が苦笑する。
2年になってからは、殆ど顔も見せない。
「そうね。
諦めちゃったのかな?」
とフィは首をかしげる。
「どうなんだろうね。」
年頃の少女達にしては、色気がありそうで無い話である。
場所が場所であり、片方の中身は男のものだから仕方ないと言えるが。
オルンはそれなりの素質を持つ少年だった。
素質だけならクリンに匹敵している。
だが、クリンのように真面目な性格ではなく、素直でもない。
勿体無い話ではあるが、シーリアも健介もクリンの様に素直に従ってついて来る者でなければ、引っ張り上げる余裕は無い。
特にオルンは対抗意識が変な方向へ向くので、それを矯正してやら無ければならない。
今の2人にはそれをやってやる余裕は無かった。
ところで、健介はスッカリ少女で居るのに慣れていた。
しかし、少女の身体の影響か、男性の時のような性欲は感じない。
フィを始め他の女子生徒達と一緒に風呂に入っても、目の保養だとは思っても性的興奮は覚えなかった。
或は、女性の身体に男性の精神と魂が入ったために、性に関しては不都合が生じているのかもしれなかった。
(それにしても、これはある意味究極の女装だよな。)
などとちょっとずれた事を考えている。
少女で居るのに慣れたと言っても、やはり男である。
しかし、この状態は丁度良かったと言えなくは無い。
健介の大人としての広い視野と冷静な判断が活かせる状態である。
若い男の身体であったらこうは行かなかったであろうから・・・
人はそう言った事に、多かれ少なかれ思考力を奪われるのだ。