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転生の旅  作者: mattsu
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第05話 学校生活

 2人は2ヶ月の遅れも大した影響も無く、直に追いついて定期試験を受けた。

試験は年2回あり、最初の試験である。

2人が1位と2位をとり学年主席になった。


 リアは元々頭の良い子だったが、驚きの結果である。

今まで気付かなかったが、凡人として生きてきた健介には面白い事態だ。

フィレイの身体の方も負けない素質があったらしい。


 しかし、これでまたリアの知名度が上がってしまった。

同じく、フィの知名度も上がった。

健介としては余り目立ちたくは無いのだが・・・


 健介はフィに空手を基本とした格闘技を教えておいた。

フィの方は格闘技の経験は無かったから、そっちの方面では遅れそうだったからだ。

しかし、フィレイの身体も誘拐されるだけあって天才だ。

中身がシーリアと言う事もあるのだろうが、短期間教えただけで授業の格闘術でもある程度余裕を持って対応できた。

何処の世界にも、こういう人間は居るものだ。

羨ましい。


 授業が終わった後も、2人で練習した。

肝心の魔術は後期になってから授業が始まった。

後期の授業が始まって2ヶ月経つと、1ヶ月ほどの長期休暇がやってくる。

シーリアの父が寄越した迎えの馬車に2人が乗り、3日掛けて各々の家へ戻った。


 シーリアの両親は成績を聞いて、とても喜んでいた。


「シーリア、お前は私の誇りだよ。」


 とヘインツが大げさに言う。


「お父様ったら、大げさですわ。

 フィレイだって僅差で2位なんですから。」


 と健介。

リアとフィの実力は本当に拮抗している。


「フィレイちゃんも凄いわね。

 さすがシーリアが見込んだだけあるわ。」


 とミレーヌ。


(この2人も親バカだな・・・)


 健介は苦笑しつつ、シーリアの両親の話に付き合った。



 2人共、家に戻っても休むつもりは無かった。

教科書を持ち帰って、復習と予習に余念が無い。

さらに、格闘と剣の練習をシーリアの屋敷の庭で行っていた。

そして、肝心の魔術の練習。


 シーリアの屋敷で学習と練習をするのには、もう1つ訳がある。

やはりフィ(シーリア)が両親に会える機会がある方が良いと考えたからだ。

時々、ミレーヌとは良く一緒にお茶をしている。

フィも嬉しそうだ。


「魔力の操作って難しー」


 とフィ。


「魔力の感じは掴めるんだけどね。

 操作ってなると、上手くいかないわね。」


 と健介。


 魔術の初歩の初歩。

魔力を感じてそれを操作する。

操作と言っても身体の中で動かすだけだが、正に雲を掴むような話で上手く出来なかった。


 それでも2人は特別だった。

今の時期に魔力を感じることが出来たのは、2人の他には学年で3人しか居ない。

授業では後期の期間を全て使って、魔力を感じて操作をするという基本を学ばせるらしい。

2年になって初めて、応用の魔術を学ぶようになる。

だが、それは順調な生徒のみで、出来の悪い平凡以下のクリスタルクラスでは、基礎をやり続ける事になる。


 シーリアは伯爵令嬢の面子の為、フィレイはヴァージル伯爵に金を出してもらっている為、2年以降はダイアモンドクラスで授業を受けると決めていた。

クリスタルクラスに落ちるなど問題外であった。

そもそも2人が目指している転生魔法を使うには、高度な魔術の技術が必要である。

クリスタルクラスに落ちている暇など無いのだ。



 あっという間に休暇が終わりに近付き、2人の魔術の錬度も若干上がっていた。


「魔力の操作も何となく判ってきたね。」


 と健介。


「うん。

 初歩魔術も直に出来そうな気がする。」


 とフィも自信を見せる。


「気が早いよ、フィ。

 基礎をしっかりやらないと、最初は良くても後の応用で困る事になるからね。」


 と健介。


「リアと話していると、なんだか先生と話しているみたい。」


 とフィ。

シーリアはなかなか鋭い。

健介は笑って誤魔化した。



 シーリアの父ヘインツの用意した馬車で、学校へと戻った。

学校では生徒達が早くも3分化しつつある。

つまり、優等生グループと普通生グループと落ち零れグループである。

当然、リアとフィは優等生グループだが、オルンは普通生グループである。


(騎士と自任するなら、優等生グループまで上がって来い。)


 健介はオルンを見てそう思った。


 リアとフィは周囲をグングン引き離していく。

学習内容は同じでも、2人は常に1歩前に進んでいた。


 この頃になると、フィに手出しをしようとする者も居なくなっていた。

時々、実力を勘違いした者が影からちょっかいを出す事があった。

それも健介が手助けをするまでも無く、フィが捻じ伏せる事が出来るようになっていた。

無論、そういう事の直後には健介が出張って、次に同じ事をすれば只では済まないと警告している。

後で徒党を組んで来られては厄介だ。

フィとリアの2人であれば8人位までは相手に出来るが、流血沙汰は必死である。


 仮にも伯爵令嬢であるシーリアが出張ってくれば、相手も貴族なら徒党を組むような事はしない。

そんな事をすれば恥どころでは済まないからだ。

抑止力にはオルンも参加してくれていた。

と言っても、彼の場合は煽っているようにしか見えなかったが・・・


 そんな訳で、殆どトラブルも無く2人は順調に実力を上げて行った。

そして、2人は難なく後期の試験を主席でパスし、2年のクラスはダイアモンドとなった。

オルンは彼も頑張ったのではあろうが、結局普通クラス行きだった。

哀愁漂う背中を見て、合掌したのは言うまでもない。


「2年の後期からは、ダンジョンへの進入が許可されます。

 自信のあるものはダンジョンへ挑戦するのも良いでしょう。

 ですが、ダンジョンは危険です。

 死亡した者、行方不明になった者もいます。

 ダンジョンに入った後は、全て自己責任となります。

 ダンジョンに入るも入らないも自由ですので、今から考えて置くように。」


 1年生最後の日に、先生からダンジョンの説明を受けた。

まだダンジョンに入る資格を得るのは半年以上先の話だが、皆緊張の表情だった。

今から緊張してどうすると、健介は言いたかったが。


 ダンジョンは魔界と繋がっているらしい。

この様なダンジョンは、世界中に12箇所見つかっている。

いつ誰が作ったのかは判らないが、ダンジョンは少なくとも千年以上前から有るらしい。

魔界と繋がっているといっても、誰も確認したものはいない。

過去に、幾つかのダンジョンから魔族の侵攻を受けた為にそう言われているだけだ。


 ダンジョンの深さもまた謎である。

リアとフィのいる魔術学校が管理しているダンジョンは、確認されているだけで地下83階である。

無論、地下83階で終わりではない。

戻ってきた者は更に下の階があるのを確認していた。

このダンジョンは過去に魔族の侵攻があったものでは無いが、危険度は同じであるとされている。


 魔術学校ではダンジョンに入るかどうかは、生徒の任意である。

魔術学校の成績には影響しない。

だが、卒業時にダンジョン制覇記録が成績に添付される。

魔術学校の卒業生を面接する軍の関係者などは、このダンジョン制覇記録の方を重要視する。

ダンジョン制覇記録には魔物討伐記録も含まれ、どれだけ実戦を積んだかを見ることが出来るからだ。

無論、実戦とは無関係な所で働くなら、何の問題も無いのだ。



 試験後の短い休みの後、2年の前期が始まる。

ダイアモンドクラスは総勢9名。

卒業までダイアモンドクラスに居続けられるのは、その半数以下だと言われている。

無論、2人ともその中に入るつもりだ。

健介の見解では、余程のミスがない限り2人とも残るだろう。


 2年に入ってからの授業は、一般教養よりも魔術や兵科に関する授業が多くなった。

フィとリアはどちらも余裕でこなしている。

2人とも努力をしていた為だろう。


「ここの食事、太っちゃわない?」


 クリンが言う。

クリンも一応ダイアモンドクラスである。


 クリンが言う食事とは、学食だ。

肉料理が多く、年頃の少女には心配であろう。


「大丈夫よ。

 あれだけ身体を動かしてれば、早々太らないわ。

 心配なら、脂身を取り除いて食べれば問題ないわよ。」


 と健介がアドバイスをする。


「そうなの?

 お肉は脂身より太りそうな気がするけど。」


 とクリン。


「太りやすいのは、砂糖などの糖分とパンなどの炭水化物、次に脂身、最後にお肉よ。

 脂も魚の脂は太り難いのだけど、お肉の脂は太りやすいの。

 だから、脂身を取り除いたお肉と少しのパン、後は野菜と言うのがバランスが良いわね。」


 と健介。

こっちの世界の食糧事情は、元の世界の食糧事情と余り変わらない。

栄養成分を調べた訳ではないが、大体同じだろうと思って話している。


 クリンは脂身を取り除いて食べ始めた。


「あなた本当に何者なのよ?」


 とフィが小声で話しかけてくる。

太りにくい食べ方や太りやすい食べ物の知識を持っていることで、疑問が再発したのだろう。


「ひ・み・つ」


 と健介も小声で答える。

フィが少し睨んできたが、笑顔で応えた。



 今ではクリンも仲良しになって、一緒に勉強していた。

ただ、クリンの素質は2人ほどではなかったので、常にワンランク下の成績だった。

いや、ダイアモンドクラス内では2人が飛び抜けているだけと言った方が良い。


「あなた方2人は、本当に化け物よね。」


 とクリンが呆れたように言う。

放課後、3人で剣の練習をしていたのだが、フィとリアの模擬戦を見てクリンが言ったのだ。

剣の練習とは言え、魔術も使っている。

基本魔術の1つで魔力を身体に作用させて身体能力を向上させる。

皮膚表面に魔力の殻を作り防御力を上げる。


 練習時にはしないが、剣にも魔力を通して威力を上げる事も出来る。

その状態でフィとリアが戦っていると、確かに尋常な戦いには見えない。

ダイアモンドクラスの他の生徒も、まだ出来ない事だった。


 この様な戦い方が、こっちの世界の魔術を使える戦士では一般的で主力らしい。

魔術だけを使うよりも、この方が手っ取り早く相手を倒せるそうだ。

魔術だけの魔術師、剣だけの戦士は栄達出来ない事が殆どである。


「化け物とは失礼ね。」


 とフィ。


「そうよ、クリンだって一般人から見れば化け物よ。」


 と健介。


「私から見ても化け物なんだから、本当に化け物なのよ。」


 とクリンが笑う。

フィとリアがクリンを小突く。


「痛いよ〜」


 クリンが頭を両手で押えて涙目になる。



 2人がクリンと模擬戦をする時には魔術は使わない。

クリンが使えないからだ。

それでもクリンは2人に散々扱かれる立場になってしまう。


「あーん、もっと優しくして」


 とクリンが座り込む。


「駄目よ、ほら早く立ちなさい。」


 フィは意外と容赦が無い。


「リア〜」


 クリンが涙目で健介を見て、助けを求める。

クリンは最近、健介の弱点を見抜いていた。


 健介は中身は男なので、こういうのに弱い。

ため息をつきつつ。


「フィ、少し休みましょう。」


 と言ってしまうのだった。


「リアは甘いわよ。」


 とフィに小声で言われる。


「厳しいだけじゃ、人は付いて来ないわよ。」


 と小声で答えた。

フィが睨んできたが、こういう時は笑顔で応える。



 前期の試験を無事に主席で終えた後、2年から始まる魔力測定を受けた。

1年の時はまだ魔力を扱えないから2年からである。

これは気になるところであった。

魔力の扱いが上手くても、魔力の総量が少なければ直に強さは頭打ちになる。


 結果はシーリアが1200、フィレイが2100、クリンが800だった。

普通クラスの平均が300程度である事を考えると、クリンもさすがダイアモンドクラスと言える。

ちなみにダイアモンドクラスの平均は650程度である。

魔力の総量はこれからの訓練でも上昇するが、スタート地点からかなり突き放されている。


「いやあ、さすが。

 リアとフィには適わないね。」


 とクリンがニヤニヤしている。


「何よその顔は、言いたい事があればはっきり言いなさい。」


 とフィと拳を作る。


「別に何も無いよ?」


 とクリンがにっこり微笑む。

フィがクリンを睨み、健介はその2人を見て微笑む。

可愛い女の子2人がじゃれ合っている姿を見ていると和む。


 それにしてもフィレイが誘拐されたというのは頷ける話だ。

魔力が断突で高い、素質のある人間である事が証明された。

フィレイは健介が見たところ、あらゆる才能に秀でているように見える。

それに対抗出来ているシーリアの身体も凄いが。


 フィレイを返してきたのは、転生魔法が失敗して使い道がなくなったせいだろう。

と言う事は、転生元の人間は恐らく死んだのだろう。

でなければ、あれほどの器、フィレイを返す訳がない。


 何者が転生魔法を行ったのか?

それは全く判らない。

誰にも何も知らせずに子供2人で調べられる事は殆ど無い。

犯人を見つけ出しても、どうにも成らないだろうから気を入れて探していないと言うのが実情だが。



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