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転生の旅  作者: mattsu
23/38

第22話 外交


 翌日、注意していたエンドーラが尾行を察知した。


「性懲りも無く・・・」


 エンドーラが呟き、口元に小さく笑みを浮かべる。

その頃、他の場所に居たクリンとフィの方にも尾行がつき、2人とも尾行に気付いていた。



「あら、クリン、フィ、あなた達も?」


 エンドーラが先に来ていた2人に言う。

そこは情報部の建物の受付の横。

クリンとフィが捕まえた尾行者を引き渡していた。

エンドーラが引っ立ててきた尾行者は、ボコボコにされていた。


「エンドーラ、ちょっとやりすぎじゃ・・・」


 クリンがその様子を見て言う。


「いいんですのよ。

 殺されなかっただけマシなのですから。」


 エンドーラはにべも無く言う。

しかし、エンドーラの言う事も尤もである。

町中とは言え、他国の諜報員がいないとは断言できない。

いや、町中だからこそ、他国の諜報員がいる可能性がある。

自国の諜報員と他国の諜報員を見分ける事など出来ないのだから、下手な事をして殺されても文句は言えないのだ。



 その後、出てきたミュシー隊長にエンドーラ達、と言うより、エンドーラ個人が小1時間に渡り苦情を申し立てた。


「ま、まあまあ、今後はこの様な事が無い様に注意しますから。」


 ミュシーがエンドーラの苦情に辟易している。


「ふん、うちの指揮官に報告して正式に抗議しますから。」


 エンドーラがニヤッと笑った。

ミュシーは顔を引きつらせた。




 昼過ぎからリア達と健介が、ハモ、ネヒル、ジューム、レグクムの4人の参謀候補に用兵を教えた。

健介は時々一般兵と魔術戦士の訓練を見に出向き、助言をしている。


 ハモ、ネヒル、ジューム、レグクムの4人はさすがに飲み込みが早かった。

フィはともかく、クリンやエンドーラよりも作戦立案に関する才能は高いようだ。

健介が望んで選んだとおり、発想が柔軟で、相手の心理を突いて来る。


 エンドーラが悔しげな顔をしていた。


「エンドーラ、そう悔しがらなくても良いじゃない。

 適材適所よ。

 彼らがより良い作戦を立ててくれれば、兵士も無駄に死ななくて済むわ。」


 リアが面白そうに微笑む。

エンドーラは傭兵でもそれなりに切れるのだが直情的な為、簡単に裏をかかれるのだ。


「判ってるわよ。

 それくらい。」


 エンドーラは苦笑する。


 戦略も戦術も用兵の内容であるが、固定化された知識では余り役に立たない。

勝利を掴む為には、勝機と兵の士気が重要な要素になる。

勝機は待つものではなく作るものだし、作る為には兵の士気を高めておく必要がある。

兵の士気を高めておく為に、兵糧は確実に確保しておくのは当然として、兵装を整える事や戦前までの訓練も重要である。


 この様に、戦いにおける準備から実際の戦いに至るまでの全てに関して、用兵として考える。

その事をリアは説明し、具体的な方法と用例を挙げていった。




 夕食時、エンドーラが情報部の尾行の件について、リアに報告した。


「リア、あなたからガツンと言った方が良いですわよ。

 このまま甞められるのは癪ですわ。」


 エンドーラが不機嫌そうにフォークを肉にぶっ刺して言う。

あれだけやっといて、まだ足りないらしい。


「そうね。

 ここまで無礼な事をされては黙ってはいられないわね。

 明日にでも、ミュシーと話してみるわ。」


 リアはエンドーラの様子に苦笑する。


「ついでに、コネを作っておくことを忘れずに。」


 健介が釘を刺す。


「この程度の事で借りられるかしら?」


 リアが少し不安げに紅茶に口をつけた。

彼女も上級指揮官になって色々と仕事をこなしているが、やはり慣れない内はプレッシャーを感じるのだろう。

少し弱気になっているようだ。


「まあ、今回の事は切欠だ。

 シーリア部隊の隊員の監視を、シーリアの許可無くするのは甚だ無礼な行為だろう?

 そもそも、情報部の人間が尾行しているのを見つかったのも問題になる。

 本来見つかってはならないのに、4人とも尾行が見つかっている。

 これらの事を突けば、向うも話しくらい聞くだろう。」


 健介はリアだけじゃなく、他の者にも聞かせるように助言をする。

フィもクリンもエンドーラも、人の上に立つ人間だ。

人脈を作るノウハウを自分なりに持っておくのは良いことだ。


「そうかもしれないわね。

 考えてみるわ。」


 リアは少し元気になったようだった。




 数日後、リアはミュシーとゼンディに一応の協力関係を取り付ける事に成功した。

彼らの言い分は、情報部独自に査定をしていたらしい。


 尾行に気付くかどうかは評価の1つでしかなく、リア達の個人の履歴、出身地と家の状況なども調べてあるそうだ。

情報部としては当然の事で、軍内部、特に上級指揮官ともなればスパイが紛れ込むのと影響が大きい。

そう言う危険要素を持っている,或は、持ちそうな人物をチェックする為の作業をしていると言う事だ。

だから、他の上級指揮官も同様に調べられていて、今回新しく設立されたシーリア部隊のチェックが行われた。


 そんな説明を受けて一応の納得をしたリアは、その後も色々と話を聞いた。

他の部隊の数や編成、国内外の情勢、そして、情報部のこと。

健介の助言によって、リア自身は一切偽らず、駆け引きはしない事にしていた。

相手は情報部の人間、武門のリアは下手に小細工せず、真正面から向き合えばよい。

とりあえず、少し親密な関係を気付く事が出来た。



 そんな事をしている内に、シーリア部隊に他の部隊からの転属して来た者がいた。


「へへへ、今日からこの隊で世話になるオルセイ・ハイテンだ。

 よろしくな。」


 オルセイがニヤニヤしながらリア達幹部を見る。

上官に対してあるまじき態度である。

こんな態度を見れば、食いつくのは当然エンドーラだった。


「オルセイと言いましたわね。

 上官に対して取る態度では無いですわ。

 挨拶をやり直しなさい。」


 一瞬呆気に取られていたエンドーラが睨む。

リア達はまだ開いた口が塞がっていない。


 事前の配属通知によって、オルセイの素性は知れている。

オルセイは大貴族であるハイテン侯爵家の次男である。

ハイテン侯爵家は門閥貴族のワゴール公爵派で大きな地位を占めている。


 派閥としては3つあり、ワゴール派は最も少数であるが、力関係で言えば2番目くらいである。

つまり、ハイテン公爵家はそれだけでかなりの権力を持っている名家と言えた。


 その大貴族の次男が、如何にも自惚れた様子で


「ここは美人揃いだと聞いてたけど、噂に違わぬ美女が揃っているな。」


 などとの口走る。

オルセイはエンドーラの言う事など聞いていない。


「オルセイ。

 ここは軍で、あなたは部下。

 命令に従いなさい。

 2度は言いませんよ。」


 立ち直ったリアがオルセイをじっと見て命じる。


「判ったって。

 本日よりシーリア部隊に配属されたオルセイ・ハイテンです。」


 オルセイがその時だけビシッと敬礼した。

挨拶が終わると体勢を崩し。


「君はクリンだっけ?

 今夜どう?」


 オルセイはクリンに歩み寄ってナンパを始めた。


 次の瞬間、ちょっと鈍い音が響く。

クリンがオルセイの顔面を張り倒した。

オルセイはよろけて数歩下がる。


「目が覚めたかしら?

 これからの訓練は寝ぼけて居ると危険ですよ?」


 クリンが笑うが目が笑ってない。


(おお〜、クリンに手を上げさせるとは・・・)


 健介は妙なところで感心してしまう。


「痛ったあ、噂どおり、なかなかやるじゃん。」


 オルセイは顔に手を当てる。

顔にはしっかりと手の跡が付いていた。


「まだ寝ぼけているのかしら?」


 エンドーラが一歩オルセイに近付く。

エンドーラも笑顔だが目が笑っていない。

怖いし危険だ。


 健介はリアに目配せして頷いた。


「エンドーラ、教育の方はランに任せましょう。

 私達がガキの相手をする必要はありません。」


 リアが健介の意図を察して言う。


「ガキって、言ってくれるね。

 俺の方が年上だよ?」


 オルセイは反省の色が無い。


「ラン、オルセイを連れて行って訓練に参加させて。

 後は任せたわ。」


 リアが言ってニッコリ笑う。

オルセイの事は既に無視だ。

健介はリアに頷き、オルセイの肩に手を置く。


「魔物の分際で触るな。」


 オルセイは健介の腕を払う。


「ランに逆らわない方がいいわよ?

 ランの命令は私の命令だから。

 訓練中の命令違反の処罰もランに任せているからね?」


 リアが忠告する。


 健介はもう一度、オルセイの肩に手をかける。

オルセイがまたその手を払おうとした。

健介はその手を取って捻り上げ、喚き声に耳を貸さずに、そのまま訓練場へと連れて行った。

リア達4人はその姿を見送る。


「厄介なのが来たわね。」


 フィでもそう言う事は判るらしい。


「大丈夫よ。

 ランに任せて置けば。」


 リアが含み笑いを浮かべる。


「それが駄目なら、私の出番ね。」


 エンドーラがふふふと笑っている。

まだ怒っているようだ。




 訓練場に連れて来られたオルセイは、憮然として訓練に加わろうとしなかった。


「オルセイ、これは命令だ。

 訓練に参加しろ。」


 健介が感情をまじえず真顔で言う。


「魔物の分際で人に命令するな。」


 オルセイが嫌味たらしく言う。


 健介はオルセイにゆっくりと近付き、クリンがやったよりも強く顔面に張り手を食らわした。

オルセイは堪らず後退って倒れた。

魔術戦士でなければ、脳震盪を起している強さだ。

オルセイが魔術戦士である事は、資料を読んで知っていた。


「ぐ、てめえ、調子に乗ってんじゃねえぞ!」


 オルセイは立ち上がって叫ぶ。

その声に、周りの魔術戦士達が動きを止めた。


「ここが戦場でなくて良かったな?

 命令違反は死刑だぞ?

 さっさと訓練に参加しろ、命令だ。」


 健介はあくまで平坦な声で言う。


「うるせえ!」


 オルセイは剣を抜いてランに切りかかった。

健介はそれを軽く避けた。


(意外と速いな。)


 健介はオルセイの実力を評価した。

他の魔術戦士達のトップの実力よりも1ランク上の実力があるように見える。

とは言え、幹部の最も弱いクリンよりも格下も格下ではある。


 オルセイが振り向こうとした所へ、健介はオルセイの脇腹に拳を叩き込む。

オルセイは地面に転がって悶絶する。


「自惚れるなよ。

 お前が何を偉そうにしているのか知らんが、お前は弱い。

 その程度の実力で良く大言を吐ける物だ。恥を知れ。

 挨拶も出来ず、命令も聞かず、半端な実力で、我侭しか言えない。

 本当にただのガキだな。」


 健介が這いつくばっているオルセイに言う。

オルセイはまだ答えられる状態ではないようだ。

口をパクパクして苦しそうにしている。


「もう1度言うが、ここは軍で、俺は上官だ。

 理不尽な命令ならともかく、訓練に参加しろと言う正統な命令に従わないのなら、当然罰を与える。

 俺が何者かなど、何の意味もないのだ。

 それとも、魔物なら戦場で手加減してくれると思っているのか?

 訓練とは言え、ここも戦場と心得ろ。

 甘い考えは捨てろ。

 お前はただの弱い兵士だ。

 命令に従い、訓練に参加しろ。」


 健介は柄にも無く長々と説教した。

オルセイは健介の話の最中に立ち上がり、健介を睨んでいた。

しばらく見詰め合う。

健介はオルセイが動かないのを確認して、素早く顔面に拳を叩き込む。

オルセイはまた地面に倒れて顔を押えて悶えた。


「甘い罰はここまでだぞ。オルセイ。

 どうしても命令が聞けないなら、軍を辞めるんだな。

 今のお前が戦場に出れば、確実に殺されるぞ。」


 健介が警告する。

こういう人間は敵だけでなく、味方にも殺される。

立ち上がったオルセイは、睨んではいるが少し怯えているようだ。


「訓練に参加するか、軍を辞めるか選べ。」


 健介が問う。

すると、オルセイは渋々、他の隊員の居る方へと歩いて行った。


 大貴族とは言え派閥争い以外にも、派閥内での争いがあり、次期当主の長男以外はまともな役職など狙えない。

次男以降は商売を始めたり、軍に入って自力で力を付けるのが通例である。

自力と言っても、家の力を使ってではあるが。

その為、オルセイは軍を辞めても、他に仕事がない。

仕事が無くても生きてはいけるが、家族に白い目で見られるのは貴族でも平民でも同じである。


 オルセイにはそれなりの実力はあるが、あの態度のせいで居場所が無いのだろう。

同じ派閥の者が居ても、家格が上のオルセイがあの態度で接触してくれば、迷惑極まりない。

それでシーリア部隊に転属されてきたのだ。

シーリア達にとっても迷惑なのだが、断固とした態度で臨む事で、部下達に一定の評価を得られるだろう。


 オルセイの派閥は敵に回すかもしれないが、弱みさえ見せなければ、他の2つの派閥が味方に付く可能性は高い。

派閥間で叩ける弱みを探しあっているのだから。




 オルセイの件が一段落して2ヶ月。

オルセイは訓練には参加するようになっているが、他の兵士と上手く行っていないようだった。

まあ、あの性格では上手く行く訳が無いのだが。


 周りの魔術戦士も大方が貴族だが、違う派閥の者も居る上、同じ派閥の貴族にも横柄な態度を取るので孤立している。

だが、戦闘訓練ではオルセイの実力が群を抜いているので、他の兵士に良い影響を与えている。

後は他の魔術戦士と仲良くなれれば良いのだが。

頭の痛いところである。



 そんなある日、シーリア部隊は王の勅命により、外務卿の護衛の任務を受けた。

隣国ツガノとその向うのパレノルとの関係が悪化して、小競り合いが頻発しているようで、本格的な戦争に突入するのは時間の問題だった。

我が国ペステンとしても、その状況を見ているだけと言う訳にはいかないので、外務卿が出向いて積極的に参戦するつもりらしい。

普通はツガノの外務卿が来るか、書簡で援軍要請が送られてくるのを待つのだが、そんな悠長な事はしていられない。


 我が国ペステンにはショミルと言う敵対国がある。

もし、ツガノが陥落すれば、ショミルとパレノルの2国を敵に回す事になる。

さすがにこれは不味いので、積極策に出る事になったのだ。


「部隊の全員を連れて行く訳にはいかないわね。

 外務卿と補佐官他5名の護衛として、30名と言うところかしら。」


 リアは指折り数えて考える。


「そうね。

 魔術戦士のみで丁度良いわね。」


 クリンが気楽に頷く。


「バカ言わないの。

 魔術戦士を全員連れて行ったら、留守組みに任務が来た時に困るでしょ?」


 リアはクリンのおでこを指で突く。


「う〜、バカって言った〜」


 クリンが膨れる。


 エンドーラはクリンに苦笑しつつ


「外務卿に2人、他の者に1人ずつ、計8名の魔術戦士で良いのでは?

 他はサポートとして一般兵で埋めれば、十分でしょう。」


 エンドーラが提案する。

リアも頷く。


「幹部は誰が行くの?」


 とフィ。


「私とクリンとランで行くわ。

 フィとエンドーラは留守番宜しくね。」


 リアは各々指差して言う。


「判りましたわ。

 でも、ランを連れて行くのはどうかと思いますけど。」


 エンドーラはランを見て言う。

魔物を外交の席に連れて行くのは、普通なら確かに良くないだろう。


「その点は問題ないわ。

 既に外務卿が先方に連絡済らしいから。」


 リアが肩をすくめる。

ドラゴンのランを外交のカードにするらしい。

一体どんな使い方をするつもりやら。


「そうですの。

 それなら仕方ないですわね。」


 エンドーラはため息をつく。

ランの代わりに一緒に行きたかったようだ。


「そうがっかりしないで、エンドーラ。

 留守の間はあなたが私の代理だから、しっかりやってね。」


 とリア。


「ええ、判りましたわ。」


 とエンドーラ。



 3日後、外務卿エイガン候ロムスとその一行を護衛して王都を出発した。

隣国ツガノの王都までは馬車で4日くらい。

途中、山賊らしい人影を森の中で見たが、襲っては来なかった。

武装した兵士が30人以上で護衛している一行だ。

並みの盗賊では手が出ないだろう。


 大盗賊団でも、国の重鎮が護衛されていると判れば、手を出す事は無い。

それは自殺行為だからだ。

国の重鎮の護衛には必ず魔術戦士がつく。

魔術の使い手が盗賊に入るような事は滅多に無いから、戦力差は歴然としているのだ。


 しかし、外務卿の護衛として30人程度と言うのは、こっちの世界ではが数が少ない。

魔物や盗賊が多いこの世界では、最低50人以上を引き連れるのが普通である。

そして、それはエイガン候も思ったようだ。


「シーリア殿。

 私は門外漢だから文句を言うつもりは無いが、人数が少なすぎないかね?」


 エイガン候は馬車の中から、窓を開けて隣を併走しているリアに言う。

エイガン候の隣にはエイガン候に似せた影武者の人形が乗せてある。

リアと健介が作った例のゴーレムを変装させてあった。

なので、走行中とは言えエイガン候自ら顔を出されるのは宜しくないのだが。


「ご心配には及びません。

 私の部下達は優秀ですから。

 それに、大人数で攻められた場合には、ランが対処します。」


 リアが何でも無いと言うように笑う。


「ラン?

 あのドラゴンか?

 あの姿では、そこまで強そうに見えないが。」


 エイガン候は前を見詰めた。

健介は一行の先頭を進んでいて、リアとエイガン候がその後姿を見ている。


「その為の人の姿ですから。

 あのままでも強いですが、ドラゴンの姿に戻れば雑兵など1撃で数十人は吹き飛びます。」


 リアが説明する。

魔術で身体強化した魔術戦士でさえ、ドラゴンの1撃で瀕死へ追い込まれるのだ。

一般兵なら普通に身体が引き千切れて即死である。


「そうか、まあ君が言うなら間違いないのだろうな。」


 エイガン候は頷いて馬車のシートに身体を預けた。

当然、彼はリアがドラゴンと戦って服従させた事を知っている。

その内の2人が護衛についているのだから、実力的には問題ないのだろうと。



 無事にツガノの王都へと着き、城へと案内された。

リアとクリンは外務卿一行と城へ入り、健介は他の兵士達を率いて割り当てられた兵舎へと入った。


 健介は一応、魔術戦士8人に各々の一般兵を訓練をさせる事にした。

少なくとも4日以上はツガノに滞在するだろうから、身体を鈍らせないようにする。

護衛対象単位で、各魔術戦士に一般兵を割り当てていた。

いざと言う時には、リア、クリン、健介は遊撃する事になる。

この3人についてこられる魔術戦士は、この中には居ないから、各魔術戦士達の行動に期待する事になる。



 リアとクリンは外務卿と共にツガノ王へと謁見して挨拶を交わし、その後、ツガノの外務卿と話し合いの席に同席した。

社交辞令もそこそこに、本題へと話題は移った。


「我が国ペステンは、ツガノへの援軍派兵の準備を進めています。

 戦が長引けば、ツガノの財政も厳しくなるでしょう。

 早い段階で敵を押し返す協力をする事が、双方の国の為です。」


 エイガン候は和やかな雰囲気で話を進める。


「仰る事は判ります。

 お気遣いは感謝いたしますが、まだ本格的な戦闘には至っておりません。」


 ツガノ外務卿ユーレン伯は少々堅い感じがした。

ツガノはペステンよりも小国であり、友好関係にあるがこれを気に侵略される可能性も無くは無いのだ。

それは表立っての侵略ではなく、内側からの侵食によるものもある。

力を貸すと言われても、はいそうですかとは言えないのだ。


「存じております。

 ですから、もし戦が本格化した場合には、我が国へ参戦を呼びかけていただければ、速やかに対処いたします。

 その為に、少々見世物を用意しております。」


 とエイガン候。


「見世物、例のドラゴンですかな?

 噂では聞いていますが、本当にドラゴンを使役しているのですか?」


 ユーレン伯は少々疑っているようだ。


「ええ、こちらのシーリア准将とクリン大佐、後ここには来ていませんが、フィレイ大佐の3人でドラゴンを倒し、下僕としたのです。

 件のドラゴンは今は人に化けて、他の兵と共に兵舎に居ます。」


 エイガン候がシーリアとクリンを紹介して説明をする。


「ほう、そちらの女性方が?

 見かけによらず、凄腕なのですね。

 ふむ、そのドラゴンの実力を示してもらうと言う事ですね?」


 ユーレン伯も興味があるようだ。


「ええ、もし必要ならツガノの魔術戦士、こちらでは魔騎士と言うのでしたか、4人までなら戦わせても構いません。」


 とエイガン候。

ツガノでは魔術戦士を魔騎士と呼ぶ。


「4人と言うのは意味があるのですか?」


 ユーレン伯が鋭い指摘をする。


「ええ、シーリア准将の話では、4人までなら少しはドラゴンが手加減出来るらしいのです。

 それ以上になると、問答無用で殺しかねないと。

 ですが、4人以下であっても、ドラゴンの一撃はまともに食らえば致命的なものですから、それは覚悟してもらわねばなりません。」


 エイガン候が説明し、忠告した。

ユーレン伯は納得して、早速、兵士を選ぶ事にした。


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