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転生の旅  作者: mattsu
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第13話 黒い石の荒野


 結局、クリンと近くの町で待ち合わせした。

ドラゴンのランはクリンと一緒に行かせる事にした。

心配は無いと思うが、クリンのボディーガードとして。

クリンは何処か抜けている所があるから、心配なのだ。


 翌日、馬車を呼んでクリンと分れ、ヴァージル領へと向かった。

ヴァージル領の町に着くと町の中でフィと分れた。

屋敷に帰ると、父ヘインツと母ミレーヌが待っていた。


「お帰り、卒業おめでとう。」


 とミレーヌが抱き締めてくる。

相変わらずのナイスボディに赤面してしまう。

なかなか慣れないものだ。


「お母様。

 恥ずかしいです。」


 と健介。

少女の身体に入ってからは、女性の裸を見ても何とも思わなくなっていた。

だが、ミレーヌに抱き締められると、その柔らかい体とその暖かさが、やたらと恥ずかしかった。


(そういえば、この身体も随分成長したな。)


 シーリアの身体はこの4年で随分女らしくなってきた。

戦闘訓練のせいで筋肉質の身体ではあるが、それでも出る所は出てきている。

母ミレーヌもまだまだ体形は崩れていない。



 屋敷に入って両親と話をした。

ダンジョン探索の話。

ドラゴンとの戦い、そして、盟約。

それから、手紙で伝えておいた上級士官学校の事。


 両親は楽しそうに、時に心配そうに聞いていた。


「ドラゴンと戦うなど、危険な真似をしたものだな。」


 とヘインツは首を振る。


「でも、無事だったんですから。」


 とミレーヌが庇ってくれる。


「お父様、そんな事より、もう盗賊の被害はありませんの?」


 と健介。


「そんな事って、お前・・・」


 とヘインツは口ごもる。

男親とは悲しいものだ。


「もう大丈夫よ。

 小さな盗賊集団もいなくなったみたいだから。

 皆、あなたとお友達を恐れているのよ。」


 とミレーヌは少し複雑な顔をしている。

娘が盗賊団に恐れられるような娘になってしまったのだから。

これが息子ならまた話は違うのだろうが。


「良かった。

 じゃあ、もう何も問題は無いのね。」


 と健介は事も無げに振舞う。

ミレーヌの心配は薄々判るのだが、今はまだそれどころでは無いのだ。


「まあね。」


 とミレーヌは少し口ごもる様に言う。


「何かあったの?」


 と健介。

今度は別の心配事らしい。


「シーリアが気にする事では無いよ。」


 とヘインツ。


「お父様、私だけ除け者は嫌ですわ。

 私はもう子供ではありません。

 家に居る時ぐらい、もう少し私を頼ってください。」


 と健介。


「そう、そうね。

 あなた、シーリアにも教えてあげて。」


 とミレーヌ。


「むう、ミレーヌが言うなら仕方ないな。

 お前も知っていると思うが、荒地を畑にする作業が難航しているのだ。」


 とヘインツは唸りつつ説明する。

荒地と言うと、シーリアの記憶にはこの町の西にある黒い地層のある荒地の事だった。


(ん? 黒い地層・・・あれはあれか?)


 シーリアの記憶を検分して引っかかるものを感じた。

元の世界で見覚えがある。


「お父様、その荒地とは黒い石が沢山ある場所ですか?」


 と健介は確認する。


「ああ、そこだ。

 どうもその黒い石が原因らしいのだが、掘っても掘っても黒い石が出てきてな。

 どうにも出来なくて困っているのだ。」


 とヘインツ。


「それでね。

 仕方ないから、あの土地は他の領地に売ろうかという話が出ているの。」


 とミレーヌ。


「それは駄目です!」


 と健介は思わず反射的に言った。


「駄目って、売ってはいけないのか?

 殆ど不毛の土地だぞ?」


 とヘインツ。


「売る話は私がその土地を確認するまで待ってください。

 多分、売らない方が良いです。

 詳しい話は、確認してからしますね。」


 と健介。

ヘインツとミレーヌは顔を見合わせた。


「まあ、作業は中断したままだし、好きにしなさい。」


 とヘインツ。



 翌朝、フィを誘って早速その荒地へと向かった。

普通に歩くと半日は掛かるが、訓練も兼ねた身体強化で走ったので、30分と掛からなかった。

この場所は、シーリアがまだ小さな子供の頃、父ヘインツが視察に来た時に一緒に来た場所だった。

その当初から、不毛の荒地とされていたはずだ。

ヘインツの事だから、色々試したのだろう。


「ここね。」


 と健介は周りを見渡す。


「ええ。」


 とフィも見回している。


 地面は掘り返されて、黒い地層が剥き出しになっている。

表層の地面は厚くて20センチくらい、その下から黒い地層が覗いていた。


 健介はその黒い地層から黒い石を取り出し、普通の地面の上に置いた。

その石は朝露のせいか少し湿った感じがあったが、魔法の火炎を浴びせると燃え始めた。


「やっぱりそうだった。」


 と健介は呟く。


「これは何なの?」


 とフィは燃える石を不思議そうに眺める。


「これは石炭と言うものよ。

 この黒い塊は、判りやすく言えば炭が圧縮された塊なの。」


 と簡単に説明する。

フィは炭と言われて納得したようだ。


 健介は大分昔、中学生の時に親戚の家の近くにある閉鎖された炭鉱で遊んでいて、石炭の現物を見た事があった。

ここにある石炭とはちょっと質感が異なるが、石炭は石炭。

これだけ大量あって露天掘りが出来るとなれば、安価な燃料としてこの領地の新たな産業となるだろう。


 石炭も砕いて畑にまけば肥料になると聞いた事があった。

しかし、これだけ石炭が詰まっていたら、それは不毛の荒野にもなるな・・・


「でも、畑には出来ないわね。」


 とフィが残念そうに言う。

土地の価値は作物が出来るかどうかで判断しているらしい。

ヴァージル領内の産業は主に農業だから、そう言う発想になるのは仕方ないか。


「畑にする必要は無いわ。

 この石炭は貴重な燃料なのよ。

 石炭を掘り出して、木の代わりに燃やせばいいの。

 石炭が無くなった土地は、埋め戻して畑にすれば良いわ。」


 と健介。


 蒸気機関が無くても、石炭と言う燃料は重宝するはずだ。

ここなら露天掘りで簡単に石炭を掘り出せるのだから、採掘自体に大した金もかからない。


 木を伐採するのは大変だし、その後も木材をバラバラに切り分けて運ばなければならない。

チェーンソーが有る訳無いので、かなりの重労働であり、時間と金がかかるのだ。

石炭を使えば木を伐採しなくても、ちょっと掘り起こすだけで大量に燃料が得られる。

これは非情に有利な商品と言える。


 その事をフィに説明すると、感心しつつ納得してくれた。



 調査を終えて、フィと共に屋敷に帰った。

ヘインツに調査結果を報告し、石炭の使い道を説明する。

その際、袋に入れて持ち帰った石炭を、暖炉に入れて燃やして見せる。


「例えば、隣の領は鉄が取れてたはずですが。」


 と健介。


「ああ、今でも取れている。

 我が領でもその鉄を買っているからな。」


 とヘインツ。


「お父様。

 鉄を精練するには、大量の燃料が必要なんです。」


 と健介が念を押すように言う。


「・・・それはつまり、石炭を隣の領に買わせると言う事か?」


 とヘインツ。

ヘインツは商人の才覚は余り無さそうだ。


「はい。

 きっと、隣の領は木を伐採して森や山を裸にしているでしょう。

 鉄を売らないと財政が危うくなるけど、鉄を作るために燃料として木を切る必要がある。

 さらに木を切って運ぶ為に人足の金も掛かります。

 もしかしたら、木材を他の領から買っているかもしれません。

 しかし、我が領から石炭を購入させた方が安上がりで、森や山もこれ以上裸にされなくなります。

 双方にとって有益な取引になるでしょう。

 もちろん、我が領内でも薪代わりに石炭を使えば、木を切る必要も少なくなります。

 我が領内の森林伐採の状況はどうなんですか?

 お父様。」


 と健介。


「う、うむ、確かに、町の周囲の森は少しずつだが木が減ってきているな。」


 とヘインツが考え込むように言う。


「木が減れば森の恵みも減ります。

 森の恵みには水も含まれると言います。

 水が減れば畑も維持できないでしょう。

 ですから、燃料を石炭に替えていく必要があります。」


 と健介。


「・・・シーリア、賢くなったな。」


 とヘインツが嬉しそうな顔をしている。


「え、ええ、学校で色々教わりましたから。」


 と健介は誤魔化した。


(こっちの世界の知識にそぐわなかったかも知れん。)



 フィは健介の言った事にヘインツ同様に驚いていたが、顔には出さなかった。

シーリアの身体に入っている精神と魂の人物は、いつもながら博識だ。

それに、冷静で頼りになる。

既に自分よりは大人の人物だとは気付いているが、一体どんな人物なのかまるで見当がつかなかった。

4年一緒にいたが、貴族と言う訳では無さそうだった。

学者でも無いように見えたが、学者は大抵貴族だから、自信は無い。

平民では決して無いとは思うが、時々見せる生の言動は平民としか言い様がない。

しかし、平民がこれほど博識で、冷静な者が居るだろうか?

身近に居て、興味深くも謎の人物である。



 ヘインツは娘たちの助言に従って、石炭の露出している荒地を炭鉱として開発する事に決めた。

畑を開拓する予定だった人を、炭鉱堀へと替える。


 町の住人に石炭の使用を推奨し、薪よりも安価に石炭を提供する事にした。

森林の伐採を最小限に抑えるように規制した。

石炭の販売によって被害を被る薪の販売業者に石炭を売るようにさせる事で円満に解決する。

どの道、石炭の販売ルートを確保しなければならないのだから渡りに船だ。


 今まで伐採した場所に、苗木を植える事もさせる予定である。

この様な事をフィも協力するようにさせて、健介はヘインツと石炭事業の展開に協力した。


 石炭の採掘が始まって販売の準備が整うと、周辺の領へ売り込みを始めた。

直接領主へ売り込むのと同時に、主に町にいる商人に協力を仰いで薪に代わる安い燃料として販売網を広げさせる。



 そして、上級士官学校入学の日が近付いてきた。


「お父様。

 私達はそろそろ出発しなければなりません。」


 と健介。


「ああ、お前達の助言に従って、事業を進めるから心配するな。」


 とヘインツ。

健介はフィにも助言の内容を話して、フィからも助言させるようにしていた。

身体を入れ替えた際に、その方が色々都合かいい。


「ええ、後はお父様にお任せしますわ。」


 と健介。


 採掘作業は順調だ。

健介は地質学者では無いから良く判らないが、荒地の広さと石炭の地層の厚さ、これからの需要を考慮して計算した結果、少なく見積もっても20年は持ちそうだ。

単純計算だから自信は無い。

一応、石炭以外の産業も推し進めるようにヘインツへ言ってある。

石炭が無くなったら、はいそれまでよでは、後世に怠慢の誹りを受ける事になる。

ありがちな話だから、それは避けて欲しいものだ。


 翌日、両親と別れフィと合流して、予め用意して置いた業者の馬車に乗って、士官学校の近くの町へと向かった。



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