プロローグ
1万年以上昔に文明があった。
その文明は現在よりも遥かに進んだ魔術を用いて、宇宙にまで進出しようとしていた。
しかし、そんな時代に2つの大きな勢力が戦争を始めた。
1つは現在の人間の祖先であり、もう1つは地下世界に住む魔族の祖先である。
元は同じ人間だが、魔族の祖先は自らの肉体を魔術によって改良し、より高い身体能力と魔力を手に入れようとしていた。
だが、それに対して批判的な保守勢力が、戦争を仕掛けたのである。
魔族の祖先の数は少なかったが、その高い魔術水準と自らの肉体を改良した知識を応用し、魔物を作り出した。
その魔物を使役し、強力な魔法で戦いあった。
戦いは膠着状態に陥って180年に及んだ。
業を煮やした両陣営は、ほぼ同時に禁断の魔法を使用した。
その魔法がどんなものなのかは判っていない。
しかし、その結果が現在の人間の文明と魔術水準の低さを見れば、その凄まじさが判る。
その後の人間の文明水準は著しく低下し、最近になってようやく魔術をまともに扱えるようになったのだ。
それは地下に逃げた魔族も同様だった。
世界に存在する12の巨大なダンジョンは、魔族が作った地下シェルターだった。
魔族が地下へ逃げる際にダンジョン内の設備は持ち去られ、最深部で魔物を生成しダンジョンに配置する装置が作成された。
だが、長い年月の間に装置は劣化し地上へも魔物を送るようになり、魔物は制御から離れた。
魔族もダンジョン内を安全に歩く事が出来なくなり、魔族と人間の接触はほぼ途絶えた。
地上の人間は送られてくる魔物の脅威に怯える事になり、文明を再発展させる事がさらに困難になった。
魔物に対抗できる魔術が廃れていたからである。
地下の魔族も、魔族同士の戦争が勃発し、魔族自らの手で文明を崩壊させてしまった。
12の地下世界は、その数を大きく減らし、それまで蓄積していた魔術知識の殆どを失ったのだ。
そして、人間も魔族も、1万年と言う長い年月の中で、この歴史の殆どの部分を忘れ去ってしまう。