成長期第一段階
何も言わずに笑って欲しい。と言ってしまうのは、自分で自分を傷つけられないことの証明だ。
真夏の日差しとセミの死骸。
湿ったコンクリートとガラス片。
それを見て不快な顔をしている自分を見て、涙している誰かの嗚咽。
切りつけてなんかいないのに、誰も傷つけようとなんてしていないのに。滲み出た自分の血で、窮屈だった靴が脱げなくなってしまった。
そんな汚れた靴で歩き回っては、カッターナイフで傷を癒す少女たちを嘲笑い、軽蔑で身体を埋めていく。満たされるたびに、感情に揺られながら、理性的に考える。
内側に向いた誰も傷つけられない悪感情は出口を失ったまま浮遊して、今では何処を漂っているのか分からなくなった。
ただ、汚泥を引きずった痕跡が、存在していたことを主張して、ただその痕跡を這い蹲って拭き続けている。
そうして下を向き続ければ、いつしか顔を上げることを忘れてしまい、自分の居場所すら見失う。
いつの日か、この心を晴らすことを胸に抱き。
いつしか、汚泥の跡を必死に隠す醜い蜥蜴に成り下がる。
そんな蜥蜴を踏みつけて、いつかの自分を嫌悪して。
ようやく。
ようやく、新しい一歩が踏み出せる。