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放課後…
夕暮れの教室。一人自席で机に顔を埋める。
その日は何だか残りたい気分だった。正確には残りたい理由があったのだ。
すると、突如隣の教棟から重圧なサウンドが聞こえてくる。ギターの歪んだ音に、ベースのどっしりとした低音。そして、ドラムがリズムを刻む音が調和して春人の耳に届く。荒削りだが、聴きいってしまう。
なんと心地の良い音なのだろうと聞き入ってしまう。次第に左手の指は四方に、独立した生き物の様に動き出す。疼くのだ、無意識に。
しかし、それは望んではいけない。望むことは許されない。
何故なら、彼橘唯織は自らギターを捨てた人間なのだから。