入学式
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『あなたは、今年度の大和魔法学院入学者選抜の結果、本校に入学が認められましたのでここに通知します』
……俺、兎塚優に大和魔法学院からの通知書が届いたときは死ぬほど驚いた。
現在、魔法とは一部の者だけが使える奇跡の力。
魔法を使う者は特別視され魔法学院を卒業したほとんどの人間がエリートとしての道を歩んでいる。
メイジの医師は魔法でほぼ不可能に近い病を治すのに成功した。メイジの警官は被害者の遺品から犯人の情報を読み取り、未解決事件を暴いた。
通常不可能なことをやってのける魔法はまさに奇跡の力であり、メイジは神の子とまで呼ばれている理由だ。
しかし、誰もがメイジになれるわけではない。
魔力を持っている選ばれた人間のみがメイジというこの国のエリートへの道を歩むことができる。
……それに自分が選ばれた、とようやく頭で理解したときは、驚いたあとに狂喜乱舞し興奮でその日の夜は一睡もできなかった。
ーーーーそして月日は流れ、今日は大和魔法学院の入学の日。
俺は、家まで迎えにきた学院のバスに乗って移動していた。
大和魔法学院は全寮制であり、何処にあるのかも世間には秘匿とされていて、学院の場所を一般人が知ることはできない。
バスにはスモークが貼られ、その上からカーテンで外の景色を遮断されているため今どの辺を走っているのかを生徒は検討もつかない。
そして家から寮に持ち込めるものにも規制がある。
学校が許可している一部のものしか持ち込めないのだ。
当然携帯などの外部と連絡がとれるものは持ち込み不可となっている。その結果、俺の持ち物はいくつかの着替えとお気に入りの本数冊ぐらいしか持ってくることしか出来なかった。
……もう、走り続けて八時間程たっただろうか? いい加減に尻が痛くなってきた頃、ようやくバスのエンジンが止まった。
「おーい。ついたぞ、降りろ」
バスの運転手に促されバスから降りる。下で運転手から預けてあった荷物を受け取り、周囲を見回すとそこは日本が誇る、大和魔法学院……ではなく暗い森だった。
「あのー。ほんとにここであってます?」
不安になり、運転手に尋ねた。
「おう。合ってるよ。しばらくここで待機してな」
そう運転手は答えるとバスに乗り込み、再びエンジンを掛けて帰ってしまった。
……とりあえず木陰に腰を下ろしてしよう。俺はそう考えて荷物を置こうとした時、辺りが一面真っ白に輝きだしたのだ。
「……うわっ。なんだこれ!」
気づいたときには、俺は暗い森ではなく……体育館にいた。
「諸君、まずは入学おめでとう。私はこの学院の校長を勤めている近江消化だ。短いが少し挨拶をさせてもらおう」
体育館のステージを見ると校長と名乗った筋骨粒々の男が立っている。
「君たちは神によって選ばれた素晴らしい素質を持った人間だ。ぜひ、この学院で成長し、その能力をこの国に役立てて欲しい。……と、長い話は諸君らも退屈だろう。早速各クラスに移動しこれからの説明を受けてもらおう」
数分も立たずに校長の挨拶と入学式が終わった。
生徒は全員何が何だかわからないというような顔をしている。
つづく
少しづつ少しづつ