表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕も双子であいつも双子で君も双子  作者: 陽向夕乃
俺も双子であっちも双子でこっちも双子
4/4

1


「お前のせいで英語赤点だっただろーが!」

「プリント無くすお前が悪いんだろ! バーカバーカ!」

二年生の教室の前を全力ダッシュする、赤と青。周囲の生徒は信号……?と笑いを堪えているが断じてそんない。ありえない。

俺は飴善あんず、月詠学園に通う高校二年生。

そして、追いかけているのは海を思わせるような青い髪、紅と碧のオッドアイ。俺より4cm高いが華奢な身体。靡くスカート。月見里ライチは紛うことなく変態中二病である。

「違うから! 僕変態じゃないから! その説明間違ってるよ! アホ善!」

人をチンピラだの単細胞だのコケにしたお返しだ。中二野郎。

「中二病ってことは認めるんだな?」

「僕のは自前だ!」

「とりあえず殴るから止まれ」

「絶対に嫌だね」

前を走る月見里、追いかける俺。三回にある二年教師から一回の三年教師まで、鬼ごっこを続ける俺ら。あいつとは同じクラス、そして席は前後。持久戦がもつれようとも、あいつは授業をサボらない。ならば、俺が勝ったも同然。このまま追いかけるのみ!

「あ、飴善あんず君。いたいた」

英語科の安藤先生に捕まってしまった。

「これ、補習プリント。やっておいてね」

「……はい」

「じゃあ、僕はこれで」

安藤先生に別れを告げ、再び月見里を追おうと前方を見るが奴は既に居なかった。

そして、無常にも鳴り響く金の音。現在地は一階職員室前。目的地は三回二年三組。

「うおおおおおおおおお!」

今の俺には走ることしか出来なかった。


結果3分遅刻してしまった俺は、息も耐え耐えに席についた。

この時限が古典の花京院先生で助かった。担任なだけあって理解がある。

机に突っ伏している俺に月見里はノートの切れ端を丸めたものを俺のノートの上に乗っけた。

中を開くとそこには……『ざまぁwwwwww』と書いてあった。

月見里ライチ……俺は貴様を絶対に許さない。

『死ね』と一言書いて中二病の頭に丸めてぶつける。月見里は振り向き、舌打ちをかまして、再びノートの切れ端にペンを走らせる。その紙には『お前が死ね単細胞』と書かれていた。そんなやりとりをしていると、ガタン! と、教卓の辺りで大きな音が聞こえた。

「大変だ! 花京院先生が鼻血を垂らし貧血で倒れたぞ!」

教卓の前に座っていたこのクラスの委員長が先生を抱え叫ぶ。

「とりあえず、私と委員長で保健室へ先生を連れて行ってきます! 皆は自習しててください! 行きましょう、委員長」

「あぁ、ありがとう。助かるよ」

委員長と副委員長に連れられ、教室を後にした花京院先生に俺らは深くため息をついた。

「飴善に月見里、お前らいちゃいちゃして授業妨害すんのいい加減やめろよ、古典が全く進まないだろ」

クラスメートの一人が教室の端っこにいる俺らに苦言を呈す。いつ誰が、中二病といちゃいちゃしたというんだ。

「「「自覚なしかよ!!」」」

全員に突っ込まれ、への字に口を歪ませる月見里を『……かわいい』と言ってカメラを向けるお前らもどうかと思う。

花京院撫子。担当教科は古典で、二年三組の担任。趣味が多少特殊で、男子生徒をくっ付けて妄想に耽る、所謂腐女子という人種なのだ。しかし、美人で巨乳で優しいと生徒たちからは人気がある。

授業中、暴走すると大量出血(主に鼻から)で貧血になり授業が中断されてしまうので、注意が必要なのだが、最近出血がやたら多いので、代わりの先生がそろそろやってくるだろう。

「飴善ってさーそれなりの容姿してるのに浮いた話が一つもないよな」

「あー分かる。そこんとこどうなの?」

それなりのってなんだ、それなりのって。どうせ俺は普通だよ。

「この童貞のことだし、どうせ初恋でも引きずってるんだろ」

月見里が発した言葉に俺は一瞬ドキリとする。本来ならここで『は? 何言ってんだよ、お前は一生使うことないだろ』と返すのだが、言葉が出て来なかった。

「なに、図星?」

「別に……」

「ふーん」

代わりの先生が来てしまったため、クラスメートはいそいそと板書を始めた。

ーー初恋か。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ