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彼女は人であったのか

今話と、一つ挟んで最終話は短いので三話連続で投稿します。一時間後にもう一話、さらに一時間後に最後の一話を更新します。

「博士!真理恵先輩!」


突如落ち着かなくなり、ついに魂が抜けた様に、わ、と延々呟く咲ちゃんの体を揺さぶる。二人共呼んだらすぐ来てくれたけど、一瞬で固まった。


「魔法の類じゃない。さっきとも寝ている時とも大きく変わりない。これだけの影響力があってわからないわけがない」


「こっちの分野でもない、計器に反応ないからガスでもないし、響ちゃんには変わりない。あり得ない」


二人の設置した機器や、計器、魔法的なものも全て反応しなかった。僕の魔術もそれを敵の攻撃とみなさなかったし、原因がわからなかった。


となればその場の手がかりから考えるのは無理だ。


現場のものに関係なく知ることができるもの、ほんの少しの手がかりから情報が得られるもの。占術だ。


でも博士は魔法全般に精通しているが、各種占術の類が苦手だ。日本古来より続く八百万術式を得意としているものの、男性であるために巫女としての力はない。


それに不死身であるが故にその上未来のことまで知ったらつまらないとそのまま言っていたのだ。


「……鈴ちゃん!」


すぐさま電話をかける。ここは外からは許可した電話からしか繋がらないけどこっちからは繋がる。今は多分休み時間、学校から離れすぎてて詳しく覚えてないけど。


コールの一回一回がもどかしく、永く感じる。ガチャッと鳴って繋がったと同時に叫ぶ。


「咲ちゃんを占って!!」


「……わかった。話聞かせて?」


とりあえずあったことを全部説明して、電話口の前で鈴ちゃんが術を行使した。電話を通じてほんの少しの魔力が咲ちゃんにぶつかると、小さな光が散る。


「うん、来宮さんの問題は精神の問題。精神の中にもう一人誰かがいる」


誰か、その誰かが咲ちゃんを攻撃してる。精神の中にもう一人なんてそんなの一人しかいない。


「魔女だ」


「精神の中、子宮はフェイクか。すでに彼女の体は魔女であり、来宮 咲という人格は作られたものか。元から壊せるものとしてスイッチが設定されていたなら魔法も何もあったものじゃないね」


とんでもなく虚仮にされた気分だと博士は頭をガシガシ掻き毟る。


「元から助けられる目のない存在を手元でその時まで守らせる。多分意図した形じゃないが托卵みたいなことをやられたわけだ、ふざけてる」


博士が十拳剣を取り出して、咲ちゃんにゆっくり向ける。


博士と真理恵先輩、両方相手にしても僕じゃ勝てない。でも、退くわけにもいかない。実はずっと咲ちゃんのそばにいた山蛇が僕に力を貸してくれる。巫女体質じゃない僕だけど、僕の生み出した木は確かに豊穣神たる山蛇の加護を受ける。


魔力を漲らせた僕の前で床から天井から出てきた壁が博士を閉じ込める。


「そこなら魔力は霧散する。十拳剣もただの青銅の剣でしかないよ」


まぁ、音も聞こえないけれどと真理恵先輩が言って、僕は背中から伸ばしかけた幹をどうするか判断しかねる。


「精神にいるって言ったね?なら、山蛇を経由して中に入れるかもしれない。門外漢だから保証はしかねるけど」


確かに咲ちゃんは巫女体質で、だから魔物と合体する魔操士の資質がある。山蛇経由で繋がることができるなら、いける。


「……道具が要ります。巫女としての資質が響さんには殆どない。それを補う必要があります」


「タイムリミットはおそらく咲ちゃんが何も言えないほどに壊れるまで。この壊れた様な状態が表に出ているのはまだ、咲ちゃんに主導権がある証拠」


いつ終わるかはわからない。そんな中で物を用意しなきゃいけない。


鈴ちゃんにも電話して、山蛇の指定したものを買い揃えたり探したり、幸い巫女としての力を増す儀式のための道具は魔法が認知された時代、手に入れるのも容易だった。


巫女服に身を包み、僕が生やした木から梓弓を作り、鳴らしながら口寄せのための呪詛を口にする。


山蛇が体に入ってきているのを感じながら、その入って来ている感覚のある部位を咲ちゃんへと重ねる。


ドクン、一つ鼓動が大きく鳴って、僕は体を抜けた。

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