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番外編.2 ある日の騎士の叫び

 身びいき、ってあるじゃないっすか。

 なんだかんだ文句言ってても、我が子が一番可愛い、みたいな。

 それが対国家とかなると、こっちも騎士団のプライドとかあってさ。

 特にうちは世界一の美形国家とか言われてるし。

 『青の聖国』とかって俗称もついてるし。

 王様王妃様以下、王子も王女もそりゃあ化け物レベルで美しいし。

 えーと、だからこんなふうになっちゃうのも仕方ないって話なんですよ。



「はあ!?てめえ、もいっぺん言ってみろ!うちの王がなんだってえ!?」

「このロリコン疑惑が!ちょいちょい人んち不法侵入しといて程度でけえんだよ」

「んだとコラ。そりゃ国境付近で戦ってりゃ入るだろ、ちょっとくらい!片足くらい!てめえんとこだってあの態度ウルトラ級にデカイ、クソ魔導士なんかかかえていやがって」

「はーあ?シーファはうちのじゃあーりーまーせーん!あんなのただの性悪変態野郎で、うちのロイヤルファミリーとはなーんの関係もありませーん」

「何ぃ!?王宮にでけえ顔して居座ってたじゃねえか!」

「ええ~俺知ーらない。お前見たあ?」

「俺昨日まで魔物討伐組だもん、知らないなー」


 ーーうちとはあまりそりの良くない、某国の兵士と、中立地帯の酒場で会っちゃったのが運のつき。

 うちの騎士団の若い連中と(俺も若いけどね!)、そっちの兵士達がい~い感じに酔っぱらって絡み始めたのが一時間前。

 なんかもう、カオスです。



「ねえねえアラン隊長!うちのラセイン王子が一番ですよね!!綺麗だし優しいし強いし聡明だし、なんかたまにすっげえおっかねえけど!」

「ね!?剣も超一流だし、キラキラしてるし!たまにすっげえ容赦ねえけど!」


 うんうん、君たちがウチの王子様を大好きなのはよく分かったから。


「それにセアライリア姫はもう夢みたいに綺麗だし!」

「キラキラキラキラしてるし!」


 うんうん、なんかもううちの国の子達、馬鹿ッ面まるだしだからおやめなさいね。隊長泣いちゃうよ。これが世界一の結束を誇る魔法大国のエリート騎士団なんて、もう誰も信じてくれないぞ。


「はーあ?うちの王様なめんなよ!そりゃもう強くてカッコいいんだぞ、男の中の男だぜ」

「えーだって御歳26歳のくせにー、なんかどっかの女の子追っかけてるって聞いたけどー」


 ちょっと待って君たち、それまだ極秘情報じゃないかな。しかもほんとのことだけど外交問題発展系じゃないかな。隊長泣いちゃうよ。


「「とにかく、うちが一番!!!」」


 あっそう。やっぱそうなるよね。



「おや、それは嬉しいことを言ってくれるね。今日はねぎらわなくてはならないな」


 艶やかな楽器みたいに甘い声で。

 それはもう、キラキラキラキラして、その輪の中に悠然と入って来たのは。

 噂のうちの王子様。


「ラ、ラセイン王子!!!?どうしてこんなところに!」


 騎士達は度肝を抜かれてただ茫然とし、某国の兵士はあっけに取られている。

 そりゃそうだ。王子様がこんな下町の酒場に、さらっと現れるなんて誰が予想するか。


「ちょっとした野暮用だ」


 にこりと笑うけれど俺はだまされない。

 また家出した、この人。もうやだ。

 王様に連れ戻せって言われるの、主に俺なのに。

 つうか、固定で俺なのに。ブレずに俺なのに。

 頭を抱える俺の横に座って、ラセイン様は某国の兵士に笑いかける。


「それにしても、かの国の兵士の皆さんは、本当にご自分達の主君を想っておられるのですね。素晴らしい臣下を持って、王が羨ましいことだ。それともそんな王だからこそ、あなた方のような勇猛果敢な兵士の心をつかむことができるのかな」


 それはそれはお美しい笑顔と共に、そんなことを言われて。兵士達は顔を真っ赤にしてしどろもどろ。


「え、いや、あの……はあ、まあ」


 落ちたな、こりゃ。

 今晩中には、「聖国の王子って案外良い奴だぜ」説があの国で広まるんだろう。

 ぜーんぶこの方の計算だとも知らず。

 恐るべし、我が王子。


「詐欺師……」

「おや聞こえたぞ、アラン。喜べ、お前は明日から一週間、姉上の護衛だ」


 『護衛だ』が『オモチャだ』に聞こえた俺の耳は、多分間違ってない。

 泣けるわもう。


「良かったな、愛しい姉上のお側を譲ってやる」


 ああもう、この主君ーーーその、セアラ姫にそっくりな笑顔で。

 畜生、大好きだーー!!



 やっぱうちの王子が一番……?



fin.

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