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クソチートの脱ボッチ計画  作者: 鹿田はもの
第二章、思い出の街セルベール
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そのナナ、リーダーの知り合い

「おや、レシュさん。こんな日にも精が出ますね。お仲間もこんなに増えちゃって」


門が観音開きで手前に開くと、中から数人の一兵卒と、彼らより少しだけ身分の高そうなお兄さんが出てきた。三十代くらいってギリギリお兄さん? いやおっさん的なノリでおにっさん?


そんなこと気にしているのは私だけだったようで。


知り合いだったのか、レシュさんは片手を挙げて対応した。


「お前も昇格したみたいで。よかったな、ヘタレ」


ヘタレ?! 下手したら十歳以上年上の人にヘタレ呼ばわり?


そんな仲いいのかこの人たち。


そしたらヘタレと呼ばれたおにっさんは苦笑した。


「ヘタレって、あなたに言われたくは……」


おにっさんの言葉に、レシュさんの「は?」という素晴らしい一言とともに放たれた眼光で、おにっさんは汗のエフェクトを飛ばすような表情で謝る。


「すみませんすみません。確かにあなたは童貞じゃないですしね。でも恋愛経験がないって……」


「非童貞なのに恋愛経験ないんですか?!」


思わず出てしまった私の言葉に、私の後ろにいたヒメルさんから制裁と言う名の手刀が繰り出された。痛い。


ふと気になってモーレのほうをみてみれば、仲間の一人のお兄さんが耳を塞いでいた。ナイスだお兄さんよ。


「悪いかよ」


レシュさんは不貞腐れてそう言う。あっこの人だいぶ傷ついてる。心なしか泣きそう。だから怖いって言われたの気にしてるのか……。


私はフッと笑ってレシュさんの肩に手を置く。


「気にしたら負けですよレシュさん。私も恋愛経験ありません。それにレシュさんイケメンだからすぐ恋人できますよ。こんなたくさんの仲間もいるんですし。あと非童貞なだけマシです」


こんなイケメンが恋愛経験なしと聞いてなぜだか凄くホッとしている自分がいる。最近自分が救いようがないほどのとんでもないブスだから彼氏が出来ないのかと思ってたから。まあ美人でもないんだけど。


「お前さあ……」というレシュさんのジト目に屈さずにいた私に、おにっさんが声をかける。


「あれ、君は? 新しいお仲間さんだね。変わった格好してるから遠方から来たのかい」


「ええ、ああ、はい。まあそんな感じです。めっちゃ遠くから来ました」


めっちゃを強調して言うと、おにっさんは「へえ、大変だったね」と言ってくれた。


何かこの人素敵だわー。近所のお兄さんに欲しい。


するとおにっさんは「あ、そうだ」とつぶやくと、レシュさんに、持っていた紙を木製のボードごと渡す。


「最近街に入るために署名が義務付けられたんですよ。本来全員に書いてもらいたいとこなんですけど、まあひとグループだしあなたが代表ってことで」


レシュさんは「ああ、構わねえよ」と言うと、付属されていたペンで名前を書いた。


魔法で視力良くしてさりげなくチラ見する。


ああ……やっぱり……。


書いてあったのは見たこともない文字。これってくさび形文字? いや、でも……象形文字にも見えなくはない。


しかし問題はそれじゃない。


私はその文字を初めて見たはず。なのにーー読めるのだ。それも、日本語の概念を通じて。


日本語の概念を通じてって表現、わかりにくい? うーん……。


例えば英文があったとする。ちょっと英語を習っていた人なら、それを目視すれば頭の中に日本語で(、、、、)訳された英文がでてくるはず。


『ディスイズアペン』を、『これはペン』ですって日本語に置き換えるように。


つまりそういうことだ。さっきの例えの英文の部分を未知の言語に差し替えてお考えください。


ふむ、これは俗に言う"異世界トリップした際に誰かがオマケにつけてくれたよくある能力"。必要最低限生活に困らないようについてくる能力。ありがとう誰か。


まあ私の魔力のおかげっていう可能性もあるからね。深読みしないでおこうっと。


ちなみにサインには達筆で『レシュ』って書いてありました。ファミリーネームは書かないのね。……ないのかな。


レシュさんとおにっさんが会話してる隙に、私はヒメルさんに耳打ちする。


「レシュさんってファミリーネームないんです?」


するとヒメルさんは気まずそうな顔をした。ああ、やってしまったかな。


「ごめんなさい、言いづらかったらいいですから」


そう言えばヒメルさんは首を横に振る。


「違うのさ。みんな、誰一人知らないんだよ。昔のレシュのこと。ここにいるやつらは大抵はしばらくすりゃ自分のこと話すんだけど、一部の変わり者とレシュだけは、だんまりなんだ。モーレとの関係もあまり言ってくれないし」


これは……何か臭うな。今後レシュさん関係のことで何かイベントが……、って不謹慎不謹慎。一人の人間が重い何かを隠して抱えて生きてるっていうのに……。


……レシュさん、可愛いな。


自分の性格は変えられないみたいですね。諦めるか。


ちょうどその時、レシュさんとおにっさんの話が終わったようで。


「おいみんな、行くぞ」


とのレシュさんのリーダーらしい声かけに、みなさん反応してぞろぞろとレシュさんの後ろについていった。


私がボーッとしてると後ろからモーレが押してくる。


「何してるの、早く行こうよ」


「あ、うん」とだけ返事して、おにっさんに軽く会釈して街へと入って行った。

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