第一章 9
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翌日の夕方。リン達は、その日の作業を早めに切り上げて、ビーチにいた。
「すご~い。きれい!」
「つめたっ!」
「気持ちいい! ヘイクもおいでよ。冷たくて気持ちいいよ~」
「……いや、俺は、いい」
それを受けて、アンリードとリンは、顔を見合わせて、
一気にヘイクワースめがけて走り出した。
「な、何をする! 離せ」
「「離さない。海で遊ぶ」んだから」
無理矢理、体の大きなヘイクワースを無理矢理海へ引っ張った。
そして、海まできて、
「「せーの」」
‘ザッッパ~ン!!’
ヘイクワースは、頭から水面に投げ込まれた。
その後、びしょびしょになったヘイクワースは、怒りの形相で、
「この~! 二人とも、もう許さない。来い!」
そんな風にして、三人が水の掛け合いをして、楽しんでいた。
当然、この周りには、ボディガードが取り囲むように配置されていた。
この時間、三人のために大学側に掛け合って、貸切りにした。
リンの要望通り、ビーチで遊べるようにした。
春先、といってもいい時期だが、ここは本州より少しだけ早く夏が来る場所。
なので、水遊びするには、まあ、……いい季節。
小一時間が経った頃、
「そろそろ、帰ります。良いですね」
あっという間に、楽しい時間が過ぎ去った。
三人は,全身ずぶ濡れ状態で、ホテルに帰って行った。
車ではなく、歩いて。
ホテル側も三人の姿を見て、驚きはしたが、よくあるので、慌てなかった。
「「楽しかった~!!」」
「…………」
「ヘイク、なんか機嫌悪いね。どうしたの?」
「よせよ。本当に怒ると手を付けられなくなる」
アンリードに促されて、リンはそれ以上ヘイクワースにからむのを止めた。
ヘイクワースが、水に入るのは大嫌いだったから。
理由までは分からない。
いや、……怖くて聞けない。