第三章 9
6
一行が建物に強引に戻り、一番近い部屋に入っていた。
以前、ビル達が乗り込んで来た時に使った部屋だ。
「私はね、ここまでするつもりは、なかったのよ。それをここまでさせて」
「なんだ。何を……」
マラホイアは、リンの言っている内容がつかめなかった。
まるで、こっちに原因があるような。
「とぼけないで、分かっているでしょう?
理不尽な要求さえしなかったら、こんなこと……しなかった」
「理不尽?
何が理不尽だ。リンは私達の言う通りにしていればいい。
拒否するだけでも十分な違反だ。
システムまでも……それを、理不尽だと!
何が理不尽だ。リンの方が……」
「違反?
何が違反よ。こっちが黙ってればなんでもすると思ってるでしょう。
内容が納得できる分には協力はする。
でも、納得できない内容にまで、協力する気はない。
拒否するわ。
それに、私がここに居るのは、自分に危険がない所だったから。
そうじゃないなら、居る理由がない。
だから、出て行くの」
手錠されたままでリンが一気に話すと、強気に睨み付けた。
「馬鹿なことを。
ここに居るのは自分の意志でいると思っているのか?
違うだろう、お前がここに居るのは……」
「そっちがどう思っていようが、私は自分の意志でいたの。
出ようと思えばいつでも出られたんだから。
でも、ここから出たら、どこかに連れて行かれる(拉致される)かも知れないでしょう?
あなた達が私を信じてないみたいに、私もあなた達を信じてない」
あえて、IIMCが、リンが釈放されるなりIIMCから出るとなったら、情報を流す。
そう決めつけた発言だ。
しかも、リンは出ようと思ったらいつでも出られた。
と、言っている。
「それなら、外に出るリスクはまだあるだろう?
なのに、今は出ようとする。なぜだ?」
マラホイアは、納得がいかないように聞いてくる。
少し興奮している。
それにも、リンは静かに話す。
「私は、自分自身を守れないと思ってる。
だから、守ってくれる場所があるなら、守ってもらおうって。
それが、ここ。
幸いここは、私がしたくないものはさせなかった。
断れば今までは許してくれたでしょう?
なんだかんだ言って、結局は、色々聞いてくれたでしょう?
なのに、システムを奪っていたのを、ほったらかしにしていたのは棚に上げて。
改めて知った今は、世界中を手中に収めるために、それを使おうとする。
勝手だと思う。
……削除出来なかった。
なんて言いながら、本当はしなかった。
正確には出来なかったんだろうけど。
……見つけたでしょう?
私を使う口実に、「見つけてない」そう言って」
マラホイアが、動揺しているのが分かる。
「だから、なんだと言うんだ?
どんな方法使おうが、こっちの勝手だ」
「勝手は……いい。システムなんて簡単に見つけられた。
その時確認したの。何かされてないか。
そうしたら、見つけたの。
解析、削除しようとした痕跡。
でも、解析しようとして出来なった。
システムさえ解析出来れば、自分達でシステムを構築するつもりだったでしょう?
それが出来なかったから、システムを構築させようとした」
「だから、それがどうした?
お前はしたくないんだろう?
だったら、お前にとっても好都合だったんじゃないか?」
マラホイアにとって、それは、突かれたくない場所らしい。
「好都合?
冗談じゃない!
私は、こんなくだらないことをさせるためにシステムを作ったんじゃない。
世界中を我が物にしようなんて。
絶対許さない!」
マラホイアは、それに対して、興奮度は増していた。
「リン、お前にそんなことが言えるのか。
世界中の核システムをジャックしておいて!」
「だから、言ってるんでしょう!
私がしたから分かるの。しちゃいけないのよ!」
「なんだと! お前に……」
「私のシステムは使わせない!」
二人のやり取りで、これ以上にない程、空気が張り詰めている。
この中で、声を出すには、それなりの覚悟が要りそうだ。




