第一章 6
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先ほど、常崎に言われて荷物を持って行った学生達は、
入った部屋の状況を、仲間達に話していた。
『おい、さっきの見たか?』
『見た。三人いたよな? あれ、すっげ~プログラマーなんだろ?』
『そうだよ、でも、俺等とあまり変わらないくらいだった。
本当にすごいのか? あれ』
『そう言ってたぞ、常崎先生。でも、言われてみれば、そうかも』
『なら、行ってみようぜ。
どうせ、管理棟は、用事があれば誰が入ってもいいし。
それに、めっちゃ興味ある。特に、あの女』
『女?』
『そう、女。一人いるんだ。
男二人に女一人。なんか怪しいけど、でも……いいよな?』
『そうそう、行こうぜ。なんか理由付けて』
『……いいの? そんなことして』
『なんだよ。百合。
いいんだよ、ちょっと見に行くだけだし。
落ち着いてからな。今、行ったって相手する暇なんてないだろうし』
そんな風に噂されている。なんて、知らない三人の行動は、本当に素早かった。
「構築するけど、存在してる分は、痕跡ぐらいにしといた方がいいね」
「そうだな。それなら、クライアントも納得するだろう?
全部書き換えるなんて、やっぱり納得できないだろうし。
それになんかあったら、文句言われる理由になる。
痕跡あれば、言い逃れが出来る」
「言い逃れって? そんな頼りない物作るの?」
「冗談だよ。本気になんてするなよ。ただ言ってみただけ」
「ふ~ん? 本当は手を抜く気だったんじゃない?」
「そんなことするもんか。それより、分担はいつも通りな?」
「アン(リード)!
いつも通り? また、簡単な部分をしようとしてるでしょ?」
「その通り、なんでわかった?」
「分かるさ。アンリードはずるいからな。リン?」
「ヘイク(ワース)の言う通り。アンはずるいのよ」
「……分かったよ。じゃあ、交代」
三人がハイタッチ。
分担も決まったし、作業は本格的になってきた。