第一章 5
三人は、管理棟に所属するシステム管理の大きなコンピューターの立ち並ぶ中にいた。
ここは、システムの中心になり、室内は環境調整がされているため、温度湿度ともに快適だった。
これから、ここで三人はこのシステムのチェック及び修正にあたる。
修正といっても、大幅な書き換えが必要になるので、
新しく構築すると言った方が適切かもしれない。
「へぇ、なかなかいいじゃないか? ここ」
「ほんと、今まで行ったどこより広い」
「それに、きれいだね」
三人が言っているのは、管理用の部屋の中。
広さは、三十畳くらいだが、管理用のコンピューターが横並びに七台。
正面には大きな真新しいモニターが五面あった。
その横に、くつろぐためか小上がりになった小部屋があり、畳が敷かれている。
それにはアンリードもヘイクワースも、大喜び。
なんと、人生で初めての畳に興奮している。
管理棟の中にある中でも、環境はいい。
防音されているので、外にあるコンピューターの起動音は聞こえない。
ただ、ここにはトイレなどの水回りはなく、管理棟本館まで行く必要がある。
それ以外は、静かで作業に集中できる。
「ここは、最近整備したばかりで、あまり使用していません。
自由に使って下さい。不自由があればすぐ改善しますので、おっしゃって下さい。
それでは何かありましたらお呼び下さい。もうすぐ担当の者が来ますので」
そう言ったかと思うと、そそくさと行ってしまい、
残されたのは三人と二人のボディガードだけとなった。
「どうしようか?」
「……始めるっていっても、」
「担当の人、待とうか?」
そう言って、その担当者の到着を待った。
ボディガードは、ドアの外にいる。
すでに、仕事中。
とりあえず、持ってきた荷物のうち仕事に使うものを準備した。
そこに担当者が入って来た。
『すみません。遅くなりました。担当の常崎と言います』
三人の手が一瞬止まった。
常崎は、日本語で話しかけた。
だから、三人が一瞬止まった。
しかし、その後ろから、ボディガードの一人が通訳として入ってきた。
『私が、通訳します』
「三人共、こっちに来て。こちらが担当の‘常崎’さん。ト・コ・サ・キさん」
『この三人、左からヘイクワース、アンリード、リンです』
順に頭を下げた。
ついでに握手も。お互いに笑顔で。
そんな中、大きな荷物を持った学生が三人入って来た。
『先生。これ、ここでいいですか?』
『いいよ、こっちに持ってきて。……ありがとう』
三人の学生は、荷物を置くと一礼して出て行った。
出て行くように促されたからだが。
この学生は、当然ここの学生なのだが、男子ばかり三人。
お年頃の、である。
そして、学生達が出て行ってから、常崎は設備について説明した。
それをボディガード兼通訳から聞いていた。
一通り説明したところで、今度はこの建物を出て説明したいとのことだったが、
それは、ボディガードだけが受けた。
それというもの、この三人一人での行動は許可がいる。
どこに行くにしても必ず届けがいるが、ほぼ全部にボディガードが同行する。
それが、派遣される条件でもあったから。
三人共それには同意している。
「リン。今の訳、合ってるか?」
「合ってるよ。間違いようないし、それより、準備しよう」
「そうだな。さっさと始めよう」
三人は、準備を整えると、作業にかかった。