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第一章  21

 暴力的な表現があります。

 

               18


「リン。せっかく移ったばかりで悪いんだが、まだ聞きたいことがあるんでね。 

 ベーシャル、こっちに連れて来い」


 リンは、今移ったばかりのベッドから無理矢理起こされ、

 今のリンには不安定な椅子に座らされた。 


 もちろん、手錠はつけられたまま。


 やっと、座っているリンにお構いなく、

 レイミアンが、リンのうつむいた顔を上に向かせた。


「リン。お前、学生に何を言った? 

 リンって呼んでくれって、そう言ったそうだな? 

 あの子は知り合いだって? 高校生の時の」


「! ……」


「そうか。確かなんだな。知り合いか。

 だったら、懐かしくて色々話しても仕方ないよな? 

 思い出話、別れてから今までの様子。何を話した? 

 確か相田香波だったかな?」


 リンは、表情がただ事ではなかった。

 体が辛いことを忘れてしまう程。


「香波は関係ない!」


「ほう? 元気あるじゃないか。

 思ったより回復したのか。そんなに時間は経ってなかったのに。

 それなら、これから色々話してもらおうか?

 彼等との関係を!」


「! ……何もないのに?」


「それならそれでいい。

 では聞こう。久しぶりに会った友達はどうだった。

 懐かしかっただろう。高校以来だったらもう何年になる? 

 そんな友達がこんな所で、しかも覚えてくれていたんだ。

 どんな気持ちになった。嬉しかっただろう。

 なんでも話したくなったんじゃないか?」


 レイミアンの最後の方は、声が大きくなり、リンにかなりの圧迫感を与えた。

 それに、リンが懐かしいと思ったのは、否定できない事実にほかならなかった。


「……だからって、何も話さない。それくらい分かってる。

 ……信じて、本当に何も話してない。……本当なの」


 必死に訴えたが、レイミアンには伝わっていない。


「信じろって。リンをか?

 それは無理だ。信じられない。

 何より、逃げようとした理由が分かった、懐かしい友達に会いたかった。

 それとも、友達に手引きしてもらったか?」


「どうしたらいいの? 

 何もしてない。って、どうしたら分かってくれるの?」


 リンは、自分が信じてもらってないことは、理解している。


 しかし、それがこんなに、もどかしいものだとは、それまであまり考えないようにしていた。

 否、受け流していた。

 こんなもんだと。


 それが今になって、信じてもらえていないという事実が、

 こんなに重たいとは、思いもよらなかった。


「リン、そんなことはどうでもいい。

 それより、彼らと会って、何したかったんだ。

 逃げ出して、その後どうするつもりだった?


 情報売ってみるか?

 お前の持つ情報は、そこら辺にいる人間にはたいしたことなくても、その筋には絶大の価値がある。

 どうだ、間違ってないだろう?」


 リンは、何も言わない。反応もしない。

 ただ、レイミアンを睨み付けたまま、それだけだった。


 それには、レイミアンも、


「本当にリンは、生き方が下手だな。

 本当のことを言えば何とかしてやれるが、このまま黙り込んだらただじゃすまない。

 それを知っていて、何も話さないつもりなら、こっちもそれに従わなければならないだろう」


「ベーシャル、リンを立たせろ」


 まだ、足元のしっかりしていないリンを立たせて、

 レイミアンは、いきなりそして何の躊躇もなく膝を蹴り上げた。


「うぅっ……」


 リンが崩れ落ちそうになると、それを掴みあげて、もう一度。

 リンは、もう自分では体を支えきれなくなると、

 ベーシャルに手伝わせ、リンはいい様に、なされるがままだった。


 レイミアンが一息つくころには、リンの息は弱っていたが、意識は保ったままだった。


「リン。何かを守ろうとしてるのか?

 だとしても、今は話すべきだと思うぞ」


 穏やかに言うレイミアン。


「…………」


「リン!」


「そこまで言うのに、……なんで聞いてくれない? レイミアン」


「聞きたいが、状況は間違っていない。

 それに、俺達はリンの力を知らない。

 もし何かあっても、今は見つけることさえできない。

 それほどお前の技術は優れてる。それに情報量も並みじゃない。

 そんなリンが、何か企んでいるとは信じたくないが、不思議でもない。

 だから、俺達の知らない何かがあるとすれば、それはそれで問題なんだよ」


「……だったら、私は裏切るようなこと……考えてない」


 床に倒れこんだリンは、レイミアンを見上げた。


「もういい。リンは本部に戻される。そういう結論だ」


「……本部? なんで、何もしてないよ。本当に何も。

 ……信じて。レイミアン」


「すまない。これ以上出来ない。誤解かどうか、それは本部で判断される」

 リンにとって、これは好ましくない。


「なんで、……」


 レイミアンは、外から呼ばれる声で部屋を出て行った。


 リンの状況は、一方的に悪い方へと傾いていく。さてこの後は、何が待っているというのか。

 更新のペースはゆっくりですが、よろしくお願いします。

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