第一章 2
「相変わらず、うるさいわね」
一人が呆れてため息交じりに呟いた。
空港を出て、車に乗ってから、窓の外を見ては、
「あの子はかわいい。あのスタイルたまんない」
などと、ず~とほざいている。
「仕方ない。解放感に浸っているんだから。そっとしとこう」
もう一人も、半ば呆れている。
「どうした? 何かあったか?」
話題の主は、「我、関せず」といった風。
「「なんでもない!」」
二人同時に返事をすると、
「そうか? 何かあったら言ってくれ」
また、窓の外に向き直った。
「「ふ~う」」
お互いため息をついて吹き出した。
「そう言えば、ここって故郷なのか? 日本だろ?」
「……そうね。でも、ここからずーと、遠い所よ」
そう言いながら、三人共窓の外へと目を向けた。
ただ、その胸中にはそれぞれ違う思いが交錯していた。
色々な思いを乗せたまま、車は市街地を抜けて、郊外にある目的地に向けて走って行った。
「おっ。なんか景色が変わったぞ。学生が増えてきた。いいねえ、この光景は」
「アンリード。当然だろ、これから学校のシステムの手伝いなんだから。
それより、鼻の下伸びてるぞ。
それに、どっちにしたって関われないんだ」
「だからだよ。こうして見て喜ぶくらい、勝手だろうが!
ヘイクワース、お前だって見てみろよ。良いぞ~、この学校。
掘り出しものありそうだなあ」
「……、好きに言ってろ」
「リン? 妙に静かだな。なんかあったか?
それとも懐かしい?」
「…………」
「リン?」
「ほっとけよ、ヘイクワース。
俺達と違って、ここ、リンの母国だ。なんか思うところでもあるんだろ」
リンは、ずっと窓の外を見たままだった。
「!!」