第一章 17
乱暴な表現があります。
リンとその他の人々との関係を、お楽しみください。
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ホテルの一室に監禁状態のリンは、ずっとうずくまったまま。
状況が良く呑み込めていないというのもあるが、
想像できない程、自分の立場が悪い方に傾いているので戸惑っていた。
「逃げるって? 情報を漏らすって? いったい、何がどうなってるの?」
そんな声ばかりが、リンの頭の中を駆け巡っている。
堂々巡りのまま、一向に先が見えなかった。
ただひとつ、体の痛みだけが現実を突きつける。
自分の立場が、とんでもない事態に陥っていると。
“ガチャッ”
ドアが開いて、レイミアンが入って来た。
ベーシャルは部屋の中にいたが、何か申し合わせてから、リンに向かって来る。
その瞬間、無意識に体が強張るのを感じた。
「リン! これから詳しく聞かせてもらおう。こっちに来い」
その声と同時に、リンは右腕を強引に引き上げられた。
「うっ。……」
「来るんだよ。」
ベーシャルは、リンの体などお構いなしに、無理矢理立たせた。
なんとか立ったが、ふらつくリンに、ベーシャルは、
「ここに座れ」
側にあった椅子を引き寄せ、リンを座らせた。
その前には、レイミアンがいて、
「手を煩わせるな。いい加減、本当のことを話せ。
逃げて何をしようとしたんだ?」
それには、リンもレイミアンを睨み付けた。
「逃げようなんてしてない。そんなことしない」
必死で訴えた。
「なら、どうして自分からいなくなった?
勝手にトイレから消えといて、それが通ると思っているのか?
明らかに逃げようとしない限り、あそこから消えるとは思わないだろう。
それとも、誰かと会う約束でもしていたのか、何かを渡すために。違うか? 」
レイミアンは、リンの首元を締め上げるように責めた。
レイミアンにとっても、意外だ。リンは、本当にちゃんとしていたから。
裏切られたように思えてならない。
悔しくて、つい、強く責めてしまう。
信じていた。
リンが更生出来たと、喜んでいた。
今回の作業が終了した時の休暇も、レイミアンが本部に掛け合って得たものだった。
なのに、そのリンがレイミアンの関わるこの時に、
逃げるような行動をとったことが、許せなかった。
可愛さ余って……。そういう感じ。
「リン! なんでこんなことをした?」
「何のこと? 私は逃げようなんてしてない。
あの時は本当に連れて行かれたの。あの子達にナイフで脅されて。それで……」
「脅された? そんな言い訳、誰が信じる?
お前がトイレの裏でウロウロしてるところを声かけられたんだろう。
何をしにそんな所に行ったんだ」
「自分でなんて行ってない。無理矢理連れて行かれたの。本当よ」
「そこで、誰に会った。何をした。何を話した。
その後、彼らに話したのはなんだ?
日本語で何を話した。リン、……お前は何をしたかったんだ?」
「なっ! 誰にも会ってない。何も話してなんてない」
「あった事実を話せ。「もうこれ以上話せない」そう言ったそうだな?
なら、それまでに何を話した。どんな情報を話したんだ?」
レイミアンのより詰め寄った言い方に、リンは殺気さえ感じてしまった。
それでも、振り絞って、
「情報なんて、そんなの言ってない。私は何も言ってない!」
「相変わらず強情だな。
……そう言えば、昔から追い込まれないと、何も話さなかったよな」
そう言ったかと思うと、リンに激痛が走った。
リンの両肩を抑えたレイミアンの膝が再び腹部に。
リンはそのまま前のめりになる所をレイミアンに支えられ、起き上がると、
「リン、そろそろ話した方がいい。こっちも手荒なことはしたくない」
それでも、リンは、呻きながら小さく
「……違う。何も……してない」
と、言うだけだった。
それを聞いて、レイミアンは再び足を挙げた。
そして、もたれ掛ってくるリンの首の後ろに、両手を組んで振り下ろす。
リンは、何も抵抗できず、そのまま床に呻き声と共に崩れ落ちた。
これから先、乱暴な表現は常にある。と、思っていただきたいです。
リンの立場とその周囲の人々との関係が、明らかになっていきます。
よろしくお願いします。




