第一章 13
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『利沙、なんだよね? 私、覚えてる?』
リンは、声がした方を向いて驚いた。
『……かなみ?』
『利沙。やっぱり利沙だったんだ。覚えてくれてたんだね。利沙』
「…………」
香波は、リンの体にしがみつくように揺さぶった。
リンはそんな香波を正面から見られず、顔を背けてしまった。
『利沙? どうしたの、久しぶりで驚いた?
この学校ITに強くて。
利沙に教えてもらったでしょ? それで、ここに入れたんだ。
……ずっと気にしてたんだけど、連絡取れないし、どこ行ったか分からなくて……。
ごめん。迷惑だったかな?
でも、利沙の顔見たら嬉しくて、みんなが協力してくれて。
本当は、ちゃんと会えるようにしたかったんだけど、全然相手にしてくれなくて。
それにいつまでいるか分からなくて、焦って。
こんな強引なことして、ごめん。でも……』
「ここにいるわけにはいかない。
どんな理由があろうと、こんなの、間違ってる。帰して」
『また、英語かよ。
日本人で、日本語話せるんなら、日本語で話せよ。何言ってるか分からないし』
孝春は、納得がいかないとでも言うように、強い口調で言い、
『こっちの言ってる内容は、伝わってるんだろ?
でも、日本語で、ね?』
聡が、状況を確かめた。
『じゃあさ、確認?
君は友延利沙さんで、間違いないんだな?』
『……、今はリンって呼ばれてる』
『じゃあ、リンって呼んだ方がいいのか?』
リンは、静かに頷いた。
『分かった。リンって呼ばせてもらう。
それでさ、香波に色々聞いたんだけど。
高校中退して、その後どうしてたの?
なんか、聞いたところによると少年院がどうとか?』
リンは、驚いた表情を見せたが、この場に香波がいるなら、納得がいく。
きっと誰かに聞いたんだろう。
過去に何があったか。
リンは、一人納得して、
『聞きたいってそれ? だったら、話す気はない』
『ちょっと待った。
じゃあ、香波に連絡しなかったっていうのは、ただの同級生だったって?
香波は、もうちょっとは、友達だと思ってたみたいだけど』
『……それにも、答える気はない。
そんな、今更どうでもいいことが聞きたいの?
もういい? 帰っても』
リンは立ち上がろうとして、今まで、話していなかった孝春が、
『どうでもいいだって!
ずっと、気にかけてくれてる人に向かって言うことか。
少なくとも、そう言っていいわけがない。
謝れ。香波に謝れ!』
リンは、それには何も言わなかった。
『何か言えよ。香波に悪いだろう? 何か言えよ』
リンは、黙って立ち上がり、
『こんなくだらないことのために時間を使われた。
不愉快よ。もうこれ以上話すことないわ。帰る』
『待てって言ってるだろう? ……』
そう言いあっているところに、突然ドアが開いた。
誰も入ってくる予定なんてないドアが。
これから動きます。どう動くか、今しばらくお待ちください。




