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第一章  11

                 9


『友延利沙さん?』


 トイレで用を済ませたリンが、個室から出てくると、そう声をかけられて、


「えっ?」


 思わず振り返ったリンの前に、面識のない学生がいて、

 もう一度、


『友延利沙さんだよね? だったら、これから、ちょっと来てほしいんだ』


 そう言って、彼女は、リンの手を引っ張った。


「何?」


 リンは、無視して出て行こうとしたが、進路をふさがれ、

「通して下さい! 急いでいるので」


 無理にでも通ろうとすると、

 彼女は、ちょうど入口とは反対側の腰高にある窓に向かって、


『ちょっと来て』

 すると、男が二人入ってきた。


 リンの二の腕を掴み、


『友延さん。来てもらいたいんだ。会わせたい奴がいる』


「イヤです。手を離して、ここから出して!」


 それも無視して、強引に出て行こうとするが、


『悪いが、英語は分からないんだ。

 日本語で言ってよ。それに大声はなし!』


『来いって。悪いようにはしないから。

 早くしないと、外にいるボディガードに気づかれる』


 それにも応じようとしないでいると、男の一人が、


『すぐすむから。ちょっと話すだけだよ』

 リンが声を上げようとすると、その口を手で塞いだ。


『とにかく、ここから出よう』


 リンを強引に窓の方へ促し、


『ここから出て。用事はすぐすむから、そうしたら戻ってくれていい』


 そう言いながら、小さなナイフを背中に押し当てた。

 

 それを見た二人の学生は、


『『なに? なんでそんなもの持ってる』の?』


『いいだろ? 早くしろ!』


 そう言って、リンと三人の学生は、窓から出て行った。


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