第11話
「お前は、いつぞやの小童」
「茨木童子!」
今、俺達の目の前にいる鬼は、11年前に猫又を襲っていた鬼の親玉だ。
「前に殺りあった時は傀儡だったが、今日は本人のお出ましか」
「傀儡の時は1/10以下の力しか出しておらんかったからやられたが、今の本気で貴様らを叩き潰せるのぅ」
「口でならいくらでも言える」
「なら、試してみるかのぅ」
場の空気が一気に剣呑な雰囲気へと変わる。
一番最初に動いたのは、???だった。
「先手必勝」
霊力を纏ったナイフをつきつける。
ガキンッ
だが、茨木童子が腰にさしていた日本刀により容易く防がれる。
驚く事に、日本刀に触れた瞬間にナイフが砕け散った。
「たかが小刀にこの名刀『童子切』が敗れる訳がなかろう」
童子切!天下五剣の一振に数えられるあの剣か、童子切の名の由来は、酒呑童子の首を切り落としたからだと言う。
「その剣は!酒呑童子の首を切り落とし、天下五剣の一振に数えられる事で有名な安綱の最高傑作の剣」
???君も知っていたようだ。
「いかにも、我が主であった酒呑童子の首を切り落とした忌々しい名刀じゃ」
茨木童子は童子切に向かって、吐き捨てるように言う。
「じゃが、酒呑童子は死んだが、我等には希望はまだ有る」
「希望?」
「その希望こそ、酒呑童子の子供じゃ」
「酒呑童子に子供!」
酒呑童子に子供がいたなんて鬼童丸の伝承ぐらいしか知らないが。
「そんな事はどうでも良い、式神召喚」
???君はズボンのポケットから、文字が書かれた紙を取り出す。
「俺達の絆は絶対!来い、相棒!鬼童丸」
手に持った紙が輝き出し、人型になる。
「呼び出しの言葉がダセェっていつも言ってんだろ、相棒」
鬼童丸と呼ばれた人型の鬼の式神は普通の式神とは違っていた。
「その式神は」
「あぁこいつは俺と魂の契約をした式神だ」
魂の契約とは、お互いの胸に血の刻印を書き術式を発動させてからお互いの血を飲み魂の契約する、魂の契約に成功すると、胸に書いた血の刻印が焼き付き一生消えなくなる。
メリットは、絶対にお互いを裏切れなくなる、契約した鬼を式神とし、契約した式神を呼び出す時は霊力を一切消費しない。
デメリットは、魂の契約をする時にお互いを完璧に信頼していないとお互いに胸に書いた 血の刻印が燃え上がりそのままお互いの心臓を焼き尽くすのだ。
つまり、お互いを完璧に信頼していないと心臓が燃やし尽くされて死ぬのだ。
「俺達はお互いを信頼し、切れない絆で繋がっているのだ」
???君は自慢気に言ってくる。
「馬鹿みてぇな事言って無いでさっさと殺るぞ、相棒」
鬼童丸は冷静に茨木童子を見る。
だが、茨木童子は鬼童丸を見て動揺の色を隠せないようだ。
「な、何故貴様がここに」
「親父が世話になったな、茨木童子」
酒呑童子の子供と伝承で伝わっていたが、まさか本当に酒呑童子の子供だったとは正直俺も動揺を隠せない。
「酒呑童子を裏切って人間の側に付くのか鬼童丸」
「裏切りぃ、馬鹿言ってんじゃねえよ」
「貴様ぁー」
茨木童子が童子切りを振り下ろす。
キンッ
それを鬼童丸が冷静に短刀で受け止める。
「な、何故そんな短刀如きでこの童子切りを受け止められる」
「ただの短刀?これは『相州正宗』と言う立派な名刀だ、そこら辺のナマクラ刀と一緒にしてもらうと困るぜ」
「こ、小癪な」
ギリリッと音が鳴るほど強く歯軋りをする茨木童子。
だが、この場に予想だにしていなかった乱入者が現れた。
「茨木ぃ~、遅いじゃね~かぁ」
突然、後ろにいた百鬼夜行の中から一人の鬼が現れた。
「わ、若、いけませんこんな所に」
急に狼狽え出す茨木童子。
「うるせぇなぁ茨木、俺は暇なんだよ」
そう言うと、若と呼ばれた鬼が名乗りをあげる。
「俺の名は夜天童子ってんだ」
夜天童子はそう言うと、まるで品定めでもするかの様に俺達を順に見て行く。
突然、夜天童子がニヤリと笑うと俺を指差して来た。
「お前だぁ、お前が一番強い。俺はこいつを殺る。茨木ぃ、お前はそこの雑魚共の相手でもしてろ」
何故か、俺が選ばれたようだ。
「し、しかし若」
「うるせぇぞ、茨木ぃ、俺に口答えすんのかぁ」
「わかりました若、儂が雑魚共をお相手いたしまする」
どうやら俺達に選択権はないようだ。
「ちっ、仕方がねぇ、行くぞ鬼童丸」
「おぅよ相棒」
???君も殺る気満々のようだ。
「そっちは任せたぞ夕凪」
「わかったわ」
「こっちは任せろ」
俺は二人に背中を任せ夜天童子に向き合う。
「月読の眼」
右眼を抑え、左眼に霊力を集める。
「人にして人にあらず、人から鬼に堕ちし鬼よ、我が月読の眼の記録から目覚めよ!こい
弥勒《みろく》」
俺の左眼が光だし、左眼から一人の鬼が飛び出てくる。
「久しいな我が主様よ」
「お前を呼び出したのは2年ぶりだな」
左眼から飛び出ててきた鬼はとても優しそうな好青年だった。
「あいつを殺るぞ、弥勒」
「御意」
俺と弥勒は夜天童子に殺気を向ける。
「こっちもいかしてもらうぜぇ」
つかの間の沈黙。
「はっ」
弥勒が手にしていた錫杖殴りかかる。
ガッン
夜天童子はその攻撃に対して錫杖を受け止める。
「なに!」
そして、錫杖を引き寄せる。
錫杖を持っていた弥勒は引き寄せられる。
「こんな棒では痛くもねえなぁ」
ドンッ
夜天童子はそう言うと弥勒を俺のいる方向に蹴り飛ばす。
俺と弥勒は二人一緒に吹き飛ばされた。
ガツン
俺の頭が祠に当たる。
「くっ」
「くらえぇぇ」
夜天童子の拳が俺達に襲いかかる。
「くそっ」
俺と弥勒は辛うじて横に転がり攻撃を避ようとする。
ガキィ ガラガラガラ
後ろにあった祠が砕け散る。
「しまった」
だが、もう遅かった。
妖姫の宝玉も砕け散る。
その瞬間、眩い光に辺りが包まれる。
「戻れ弥勒」
俺はそう言うのが精一杯だった。
弥勒が左眼に戻る。
戻した瞬間に俺達の周りに妖力が溢れでる。
「ガアァ、くそっ」
俺の中の妖力が凄い勢いで増え妖狐の姿になりそうになる。
すると、割れた妖姫の宝玉から美しい女性が現れた、そして、その女性の周りに封印式が発動される。
この封印式は、妖姫を封印した時に、17代目が妖姫の封印が解けた時に封印式が発動するように、妖姫の宝玉に封印式を練りこんでいたようだ。
だが、溢れでる妖力を止めることは出来ていないようだ。
「ま、まずい、これ以上妖力を浴び続ければ人としての理性を失い、妖弧化して本能のままに暴れ出しそうだ」
俺は持てる霊力の全てを封印式に送りこむ。
封印式が妖姫の妖力を抑えこみ、光が収束する。
「な、何とか抑えこめたか」
そこで、俺の意識は闇に沈んだ。
同時刻...
第三者、鞍馬山僧正坊(全国の一部の古参妖怪達)
「む、この妖力は」
第三者、瀧夜叉姫
「ほぅ、久しいな、この妖力」
第三者、九尾狐
「この妖力は、、、遂に封印が解かれたか」
第三者、覚
「来るぞ、混沌の時代が、全国の古参妖怪達が動きだす」
第三者、六右衛門狸
「強い妖気だな、気になるから見に行くか」
...
こうして、止まっていた歯車が少しずつ動きだした。
へい、作者だよ( ´ ▽ ` )ノ
やっと妖姫が出てきました(>_<)
妖姫「やっと妾の登場か」
作者「最後の方にちょっぴりと」
次の更新も頑張りますので、感想をドシドシください♪(´ε` )
皆さんの感想を楽しみに待ってま~す(( _ _ ))..zzzZZ