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『くびれ鬼』に憑かれたけど、思ったのと違う(コメディ版)

作者: 藤村 クビレ
掲載日:2026/08/20

「よう、どうしたんだトシオ。元気ないな」


「ワタルか。実はオレ、『くびれ鬼』に取り憑かれててさ」


「くびれ鬼? なにそれ」



 ──『くびれ鬼』とは、人に取り憑いて首を吊らせる妖怪といわれている。



「ほんとにそんなのいるのか?」


「じゃあ、家に見に来るか?」


「……え、家にいるの?」



 ──トシオの家



「おかえりー、トシオ♪」


 くびれ鬼が出迎える。


「こ、これがくびれ鬼か!?」


 ワタルは目を見張った。


 ──そこにいたのは、女の鬼だった。

 頭には角があり、虎の皮を身にまとっているので、確かに鬼のようだ。


 しかし、その虎の皮は、胸と腰の部分にしかまとっておらず、さながらビキニのようだった。


「ず、ずいぶんスタイルのいい女の鬼じゃないか、トシオ」


「だろだろ?」


 トシオは、にやにやと笑っている。


「なんとも腰が……、いいくびれ(・・・)だなあ」


「そうよ♪ だからあたしはくびれ(・・・)鬼なの」


「そのくびれ(・・・)かい!」


「でさ、ワタル。オレ、この『くびれ鬼』に取り憑かれてるんだよ~」


 トシオの表情はゆるみきっている。


「トシオ、お前、顔がにやけてるぞ! うらやまし……いや、けしからん……」


 トシオは『くびれ鬼』を飽きもせずに眺めている。


「なあ、トシオ。どうやって取り憑かれたんだよ。オレにも教えろよ」


「どうやってって言われてもなあ……たぶんだけど、『首吊り橋』ってあるじゃん? あそこを通ったときに憑かれたんじゃないかな……あっ、おい……」


 トシオの言葉が終わるか終わらぬうちに、ワタルは家を飛び出した。

 ダッシュで『首吊り橋』に向かう。



「こ、ここか……ハアハア……」


 そこは町はずれで人気ひとけがなく、小さな谷にかかる橋だった。地元では俗に『首吊り橋』と呼ばれている。


 ワタルは、何度も橋を往復した。


「……これだけ往復したら、取り憑かれたかなあ。とりあえず帰ってみよう」



 ──ワタルは帰宅すると、自分の部屋に入った。



「うまくいったかなあ。ささ、『くびれ鬼』ちゃん、いらっしゃ~い」


 ワタルは髪をかき上げた。


「あたしのこと、呼んだ~?」


 背後から声がする。


(おおおお!)


 心の中で歓喜の叫びを上げながら振り向いた。



 ──そこにいたのは、鬼だった。



 ……いわゆるイメージ通りの鬼だった。角があり、虎柄のパンツをはいた、筋肉モリモリマッチョマンの男鬼だった。


「……これとちがーーう!」


「いいえ、あ・た・し、『くびれ鬼』よ♪」


 男鬼はクネクネしている。


「いや、お前は違うだろ!」


「いやん♪ よく見てよ」


 男鬼が腰をひねると、確かに逆三角形の上半身が腰にくびれ(・・・)を形作っていた。


「な……なるほど、これも『くびれ鬼』には違ないか」


「そうよ。よ・ろ・し・く♪」


「……よろしくって、お前、もう帰っていいぞ」


「やだー♪ あ・た・しはあなたに取り憑いたんだからね。帰んないわよ」


 男鬼は両手を組んで体をくねらせる。


「そんな……た、助けて……だれか、たすけて……」



 だんだんワタルは、首を吊りたくなってきましたとさ。



 (とっぴんぱらりのぷう)

悲劇と喜劇は紙一重なのです。

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― 新着の感想 ―
そっちのくびれですかーいw ( ≧Д≦) チェンジで (`・ω・´)
楽しかったです(*^▽^*)好きなノリです〜 『うる星やつ○』のラムちゃんを思い出しました。あの姿ですと、男性方は鬼でも妖怪でも幽霊でも許せるのでしょう…… 女性にも、中世のイケメン騎士の幽霊の恋愛…
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