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私の居場所

作者: こうじ
掲載日:2026/06/01

 レオン・ガーシュレッドが辺境の小さな村にやって来て1年が過ぎようとしていた。


 住人も少なく荒れ放題で廃村状態になっていたこの村に貴重な若者がやって来たのは村人達にとって大歓迎であった。


 レオンが何者なのかは村人達は知らないし聞こうともしない。


 ただ見た目で没落した貴族であろう、と思っていた。


 レオンは真面目な青年であり力仕事を率先して手伝った。


 更に困り事があれば相談に乗っていた。


 今やレオンはこの村にとって必要な存在になっていた。


 そんなある日、王都からレオンを訪ねてきた者がいた。


 身なりの良い服を来たその男性を見たレオンは喜んで歓迎した。


「久しぶりだな、ガリオン」


「えぇ、で……、いやレオンもお変わり無いようでなによりです」


 何かを言いかけガリオンは慌てて直した。


 それを見たレオンはちょっと苦笑いをした。


 その日の夜、村人達が寝静まった頃、レオンの家は明かりが灯っていた。


「まさかここまで馴染んでいるとは思いもしませんでした」


「そうか? ここは私にとって理想郷だよ。 汗水をかきながら働く、人としての原点の姿がここにはある」


「そうですか……、殿下が満足しているのであれば私としても満足です」


「ガリオン、私はもう王族ではない、ただの平民だ」


「あ、申し訳ありません……、つい昔の癖が出てしまいました」


 かつてレオンはこの国の第一王子でガリオン・ハーバストは臣下の1人だった。


「国王様は元気にしてるか?」


「はい、ただ最近は体調が悪くなり寝込む事も……」


 レオンはその話を聞くと立ち上がり棚に置いてあった瓶を取った。


「この村で採れた薬草で作った薬草茶だ。 手土産として持って行ってくれ」


「よろしいんですか?」


「なぁに、不肖の息子のちょっとした償いだよ」


「……殿下、今なら聞けると思います。 あの時、何故あんな事をしたのですか?」


「あの時、て私が大広間で婚約破棄した時の事か」 


「そうです、私には殿下が自ら道を踏み外す様に見えました」


 1年前、レオンは貴族学園の卒業記念パーティーの場で当時の婚約者だった公爵令嬢に婚約破棄を一方的に宣言、断罪をしようとしたが逆に反論をされる、という醜態を犯した。


 この行動がきっかけでレオンは王家から勘当を言い渡され王都を永久追放処分となった。


「それに殿下を誘惑した男爵令嬢、ラーシアと言いましたか、彼女も一切姿を見せませんし……」


「そりゃそうだ、彼女とはあれっきり一切会っていない。 弟が用意したハニートラップ要員だからな」


「えっ、それではやはりあの婚約破棄は……」


「そう、弟が私を引きずり落とす為の計画、私はあえて乗ったんだよ」


「何故、乗ったんですか?」


「……私は貴族社会になれなかったんだよ」


「なれなかった?」


「物心ついた頃から違和感があった、綺羅びやかな世界、着飾った貴族、王族としての立場、全てに馴染めなかった。『何故、自分がこんな所で生きているんだろう』と常に自問自答していたよ……、そんな時に地方に視察へ行った時に畑を耕しながらも笑顔でいる民を見てハッとしたんだ。 私が求めていた物はこれだったんだ、と」


「そんな事を思っていたんですか……」


「あぁ、周囲からは理解されないのはわかっている、だがそこからは『どうやって王家から離れる事が出来るか』と言う事ばかり考えていたよ、それに婚約者は弟の方に気がある事は薄々気付いていたよ」


 現在、レオンの元婚約者は弟王子と婚約しているがレオンは既にわかっていた。


「そんな時にラーシアが近づいてきた、男爵令嬢なのに王族に近づいてくるなんておかしいと思ってね、すぐにハニートラップだとわかったよ。 裏で調べて弟が引いているのがわかった。 逆にチャンスだと思ったね。私が恋にうつつを抜かし愚かな王子になれば国王もなんらかの処分を下すだろう、と」


「それじゃあ、あの婚約破棄は殿下の計画通り、と言う事ですか……」


「そうだよ、周囲がどう思っているかはわからないが私は今の生活に満足しているよ」


 そう言ってにこやかに笑うレオンを見てガリオンは『やはりこの方は国王になるべく存在ではないか』と思った。


 実はガリオンがレオンの元を訪ねたのは父親である宰相の指示だった。


 宰相は数少ないレオン支持派であり現在もそうである。


 なのでガリオンにレオンの本音を聞き出してこい、と言った。


 王都に帰りガリオンの報告を聞いた宰相はやはり自分の目に狂いは無かった、と思った。


「ガリオン、いずれこの国は重大な転機が起こるだろう」


「重大な転機?」


「今の貴族は無能が多すぎる、王族に至ってもだ。 民からの不満も出てくるだろう、その不満が爆発する時が来る。 その時こそレオン様の様な方が必要だ、必ずその時は来る、これからもレオン様とは関係を続ける様に」


「承知しました……」


 宰相の予感は当たり、数年後クーデターが起こり王政は撤廃され民主国家となる。


 その時、レオンは国家代表となるのだが、そんな将来が待っているとはレオンは知らない。


 今は自分の居場所となったこの村で過ごすだけだ。



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