7話 休日の、ふたりだけの時間
土曜日の朝。目を開けたとき、外はまだ薄暗かった。カーテンの隙間から淡い光が差し込んで、部屋の中をそっと撫でるみたいに照らしている。
私はゆっくり体を動かして、隣を見た。白雪様が、いつものようにぎゅっと抱きついたまま眠っている。銀色の髪が私の胸元にふわりと広がって、静かな寝息が耳の近くで小さく続いていた。
土曜日だから、今日は学校がなく一日中お休みだった。
何も予定のない、ふたりだけの一日。私はそっと白雪様の髪を撫でた。指に絡む銀色がやわらかくて、触れてるだけで気持ちがほどける。
まだ寝かせておこう。そう思ったのに、白雪様はすぐ反応した。
「ん……綾……?」
寝ぼけた声が、私の首元に落ちてくる。白雪様はそのまま顔を埋めて、息をすうっと吸い込むみたいに寄ってきた。
「おはよう、白雪様」
「おはよう……まだ寝てたい……」
甘えた声でそう言って、白雪様はさらに体をくっつけてくる。腕が腰に回って、足まで絡められて、逃げ道がなくくなっちゃった。こうなったらもう動けなくなってしまう。まるで子猫みたい。私はくすくす笑って、髪をもう一度撫でた。まぁこれはこれでいいかな。
「じゃあ、もう少し寝ようか」
「うん……綾と一緒なら、ずっと寝ていたい」
白雪様は目を閉じたまま、幸せそうに口元をゆるめた。私の胸の上で、安心したみたいに小さく息をついて、そのまままた眠りに落ちていく。そのまま、ふたりでごろごろ。ベッドの中で、体を寄せ合って、動かない。時々、白雪様が私の頬に頬をすり寄せてくる。
「綾の匂い……好き」
「白雪様の匂いも好きだよ……甘い雪みたいな匂い」
自分で言っておいてなんだけど、甘い雪って何だろう?
「えへへ」
狐の耳がぴょこっと出てきて、私の髪をくすぐる。そのまま1時間くらい、ただくっついて、温もりを分け合っていた。外の鳥の声が聞こえて、部屋が少し明るくなった頃、ようやく白雪様が体を起こした。
「綾……お腹すいた」
「私も。朝ごはん作ろうか」
「うん! でも、まだベッドから出たくない……」
白雪様は私の手を引いて、ベッドに引き戻す。
「もう少しだけ……」
結局、ふたりでベッドの上でごろごろしながら、スマホで動画を見始めた。白雪様は私の胸に頭を乗せて、画面を覗き込む。
「これ、面白い! 人間って、こんなに変なことするの?」
「うん、バラエティ番組だよ」
白雪様は笑いながら、私の腕に絡みつく。
「綾と見てるから、もっと面白い!」
私は白雪様の髪を指で梳きながら、一緒に笑った。朝ごはんは結局、ベッドの上で食べることにした。キッチンからパンとヨーグルトとフルーツを持ってきて、ふたりでシーツの上に広げる。
白雪様はヨーグルトをスプーンですくってくれた。
「綾、あーんして」
「あ……ん」
私は恥ずかしくて顔を赤くしながら口を開けた。白雪様は嬉しそうに、私の口に運んでくれる。
「美味しい?」
「うん……白雪様がくれるから、もっと美味しい」
今度は私が白雪様に「あーん」した。
白雪様は目を閉じて、幸せそうに口を開ける。
「綾のあーん……最高!」
ふたりで笑い合って、朝ごはんを終える。
そのまま、またごろごろ。白雪様が私の膝枕をして、目を閉じる。
「綾の膝……柔らかくて、いい匂い」
私は白雪様の髪を撫でながら、静かに過ごす。そういえばよく妹にもしてあげてたなぁ。少しだけ思い出しながら白雪様を眺めていた。
外は晴れてきて、部屋がポカポカしている。もうこのまま時間が止まればいいのにと思った。
午前中が過ぎて、お昼近くになった頃、白雪様が体を起こした。
「綾……映画、見よう?」
「いいね。何が見たい?」
「綾のおすすめ!」
私は棚からDVDを一枚抜き取って、ラブコメの定番を選んだ。
ソファに移動して、ふたりで寄り添う。白雪様は私の肩に頭を預けて、私の腕を枕みたいに使ってくる。体温がじわっと移ってきて、それだけで落ち着く。
映画が始まると、白雪様はすぐ画面に釘付けになった。目がきらきらして、たまに口を小さく開けてるのがすごく可愛い。
「わぁ……人間の恋って、こんなにドキドキするの?」
「うん……私も、今ドキドキしてる」
そう言ったら、白雪様がくすくす笑って、私の手をぎゅっと握った。
「綾と一緒だから、私もドキドキしてる」
映画の途中、主人公たちが近づいて、キスしそうになった瞬間。
白雪様が私の頬に、そっとキスを落としてきた。
「こんな感じ?」
「……うん、こんな感じ」
熱が顔に集まって、どうしようもなくなる。私は真っ赤になりながら、白雪様の額に軽くキスを返した。
白雪様は「えへへ」って笑って、さらにくっついてくる。肩に重みが増えて、胸の奥がむずむずする。
映画が終わった頃には、ふたりともすっかり眠くなっていた。画面の余韻と、体温のぬくもりが混ざって、目を開けてるのがちょっとだけ面倒になる。
「綾……お昼寝、しよう?」
「うん……一緒に」
ベッドに戻って、ふたりで横になる。白雪様は私の胸に顔を埋めて、腕を腰に回す。
「綾の心臓の音……好き」
「白雪様の寝息も好きだよ」
そのまま、ふたりで眠りにつく。夢の中で、白雪様と手を繋いで歩いている。どこまでも続く、温かい道だった。
目が覚めたのは、夕方近く。白雪様はまだ私の胸で眠っている。私はそっと、白雪様の髪を撫でた。
この休日、何も特別なことはなかった。
でも、白雪様と過ごした時間が、何よりの宝物の時間だった。
この時間が、ずっと続けばいいと今日もとても思っちゃった。
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