13話 初めての海水浴
8月上旬、夏休みの真っ只中。
テレビで「今年は猛暑!」というニュースが連日流れ、
部屋の中でも扇風機がフル稼働している。
私はカレンダーを見ながら、白雪様に声をかけた。
「白雪様、今年の夏、海に行ってみない?」
白雪様はソファで膝を抱えて座っていたけど、
「海!?」と目を丸くした。
「海……本物の海? 波があって、塩辛くて、青くて広い海?」
「うん。ビーチで泳いだり、砂浜で遊んだり、日焼け止め塗って、アイス食べたり……」
白雪様は立ち上がって、
「行く! 絶対行く! 綾と海行きたい!」
その日から、海水浴の準備が始まった。
私はネットでビーチを探して、
三河湾の近くの比較的空いているビーチを選んだ。
「ここなら混みすぎないし、白雪様の耳や尻尾も隠しやすいかも」
準備はバッグに水着、タオル、サンダル、パラソル、レジャーシート、クーラーボックス、日傘、サングラス……と、結構な量になった。
前日の夜、白雪様は興奮して眠れなくて、私の胸に顔を埋めて抱き着いてきた。
「綾……明日、海だね……楽しみすぎて、胸がきゅんきゅんする」
「私も……白雪様と海で遊ぶの、夢みたい」
翌朝、早起きして出発。新幹線で名古屋から少し離れた駅まで行き、そこからバスでビーチへ。
バスの中はエアコンが効いていて、白雪様は私の肩に頭を預けて、
「綾……海の匂い、するかな?」
「着いたら、すぐに感じるよ」
バスが海岸沿いの道に入ると、窓から青い海がちらちら見え始めた。
白雪様は窓に張りついて、はしゃいでいた
「綾、見て! 海! 本物の海!」
「もうすぐ着くよ」
バスを降りたとたん、潮の匂いがすっと入り込んできた。
真夏の日差しが遠慮なく降ってきて、砂浜は白くきらきらしてる。
遠くで波が規則正しく鳴って、子どもたちのはしゃぎ声と海鳥の声が重なって聞こえる。
空気は少し湿っていて、肌にまとわりつくような夏の匂いを感じた。
白雪様はサンダルを脱いで、砂の上に足を踏み入れた。熱い砂が白雪様の足の裏にじんわり伝わってきて、思わず体がびくっと跳ねていた。
「ひゃっ! 熱いっ! ……でも、なんか気持ちいいかも……」
白雪様は目を細めて笑って、すぐに私の手を強く握ってきた。
銀髪が風に揺れて、太陽の光を反射してキラキラ光ってる。
「綾……海、すごいね……本当に広い……青くて、キラキラしてる……」
「そうだね……白雪様と一緒に来た海だからかな。すごくキラキラしてる感じがする」
私は白雪様の肩を抱き寄せて、砂浜をゆっくり歩きながら答えた。
ふたりでパラソルを立てられる場所を探した。少し奥まった、人気のないエリアを見つけて、レジャーシートを広げ、パラソルを立て、クーラーボックスを置いた。
「まずは水着に着替えようか」
更衣室のテントに入って、ふたりで順番に着替える。
先に私が着替えて、外で待ってる。白雪様が出てきた瞬間、私は息を飲んだ。白いワンピースタイプの水着が、
白雪様の雪のような肌にぴったりと馴染んでいた。
銀髪が風に揺れて、まるで海の精霊みたい。白雪様は少し恥ずかしそうに、
両手で胸元を隠しながら私を見上げた。
「綾……どう? 似合うかな……?」
「すごく可愛いよ……白雪様の水着姿、最高。肌が透き通ってて、きれいすぎて、目が離せない」
白雪様は頰を赤くして、目を細めてた。あまりにもかわいいので写メを取りたいけど、今手元にないので残念だけど諦めた。
「綾のピンクのビキニも……かわいい……綾の銀髪に映えて、きれいすぎるよ」
「戻って、日焼け止めを塗ろう!」
あまりにも恥ずかしくなってきたので、話題を変えてすぐに私たちのパラソルの方まで戻る。
私は日焼け止めを手に取って、白雪様の肩にそっと塗り始めた。腕や脚に塗ってあげながら、優しくマッサージするように広げた。
「白雪様の肌、白くてきれいだから、焼けないように守ってあげたいな。ここ、膝の裏も……ちゃんと塗らないと」
白雪様も私の背中にクリームを塗りながら、指を滑らせて丁寧に広げていく。
「綾の背中、すべすべだね……日焼けしないように、ちゃんと塗るよ。ここ、肩甲骨のところ……忘れちゃダメ」
塗り終わって、ふたりで顔を見合わせて笑い合った。白雪様は私の手を握って、目を輝かせた。
「綾……海に入ろう!」
波打ち際まで歩いていく。 白雪様は波が足に触れると、体をびくっとさせて笑った。
「ひゃっ! 冷たい! でも……気持ちいい!」
すぐに笑顔になって、私の腕に抱きついてきた。
私は白雪様の手を取って、一緒に波打ち際を歩く。
波が足をくすぐるたび、白雪様はキャッキャッと笑い声を上げ、私の腕にしがみついてくる。
「綾……海、すごいね……波が来るたびに、ドキドキする。綾の体温が伝わって、安心するよ」
少し深いところまで入って、ふたりで水をかけて遊び始めた。
白雪様は水を両手ですくって、目を輝かせた。
「綾、受けてみて!」
ぴしゃっと水をかけてくる。 私は笑いながら反撃して、白雪様の銀髪が濡れて、太陽の光でキラキラ光った。
「綾の攻撃、冷たい! でも楽しい!」
白雪様は笑いながら、私の首に腕を回して、一緒に波に揺られた。
海水が体に触れて、塩辛い匂いが鼻をくすぐり、夏の匂いが全身に染み込んでいく。
波に遊ばれて少し疲れて、シートに戻って休憩した。
クーラーボックスからアイスを取り出して、ふたりで半分こにする。
白雪様はアイスを舐めながら、目を細めて私を見た。
「綾、あーん」
私は口を開けて、冷たい甘さが口の中に広がった。
「ん……冷たくて甘いね」
白雪様は私の口元にアイスがついたのを、指でそっと拭って、そのまま指を舐めた。
「綾の味……甘い。綾の味、好きだよ」
ある程度こういうのを慣れてきた私でもこれはすごく恥ずかしかった。どんどん顔が真っ赤になっていくのがわかる。
「白雪様……ずるいよ」
白雪様はくすくす笑って、私の膝に頭を乗せた。
「綾……海、好きになった。綾と一緒にいると、いろいろな場所のスキが増えて行くよ」
私は白雪様の髪を撫でて、優しく答えた。
「私も……白雪様と来た海は、特別だよ。この瞬間、ずっと覚えておきたい」
砂浜で寝転んで、空を見上げる。
青い空に、白い雲がゆっくり流れていく。
白雪様は私の手を握って、目を細めた。
「綾……また来年も来ようね。再来年も、その次も」
「うん。毎年、一緒に」
夕陽が海に沈み始めて、オレンジ色の光が水面を染めた。
白雪様は私の胸に顔を寄せて、静かに囁いた。
「綾……今日、ありがとう……海で綾と遊べて、幸せすぎて、胸が痛いくらいだよ」
私は白雪様の髪を撫でて、優しく答えた。
またこの感覚、すごく不安になるけど、それを心の中で払拭して。
「私も……白雪様と過ごす夏、宝物だよ。この光景、ずっと忘れないよ」
白雪様は私の頬にそっとキスをして、目を閉じた。
「綾……大好き」
私は白雪様の唇に軽くキスを返して、耳元で囁いた。
「私も……白雪様、大好き」
夕陽が完全に沈むまで、ふたりで砂浜に座って、波の音を聞きながら、手を繋いでいた。
帰り道、バスの中で白雪様は私の肩に頭を預けて、眠そうに目を細めた。
「綾……また海に来ようね」
私は白雪様の髪を撫でて、優しく答えた。
「うん……約束」
海の塩の匂いが、ふたりの髪や肌に残っていた。
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