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美少女に首筋チュウされて喜んでたら、彼女の正体は吸血鬼で僕は食材ポジションでした。  作者: 五月雨恋


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8/22

8:ヒロインとドキドキ密着

 こうして晴れて僕たちは……え?これどういう関係になるの??

 友達以上……いや、そもそも連絡先すら知らないんだよな。

 目をトロンとさせて見つめてくる紅羽(くれは)さんにムラムラしつつ、僕は問いかける。


「えっと紅羽(くれは)さん。これで僕たちってどういう関係になるんだろう?」


「分かんない――」


 そう言った瞬間、紅羽(くれは)さんは僕をソファの背もたれに押し付けた。


「ちょ、ちょちょちょ――紅羽(くれは)さん!?」


 次の瞬間、紅羽(くれは)さんは僕の(ひざ)の上にちょこんと座り込む。

 体重は軽い――けれど、その軽さがかえって現実感を突きつけてくる。

 華奢(きゃしゃ)で小柄だと思っていたイメージが、こうして実際に太ももへ重みとして伝わり、体温となって広がっていく。

 心臓の鼓動(こどう)が耳まで響き、息が詰まる。しかも肩に手を置かれ、完全にロックオン状態。逃げ場なし。

 いやいやいやいや!! (ひざ)の上!? Hの3乗でえっち立方体完成しちゃうよ!?!?


 そして僕の視界の端に、チラリと白いフトモモが飛び込んできた。

 ……突然だが、フトモモとは尻から(ひざ)の間の脚のことを言う。大事なことなので今確認した。

 

 紅羽(くれは)さんのスカートは普段、膝上こぶし一個分くらいの丈で、割と長めの部類に入る。――なのに僕の上に跨がるように座り、上半身を背もたれ代わりにして寄りかかってきている。

 そのせいでスカートの(すそ)がお腹に押し上げられ、完全に危険域に突入。椅子に前後逆に座るとこうなるよね。……って違う!

 ちょ、ちょちょちょ――紅羽(くれは)さん!? その座り方は危ない!  (すそ)が、(すそ)が……まくれそうなんだってば!!

 ああ! その太ももの露出部位は、クラスで一番ギャルな女子の領域なんです!!  清楚代表の紅羽(くれは)さんが踏み込んでいいゾーンじゃないって!!

 しかも、その下には……いや待て、正確には太ももの上、でもスカートの下!? なんだこのややこしい位置関係は!!

 ちゃんとスパッツ的な何か履いてますか!? 毛糸のパンツとか!?

 ……って今初夏じゃん!! 履いてるわけない!! そもそも想像するんじゃない僕!!! 頭の中の自分を全力で殴り飛ばしたい!!


 そして紅羽(くれは)さんはおでこを僕のデコにコツン。――近い。近すぎる。視界いっぱいに紅羽(くれは)さんの瞳、吐息、唇。え、これ、これって……!?


 唇が触れそうな距離まで迫ってきて――僕はその目を見開いたまま、閉じることが出来ない。 来るのか!? キスか!?吸血(きゅうけつ)か!?

 最初の一文字は一緒だし!? 「うけつ」を「す」に変えたらキスだよ!!


 ――しかし次の瞬間。


 頬をかすめるように彼女の顔が横へそれて、首筋に熱い吐息がかかる。

 紅羽(くれは)さんは僕の首筋に唇を寄せ――


 チュウ……チュッチュ……。


 ――ラブコメの定番「キスシーン」みたいな空気だけど、これは食事である。

 ……あ、実際に吸われるとけっこう血の匂いするんだな。

 (てつ)っぽいというか、オシャレに言えば“鉱物(ミネラル)の香り”ってやつ?

 2回目ともなると、少し余裕が出てくるらしい。

 「ふっ、俺ももう慣れたもんだぜ」みたいな気持ちになってくる。

 ――いや待てよ。玲央(れお)のあれも含めたら3回目じゃないか。

 ぐぬぬ……この“経験値(けいけんち)”の水増し感、なんか悔しい。


 * * *

 

「――ごめん、我慢できなくなっちゃった」


 紅羽(くれは)さんは申し訳なさそうに落ち込んでいる。

 僕の(ひざ)の上で。


 ドキドキ密着タイム継続中!!!!!!


「いや、良いよ。全っ然良いから!!」


 そういうと紅羽(くれは)さんはポフっと僕の肩に顎を乗せる。


「……すっごく、美味しかった」


 これは食事の感想これは食事の感想これは食事の感想……!

 どう頑張っても「アフターラブ」的にしか聞こえない雰囲気だが、必死で「食事レビュー」方面だと言い聞かせる僕。

 ――いや、自分で言ってて意味分からないよ!!!

 あーもー手汗ヤバいんじゃ……って思って気付いた。

 

 僕の両腕、紅羽(くれは)さんの腰に回ってるゥゥゥゥ!!!!


「――ちょもんッ!?」

「ひゃッ!?」


 ビックリして腕を離した僕と、それに驚いた紅羽(くれは)さんが同時に変な声を上げる。

 見つめ合う二人。紅羽(くれは)さんはそのついでに、自分の体勢に気づいたようだった。


「ごめんなさい……」


 顔を真っ赤にして(ひざ)から降りると、隣に座り、すすす……と距離を取る。


 ドキドキ密着タイム――継続ならずッ!!


 僕は行き場を失った両腕で、自分をギュッと抱きしめた。

 紅羽(くれは)さんは下を向いたままストローを咥え、ウーロン茶を一気に飲み干している。


「……1曲、歌っても良いですかっ!」


 いたたまれなくなったのか紅羽(くれは)さんが歌いだした。

 ……やけっぱちテンションなのか、さらに音痴に磨きがかかっていた。

 僕も負けじと1曲。

 変な振り付けがある曲で二人だけの空間を盛り上げる。


 ドリンクバーで補充をして、ほっと一息。

 何気なくスマホを開いて、ふと思い出した。


「あ、そうだ紅羽(くれは)さん。連絡先教えてよ」

「えっ!?」


 紅羽(くれは)さんがどうしよう……って感じで、すっごく悩んでる。

 ――え?食料に連絡先教えるの、そんなに嫌なんですか??

 さすがにそれは堪えるぞぅ……。


「あ、嫌なら無理には――」

「そうじゃなくて!!」


 紅羽(くれは)さんは顔を真っ赤にしてうつむいた。

 ……え?こんなに赤面するタイプだったっけ??

 紅羽(くれは)さんはモジモジと言葉を続ける。


「私……パパ以外の男の人と、連絡先交換したことなくて……」


 マジですか??


「え?玲央(れお)は??」

「あ。そういえば玲央(れお)、男の子だったね。忘れてた……」


 てへへと笑う。――ああ、何その顔。可愛い。


「一瞬、玲央(れお)が女の子パターンを想像したよ」


 それなら僕と玲央(れお)の謎ラブロマンスも説明がつく。

 いや、むしろそうであってくれていい。


「ううん。玲央(れお)は男の子だよ。彼女もいっぱい居るし、おち――」


 紅羽(くれは)さんが言いかけた口を、むん!と閉じる。


「おち……?」

「お、男の子のシンボル……? もちゃんとあるし――。あ! 小さいころの話だよ! 一緒にお風呂入ったことがあって!!」


 いやいや紅羽(くれは)さん。あなた意外と……言うんですねぇ??

 普段見られない一面に、僕はニヤニヤが止まらない。


 え?玲央(れお)とお風呂? 昔のことなんて気にしたって仕方ないだろ? てかやっぱ男なのかぁ…。

 ……まぁアイツ、イケメンだから脱いでもたぶん――と想像しかけて慌ててストップ。


 ドキドキする。――いや、なんでやねんッ!!!


 僕が不覚にも玲央(れお)の裸を想像しかけて悶々としていると、紅羽(くれは)さんが言った。


「野中くんは……特別だからね?」


 おずおずと差し出されたのは、彼女のスマホ。

 僕はQRコードを読み込み、連絡先を交換する。母さんの次に増えた女性の連絡先が紅羽(くれは)さんになるとは。


「なんか初めてばかり頂いてしまって、申し訳ない」


 ――って、しまった失言か!? と思ったけど。


「本当に……野中くんと出会ってから、なんか初めてばっかりだよ……」


 彼女はちょっぴり照れて、笑っていた。

 その表情を写真に収めたら、僕ならいくらで買うだろう?

 

 ――それはたぶん、一生かけても払えない金額になると思う。


「そういえばさ。なんで男子と連絡先、交換したことなかったの?」


 僕は単純に気になって聞いてみる。


「……私、恋とか“好き”とか分からなくて。だから変なトラブルにならないように、止めておいた方がいいかなって……」

「ああ……」


 なるほど。

 紅羽(くれは)さんのこの天然(てんねん)っぷり、依存性(いぞんせい)が高すぎてジャンキーを量産しかねない。

 男子の安寧(あんねい)を守るためには、確かに賢明(けんめい)な判断だった。

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