表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女に首筋チュウされて喜んでたら、彼女の正体は吸血鬼で僕は食材ポジションでした。  作者: 五月雨恋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/22

6:ヒロインと放課後カラオケ

 1時間目終了のチャイムが鳴り響いたころ、僕はようやく現実に復帰した。

 放心していたせいで呼吸を忘れてたかもしれない。……いや、さすがに死んでたら今ここにいないか。


 校舎へ戻るドアを開けた瞬間――。


「野中……無事だったか」


 そこにいたのは友人の山田。そして、その後ろには殺気立った男子生徒たちがズラリと並んでいた。

 うおおお!?なんだこの圧!?ホラー映画のワンシーンかよ!?


「おいコラ野中ァ!! てめぇこんな所で紅羽(くれは)ちゃんと何話してたぁぁぁああ!?」


 運動部男子が山田を横スライドさせて、鬼の形相で迫ってくる。でかい、怖い、名前なんだっけ?!


紅羽(くれは)さんは、何て?」


 僕は妙に落ち着いた声で返す。

 いやいやいや、なにこれ!?心臓バクバクで今にも死にそうなのに、口だけ低音ボイスで決まってる!?奇跡か!?


「……紅羽(くれは)ちゃんは言えないって……。ただ、お前が戻ってこないから心配してて……」


 ああ、紅羽(くれは)さん……。授業サボっても探しに来ないあたり、やっぱ僕モブだなぁ。

 でも――。


紅羽(くれは)さんが何も言わないなら、僕も言うことはないかな」


 背筋を伸ばして彼らの横を通り抜ける。


「まだ話は終わってねえだろ!」


「終わっただろ?」


 ゆっくりと振り返る。

 ……あれ、俺めちゃくちゃカッコよくない!?声低めでキマってんだけど!?

 恥ずかしい、死にたい、でも言うぞ!


「君は紅羽(くれは)さんが好きなんだろ? 僕も好きだ。……だったら互いの行動を邪魔すべきじゃない。恋愛はフェアに行こう」


 ――青春ラブコメ王道の“宣戦布告”。

 言っちゃったぁぁぁぁ!!!!!


 去り際に聞こえたのは小さな呟き。

「なんであんなヤツが……」


 僕はポケットに手を突っ込みニヒルに微笑む。

 ふっ。初めて食べたカップラーメンに――お前はなれねぇよ?

 ……僕のモノローグは、どうしようもなくダサかった。



 その後はいつも通り――いや、むしろいつも以上に紅羽(くれは)さんに近づけなかった。

 男子たちがまるで要人警護のように紅羽(くれは)さんを取り囲んでいたからだ。


 僕が教室をちょっと歩いただけで、腕をガシッと掴まれ――。


「どこへ行く?」


 いやいやいや! ただトイレに行くだけだよ!?


「ちょっとお手洗いに……」

「そうか。なら窓際の道を通った後、教室の一番後ろに沿ってドア方面に歩け。それ以外のルートだと……お前の命は保証しかねる」


 いや“道”って!机と机の間だろ!? なんだこのSP感!!

 マジで怖えぇ……。


 ビビりながら紅羽(くれは)さんをチラッと見たら、目が合った。

 僕と紅羽(くれは)さんが同時に困った顔をした、その瞬間――。


 数人の男子が、泣いた。


 ……いや、なんなのこれ。


 * * *


 放課後。

 HRが終わると同時に、僕は意を決して紅羽(くれは)さんの元へと向かった。

 すぐさま立ちふさがる“警備員”を押しのけて――。


 その瞬間、紅羽(くれは)さんも鞄を持って僕の方へ。

 迅速(じんそく)に動いたSPたちも、予想外の行動に隊列を乱す。


 ……いや、どうしたんだこのクラス。っていうか男子。お前ら学生だよな!?


「今日、予定ある?」


 勇気を振り絞って聞くと――。


「……ううん。行こっか?」


 紅羽(くれは)さんはにっこり笑ってそう返した。


 その瞬間。

 男子たちが次々と膝をついた。わーい、昨日の僕と一緒だー!!

 席に座ったままの山田は、ただただ唖然としている。


 僕たちは――意気消沈したライオンの群れの中を、慎重に歩いて教室を出た。


 * * *

 

「二人きりで話せるところ――あ、カラオケ行こっか??」


 紅羽(くれは)さんの提案に、僕は即座に頷いた。

 二人、他愛(たあい)もない話をしながら街へ歩き出す。

 学校を出るまで周囲はずっとざわめいていたけど、もう耳に入らない。

 今の僕に届くのは、紅羽(くれは)さんのくすぐったいくらい甘い声だけ。

 

 ――僕はこの症状を「紅羽(くれは)難聴」と名付けた。


 

 カラオケ店の受付に着く。

 

「えっと、時間は――」


 紅羽(くれは)さんが僕の方を見て、ピッと指を三本立てる。

 やーもー!!かーわーいーいー!!!!


「三時間。一括払い(いっかつばらい)でお願いします」

「あ、お会計はお帰りの際に」

「すみません、間違えました」


 舞い上がりすぎじゃないかって?舞い上がるに決まってるだろ。

 

 そして案内された部屋に入室する。

 場所は通路のどん詰まり。前を通る人なんてまずいない。

 ――つまり完全なる密室、二人きりの楽園、それに加えて誰にも邪魔されない……!!!


 ……部屋の場所がえっちすぎる!!!


 持ってきたドリンクバーのジュースを手に入室し、互いに鞄を下ろす。

 L型のソファに座ってグラスを傾けながら、ふと視線が合った。


「じゃあ……」

 紅羽(くれは)さんが何か言いかけた、その時――。

 モニターから「PVカラオケ配信決定!」の爆音広告が流れ出した。


「……一曲だけ歌っても、いいですか?」


 どうやら好きなアーティストらしい。恥ずかしそうに小首をかしげながら言う紅羽(くれは)さん。

 僕は反射的に両手で大きな丸を作っていた。


 いーよー!!っていうかそもそも僕たち何しにカラオケ来たんだろう!?!?


 これは焦らされてるのか? それとも元々の目的なのか?

 ……いや、もういいや。嬉しそうに歌う紅羽(くれは)さんを見ているだけで、僕の脳内はお祭り騒ぎだ。


 独占ライブ!!! ひゃっほーーーーい!!!


 ……ちなみに紅羽(くれは)さんは、予想外にも音痴(おんち)だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ