表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女に首筋チュウされて喜んでたら、彼女の正体は吸血鬼で僕は食材ポジションでした。  作者: 五月雨恋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

22:僕と吸血鬼 2/2

 早めの下校に時間を持て余した僕たちは、本屋さんにいったり、服を見たり、クレープを食べたり。

 なんというか――いかにもデートみたいな事をして過ごした。


(じゅん)、このソース……血に見えない?」

「……どうせ“血をココに混ぜてみない?”って言うんでしょ」

「えっ、バレてる!?」


 ……やっぱりデートってこういうやりとりするもんなんだろうか。そんな訳ないよね?



 そして夕方の公園。


 茜色(あかねいろ)に染まるそこには何故か人影一つ無かった。

 それはまるで異世界のようで。

 僕たち二人だけの世界のようで。


 僕は繋いだままの手を離して彼女に向き直る。


 僕がずっと憧れていた人。

 僕が初めて秘密を知った人。

 僕が傷ついても離れられなかった人。

 僕が食材でも構わないと思えた人。

 僕が笑って、困って、心を揺さぶられた人。

 そして――僕がずっと愛し続けると決めた人。


 僕は大きく息を吸って覚悟を決める。男を見せろ!!野中(じゅん)!!!

 

紅羽(くれは)、好きだ。……大好きだ!!付き合ってください!!!」

「ごめんなさいっ!」


 ――早っ!


「ちょ……!もう少し溜めてくれても良くない!?」

「あ、ごめん……。あーでもでも!ごめんなさいはやっぱ無し!!」

「え?じゃあOK??」

「OKでもない!!」


 じゃあどっちなのよ。

 紅羽(くれは)さんは腕を横一文字に広げる。

 

「それ何のポーズ? セーフ??」

「えっとこれはその……キープですっ!!」


 ビシィ!と決まる謎ポーズ、キープ。


「……解説をお願いします」


 よく分からないので僕は素直に求める。


「あ、はい。えっとですね、私としましても日々の暮らしを通して慎重に慎重に検討させていただいていたんです」


 紅羽(くれは)さんが言われたとおり、解説風に語り始める。


「私が以前宣言いたしました「友達以上、恋人未満」。これはまさに今の私の状況をそのまま表しています」

「ほうほう。僕としては、友達という立場が、食材と恋人の間、どのあたりに入るのかが気になっているのですが……」

「食材と恋人の……(あいだ)?」


「えーとつまり、紅羽(くれは)さんから見て、食材を10点、恋人を100点だとしたら、友達は何点くらい??」

「何言ってるの(じゅん)!?食材は友達より上だよ!?」

「――ん?つまり食材=友達以上恋人未満??」

「うん」


 紅羽(くれは)さんは自信ありげに頷く。


「いや、それもう脈ないじゃん!!」

「えええ?? 何言ってるの?? 一番恋人に近いじゃん!!」

「どういう事?? 位置関係がつかめない!!」


 僕の質問に紅羽(くれは)さんは鞄を抱きしめながらモジモジとする。

 

「ええっと……」

「友達10点、恋人100点としたら……食材は80点……」


 照れてはいるが、まぁまぁの畜生発言である。いやしかし食材の点数高いな??


「これってさ、告白に近く――ない?」

 紅羽(くれは)さんは上目遣いで聞いてくる。

 

「全然近くない」


 繰り返すが畜生発言である。

 紅羽(くれは)さんはモジモジしたまま、話を続ける。


「で……その。(じゅん)と一緒に過ごすうちに、その点数ってどんどん上がっていってるの」

「食材ポジションだから80点はあるわけか……。今何点なの??」

「えっと……」


 紅羽(くれは)さんは一呼吸置く。いや告白された時に置いてよ。


「――89点まで来ちゃいました」

「……ちなみにそれが100点になったら??」


 紅羽(くれは)さんの顔は夕焼けに染まっているから分かりにくいが……たぶん真っ赤なんだろう。

 

「……お付き合い、して欲しい……です」


 鞄で口元を隠しながら紅羽(くれは)さんはそんな言葉をひねり出した。


 んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!

 ――――可愛いィ!! もう許すッ!!!


 僕たちの関係は今日変わらなかった。

 でも今89点。100点目指して頑張ればいいだけの話なのだ!!

 だから僕はこの先100点を目指して……いや、何だこれ? なんかのゲーム?

 ――考えても良く分からない。まあいいや。


 僕は紅羽(くれは)さんを抱えた鞄ごと、そっと抱きしめる。


「――(じゅん)?どうしたの??」

「いや……抱きしめたら90点にならないかなって」

「なるわけないじゃん……バカ。吸血の方がポイント高いし」

「え、そうなの!?」


 僕はすぐさま腕を解いた。

 

 「それでさ……」


 今度は紅羽(くれは)さんがカバンを地面に置いて、僕をギュッと抱きしめる。


「明日から……夏休みでしょ?(じゅん)の家に遊びに行っていい?」

「……付き合ってないんだから、ダメでしょ。大体何するの?」

「勉強してー、一緒にお菓子食べたり、映画見たりしてー」


 いや、こんな美少女が僕の部屋にいるとか、僕の理性どう考えても崩壊する。


「あとは二人でベッドにゴロゴロしてね? 吸いたくなったら吸血するの!」

「アウトに決まってんだろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」


 一瞬想像しただけで理性が吹っ飛んだ。僕はもう、公園の出口めがけて逃げ出すしかない!!


「待ってよ(じゅん)ー!!!」


 紅羽(くれは)さんは足が遅い。だから余裕で逃げ切れるはず――と思ったら。


「お前ッ!?どこから来た!?」

 

 ベンチの陰から飛び出した玲央(れお)が追いかけてくる。

 

「さっきから見てたんだよ! お前フラれたよな!? だからまだフリーだよな!?」

「本気で言ってんのか!?」

「最初から本気だって言ってんだろ!!」

「聞いてねぇ!」


 本気なのはお前の態度だけだ!……いや違う!知らん!!

 僕はさらに走る速度を上げて、玲央(れお)からも逃げ出した。


 公園の出口には黒塗りの高級車が待ち構えていて――。


「乗っていくかね?」


 後部座席(こうぶざせき)のドアが静かに開き、紅羽(くれは)さんの父・美園アレッサンドロが優雅(ゆうが)に手招きしていた。


「乗りません!!」


 即答して鋭角(えいかく)に曲がると、僕は夜へと沈みゆく住宅街をどこまでも走った。

 息は切れ、頭は混乱し、心臓は爆発寸前。

 それでも叫ばずにはいられない。


 「――僕の青春、ラブコメの皮を被った吸血鬼パニックじゃないかこれ!?!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ