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【完結】月華の螺旋 ~月に咲くは、禁断の恋~  作者: ましろゆきな
第四章:均衡の選択と歩む道

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第十二話:月閃と月華

 戦場の一時的な静寂の中、月守沙樹は、倒れ伏した鳴神千尋の元へと駆け寄った。


 千尋は血を流し、苦しそうに息をしていた。

 彼の瞳は沙樹を捉え、その中には、心配と、そして沙樹が放った光への驚きが混じっていた。


「千尋兄さん! 大丈夫!?」


 沙樹の問いに、千尋は力なく首を振った。


「……沙樹……お前は……」


 彼の言葉は途切れ途切れだったが、その手は沙樹の手を強く握った。

 月華の光が、千尋の傷を微かに癒していくのが感じられた。


「俺には……お前の光が、眩しすぎて……理解できない……」


 千尋の顔には、苦悩の色が深く刻まれていた。

 彼は、これまで信じてきた「正義」と、沙樹が示した「真実」の間で激しく揺れ動いているようだった。

 一族の長男として、月閃として、常に完璧であろうとしてきた彼の心が、今、大きく崩れようとしていた。


 その時、鳴神璋が沙樹の隣に立った。

 彼の表情は、普段の気だるげなものとは異なり、真剣な眼差しで千尋と沙樹を見つめていた。


「兄貴、今は休んでろ。あとは、俺と沙樹がやる」


 璋の言葉に、千尋は目を見開いた。


「璋……? お前……」


「俺は、俺なりに真実を探してた。まさか、沙樹がそれを知ってたとはな」


 璋は、そう言って沙樹の方を見た。

 その瞳には、沙樹への信頼と、そして彼が追い求めてきた答えを見つけたことへの、確かな輝きがあった。


「沙樹、この状況を終わらせるには、朔夜の言う『永遠の闇』と、兄貴が信じる『光の世界』、その両方を納得させるしかない」


 璋は冷静に状況を分析した。


「そのためには、お前の『始まりの月華』の力が、この場で証明されなきゃならねぇ」


 沙樹は頷いた。璋の言葉は、沙樹が朔夜から聞いたこと、そして自分が感じていた「月華」の真の力を、明確に代弁していた。


 千尋は、苦しげに体を起こそうとした。


「待て……! 璋、沙樹……何を考えている! 鬼と手を組むなど、ありえない!」


 千尋はまだ、鬼への憎しみを捨てきれていなかった。

 長年刷り込まれてきた一族の教えは、彼の心に深く根付いていたのだ。


「兄貴、あんたは休みが必要だ」


 璋は、そう言うと、沙樹に目配せをした。

 沙樹は千尋の手をそっと離し、彼が安心して休めるように、月の光で彼の周りに柔らかな結界を張った。千尋は、その結界の温かさに包まれ、徐々に意識を失っていった。


「よし、行くぞ、沙樹」


 璋はそう言い、沙樹の隣に立った。

 彼の表情には、迷いがなく、一族に反発してきた彼の真の覚悟が宿っていた。

 沙樹と璋、二人の「月華」と「月閃」は、千尋が倒れた今、共闘してこの戦いを終わらせることを決意した。

 それは、これまでのような「守られる者」と「守る者」の関係ではなく、互いを信頼し、支え合う、対等な戦友としての共闘だった。

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