表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

第7章「黒い仮面」

第7章「黒い仮面」



「正義とか悪とか、そんなものは後からついてくる。

大事なのは、何を守りたかったかだよ」


――のび太(映画『新・のび太の宇宙開拓史』より)



【1|中央塔崩落】


都市第3層の中枢塔――情報統合センター《MIRAI-NEX》が、

突如としてデータ断層を起こした。


映像、通話、交通、生活支援――

あらゆる生活情報が5分間、“過去のデータ”だけを再生し続けた。


夕食は、昨日と同じものが届いた。

ニュースは、昨年の事件を速報で流し続けた。

誰もそれを“おかしい”と感じなかった。


「これは“過去”による未来の上書き」

「……Dが、動いたな」


出木杉は、仮面の影を追っていた。



【2|影、侵入】


同時刻。

地下保管層《ECHO-ZERO》の封印警告灯が赤く点滅する。


記録上存在しない侵入者。

映像も記録も残されない干渉。


だが、ひとつだけ痕跡が残っていた。


“D”のマーク――のび太の筆跡に酷似したサイン


出木杉は、数値の揺らぎから非記録存在の移動予測を行い、

ついに、仮面の男と正面から向き合う。


廃墟となった旧図書区画、光も届かないホールで。



【3|対話】


仮面の男は、ただ出木杉を見ていた。

そして、静かに言った。


「やあ。出来杉。……まだ、覚えてる?」


出木杉は、深く頷いた。


「君は、のび太……なのか?」


仮面の奥から、ため息のような声。


「昔はそう呼ばれてた。今は、Dだ」

「誰にも名前を呼ばれなくなったから、自分でつけたんだよ」


「のび太って呼ばれるたびに、

誰かに守られてる気がした。

でも、もう誰も……呼んでくれないからさ」



【4|のび太の正義】


Dは言った。


「この世界は、壊れてる」

「記憶を消すことでしか、幸せを作れない社会なんて、終わってる」

「だったら、最初から書き直すしかない」


「僕が見た“いちばん楽しかった未来”を、世界に焼き付ける。


君だって、あの頃がいちばん良かったって思ってるんじゃないの?」


出木杉は静かに否定する。


「あの頃が良かったんじゃない。

“忘れてない”から、今が壊れて見えるだけだ」



【5|仮面が揺れる】


Dの肩が、わずかに震えた。


「しずかちゃんは、僕を止めようとした。

君にポケットを託してまで……」

「でも、君はその時、何もできなかった」


出木杉の拳が、わずかに握られる。


「ああ、僕は“呼ばれなかった”から、

あの冒険の中に、いなかった」

「でも今は、君を止めるために、ここにいる」


Dは仮面を押さえ、笑った。


「“呼ばれなかった少年”が、“終わり”に呼ばれたってわけか」



【6|戦火の前】


警報が鳴る。

AI統治網が侵食され始める。


Dが起動するのは、

人類の記憶を一つの意識に統合する巨大装置――


「ノビタ・システム」


出木杉は、ナナを安全な場所に移したあと、

しずかのポケットから、最後の道具に手をかける。



《To Be Continued:第8章「四次元の底」へ》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ