表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

第2章「呼ばれなかった少年」

第2章「呼ばれなかった少年」



「のび太さん、あなたって……どうしてそんなにドジなの?」


――しずか(原作コミックス第4巻)



【1|記憶の隙間】


出木杉は、再構成デバイスから出力されたログを確認していた。


ナナという名の少女。

再投影中、彼女が発したすべての音声は保存された。

しかし、統治AIのフィルターはそれを「非存在反応」と分類した。


「音も、姿も、動きも。

そこに確かに“いた”のに、AIは“いない”と判定する。

ならば、この世界の基準が誤っている」


部屋の隅にある古い机には、ひとつのノートが置かれていた。

出木杉自身の手によって綴られた、“記録にならなかった人々”の名簿。


ページの片隅に、こう書かれている。


「すべては、呼ばれなかった少年の記録から始まった」



【2|学級という監獄】


時をさかのぼる。

21世紀初頭、AIがまだ都市全体を支配していなかった時代。

出木杉は小学生だった。


常に成績はトップ。

担任の先生に褒められ、誰よりも模範的な存在だった。


だが、それでも、彼は一度も“呼ばれなかった”。


・謎の病欠の多いのび太。

・突如数日消えるクラスメイトたち。

・帰ってきた彼らが共有する“知らない冒険”の記憶。


出木杉はいつも、教室にいた。

正解を答え、問題を解き、静かにノートを取っていた。


「どうして僕だけ、呼ばれなかったんだろう」



【3|のび太という異物】


都市記録に残された“のび太”という少年の履歴は、途中で途絶えていた。

13歳を境に、彼の存在は“転居”として処理され、記録が断絶している。


だが出木杉は、彼の姿を覚えていた。


鈍くさくて、よく泣いて、遅刻魔で、テストはいつも最下位。

だけど、なぜか周りに人がいた。


「しずかちゃんも、ジャイアンも、スネ夫も。

みんな、のび太を真ん中にして回っていた」


出木杉はその構造を、長年理解できなかった。

彼には“必要とされる弱さ”がなかったからだ。



【4|ドアが閉じた日】


ある日、放課後。


出木杉は偶然、のび太たちが秘密の空き地で集合しているのを見た。

彼らは、何か大きな青いロボットと話していた。


すぐに、青い光が溢れ、彼らの姿はかき消えた。

数日後、彼らは“何事もなかった顔”で学校に戻ってきた。


「異常事象と認識すべきだった」

「だが、あの頃の僕には、それが“選ばれた人間の世界”に見えた」


出木杉は、その日からずっと自分だけが“選ばれなかった”という思いを引きずって生きてきた。



【5|戻ってこなかった冒険】


しずかが亡くなった時、

彼女は唯一、出木杉に“ポケット”を託した。


「出来杉さん。あなたなら……きっと、彼を止められるから」


その“彼”の名は言われなかった。

だが、出木杉はわかっていた。


――のび太。

選ばれ、失い、そして壊れた少年。


出木杉の胸の奥に、痛みとともに灯った一つの疑念。


「……なぜ僕は、あの冒険に呼ばれなかったのか」


答えは、まだ遠くにあった。



《To Be Continued:第3章「ポケットの封印」へ》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ