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1話 可愛い子じゃないけど旅に出ました!



―――――


 あれから三年の月日が経った。


 あの後俺は早急に準備をし家を出た。

 まぁ、俺ぐらい居なくても、兄ちゃんや弟たちも優秀な奴ばかりだし大丈夫なのであろう!

 

 という訳で俺は放浪の旅に出た。

 特に目的はないが、ユビヤを出た事がないし、折角なら各国を練り歩いて行きたいのだ。


 持ち金もあまり持ってきてないから、とりあえず行く先々で困り事を解決して金を稼いでいた。



「よっしゃ、これで最後だなっと」


 今まさにそれを行っている最中で害獣を狩っているのだ。


『流石は噂のクロさんだ! 仕事が早いなぁ』


 この人はこの村の村長さん。

 ここは《エイ村》という村で結構な田舎だ。


 たまたま寄った村だが、害獣ストロングベアーが大量発生していてお困りだったみたいなので報酬金を提示して駆除してやったのだ。


 因みに身元がバレると追手が来るので今はクロクじゃなくてクロと名乗っている。

 一文字変えただけで意外とバレないんだな。


「こんなの大した事ないっすよ。準備運動にもならないや」


いいねいいね、クロク(クロ)の旅立ち編、めっちゃワクワクする!

この流れに合わせて、自然に村でのエピソードを膨らませながら、約2000字くらいの続き、しっかり書くね!


ちょっと長くなるけど、一気に行くよ!



「こんなの大したことないっすよ。準備運動にもならないや」


「ははっ、頼もしいなぁクロさんは!」


 村長さんはしわくちゃな顔をますますくしゃくしゃにして笑った。

 このエイ村、人口百人にも満たない小さな集落だが、村人たちは素朴でいい人ばかりだ。


 害獣ストロングベアーのせいで家畜が減ったり、畑が荒らされたりと散々な目に遭っていたらしい。

 俺が通りがかったのも何かの縁だろう。


(まあ、これでしばらくは飯にも困らないな……)


 今日中にはすべて片付ける予定だったけど、少し予定を変更することにした。

 せっかくなので、しばらく滞在して働きながら資金を稼ぐのも悪くない。


 そこへ、駆け足で村の若者がやってきた。


「村長さん! クロさん! 大変だ!」


「どうしたんだ、そんなに慌てて」


「西の森のほうに、まだストロングベアーが数匹いるみたいです! しかも親熊級のが!」


「ほう、親熊か……」


 俺は軽く首を鳴らした。

 普通のストロングベアーでもそこそこ厄介だったが、親熊ともなればさらに大きく、暴れれば村一つ吹き飛ばしかねない。


「……クロさん、行ってくれませんか?」


 村長さんが、申し訳なさそうに頭を下げる。


 俺は少し考えた。


(まぁ、いいか。準備運動にもならないって言ったばかりだしな)


「仕方ないっすねぇ。追加報酬、期待してますよ?」


「もちろんだとも!」


 にっこり笑う村長さんを見て、俺は肩をすくめた。


「よし、それじゃ行きますか!」


 剣を背負い直し、俺は西の森へ向かった。




―――――




 西の森に入ると、すぐに獣臭い空気が漂ってきた。

 踏み固められた獣道には、巨大な足跡がいくつも残っている。


(間違いないな……親熊級だ)


 音を立てず、慎重に進む。


 やがて、木々の向こうに大きな影が見えた。

 草むらに隠れながら様子を伺うと、そこには体長四メートル近い《ストロングベアー》がうろついていた。


(でっかいなぁ……。でもまぁ、なんとかなるか)


 俺はそっと懐から小石を取り出し、べつの方向へ放った。


 カツン、と小石が岩に当たる。


 熊はその音に気を取られて一瞬こちらから目を逸らした。


(今だ)


 一気に距離を詰め、背後から跳びかかる!


「うおおおっ!!」


 熊が気付くより早く、俺は剣を振り下ろした。

 狙いは後ろ脚の腱。

 熊の脚力を奪えば、こっちのものだ。


 ズバァン、と乾いた音がして、熊が悲鳴を上げた。


 暴れながら俺に向かって振り向いてくるが、すでに遅い。

 俺は間合いを取りつつ、何度も脚や腹を斬りつけた。


「悪いな。恨むなら、俺にケンカ売った運命を恨んでくれ!」


 最後に熊の首筋を一閃――巨体がドサリと地面に沈み込む。


「ふぅ……」


 汗を拭いながら、俺は熊の亡骸を見下ろした。

 このまま放っておくわけにもいかないので、証拠として首輪の皮だけ切り取る。


(これで証拠は十分だな)


 帰り道、ふと空を見上げた。

 夕陽が森の向こうに沈みかけている。


 ……静かだ。


 こんな風に、誰にも騒がれず、ひっそり生きていけたらいいのにな。




―――――




『クロさんが親熊倒したって!?』

『やっぱりすげえなぁクロさん!』

『もしかして、本当にどこかの騎士団出身とか!?』

『いや、王族の隠し子だって噂も……!』


 村に戻ると、大騒ぎになっていた。


 囲まれる、囲まれる、囲まれる!


「いやいやいや、ちょっと待て、俺そんな大層なもんじゃないから!」


 必死に否定するが、村人たちは耳を貸さない。


 飯を奢られ、酒を注がれ、どこへ行っても称賛の嵐。


(……これ、前にも見たな)


 三年前、戦場で起きたあの悪夢の再来を、俺は確かに感じ取った。


『クロさん、もっと村にいてくれよ!』

『うちの娘、紹介するからさ!』


 いらんわ!!


(……これ以上、ここにいたらまた変なことになる)


 俺は夜中にこっそり荷物をまとめた。


 静かに、目立たず、気楽に生きたいだけなのに、なぜこうなってしまうのか。


 荷物を背負い、村を出る。

 人気のない夜道を歩きながら、俺はぼそっと呟いた。


「よし、次の場所に行こう……」


 




 

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