サイコパスは唐突に
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魔術師、もとい、村人たちの話をまとめるとこうだ。
ここはパナヤ村、小さな人口50人弱の村だ。
そして魔術師は魔術は使えずただの老人だった。
この村で行っていた村議の最中に俺がど真ん中に出現した。そしてミルアはその1分前にこの村に同様に出現した。
ちなみに世界に魔王という存在はいなかった。
魔物はいるらしいがゴールデンワームなるものはいなかった。全ての生物の頂点に神門と呼ばれる存在が数人いて、完全なる恐怖政治をしいている、、とのこと。
その一つに農作物育成の禁止という頭の可笑しい規則が謳われているが当然この村のような食事を農作物に頼らざるを得ない村は農作物を育てるか滅びるかの2択。どちらにせよ死ぬのであればと隠れて農作物を育てていたが、それが発覚した。罪として見せしめの処刑が1週間後に迫っている状況だということ。
思わぬシビアな状況だな。
『見せしめに処刑される人員も村人に決めさせる、、か、、エグいが効果的なやり口か、、』
どこぞで聞いた国家のようなやり方、実に胸糞悪いが、故に効果は絶大なのだろう。選んだ方も選ばれた方も地獄。
とにかく、その人員を選んでる最中にいきなり2人も人間が転生してくるものだから村人たちも困惑した訳だ。
ぶっちゃけこの村のシビアな状況は正直俺にはあまり関係はない、興味がないというかやはり実感として湧かない、というか俺がそれどころではない状況だ。
他者の不遇を憂う余裕がないのが現実だ。
とりあえず、、やはりおかしい。
『では、あの娘、ミルアの話はどうなんですか??
嘘をはいているようには思えないし、仮に俺の1分前に現れたとしたらそれこそあのような話を1分後に思いつけるとは思えません。』
『だ、だから、わ、わしらも困惑しとるんじゃて、、、あいつなんなんじゃて、、、、こわいて、、』
村長の表情もとても嘘をついているようには見えない。
うーん、、なんなんだ本当に。
状況が本当に煩雑だ。撃たれて死んだ、終わり、の方が遥かにわかりやすい、、くそ、死に損ねた、、。
『わかりました、とりあえず今の俺にはどちらを信じることも信じないこともできません、とりあえず夜も遅いんで、、あとは、少し一人で考えたいので、大変失礼なのですが廊下とかでも良いので寝る場所をお貸ししてもらえませんでしょうか、、』
『もちろんじゃ、、、じゃが、、そのぅ、、ちなみにミルアちゃんはどこで寝とるんじゃ、、、』
何故俺に聞く?
だがたしかに、、村人の話が本当であればミルアに寝床はない、、というのにミルアは自信満々に2階に上がって、寝ると言ってきた。
『ちょっと俺、、みてきていいですか??』
仕方ないし、気になるので見に行くことにする。
『わしもいくよ、、』
俺は既に薄々感じ取っていた。
どちらがおかしいのか、を。
階段を登りながら、論理的に考える。
数学的帰納法。
仮にミルアが正しいとする、、
ミルアが正しいので、世界に魔王がいる。
村の聖剣をおれが抜き、魔王を倒す事が真実だ。そして村人はそれを嘘にしようとしていることになる。
普通に考えて、村の聖剣を抜き、魔王を倒すことは村にとっては利益しかないだろう。それは定義。すなわちここで定義と矛盾する。よってミルアは正しくないことになる。
だがここで一つ疑問ではある。
何故ミルアは俺を騙す?名前すら知らない初対面だぞ?自分も異世界から来たばかりの混乱する状況なはず、それこそ俺を騙すことになんの利益もないのではないか、、?
駄目だ論理的に考える為にも材料が乏しすぎる、今は一つ一つの事象を情報として集めよう、、
村長と一緒に2階にあがると、、、
『それ、、わし、、わしのベッド、、、』
ミルアは村長のベッドに大の字で寝ていた。
謎は深まるばかりだが
とりあえず俺は村長と二人で廊下でねた。
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翌朝
目を開けると世界はそのままだった。
『夢なはずない、、よな、リアルすぎる。』
最後の望みがなくなったことを声にだし、体を起こす。
結局はなにをしていいのか全くわからないがとりあえずミルアと話そう。
他にすることも思いつかないし、とりあえずもっと話せば何かわかるかもしれない、、と思っていたところに当人が突撃してきた。物凄い勢いで。
『おぃいい!!!ゆぅ!!!! 大変だ!!!!!!!!!!!』
ミルアは物凄く興奮していた。
『おはようございます、えと、、どうしました??
』
ついに魔物、、がでたか??ミルアが興奮する理由を考えるが思いつかない。
『抜けたんだよ!!聖剣!!!私に!!!
ごめん!!!!!勇者はお前なのに!!』
『はぃ、、??』
聖剣、、、あったのか??
本当に??じゃあなんだ、、村人が嘘つき確定か?
自分の想像した答えとは逆の真実に驚きを隠せないまま、ミルアの手に強く握りしめられた聖剣を見る。
『まさかだよ!抜けるわけないって思って少し試しに力を込めただけなんだ、、悪気はない!許せ!しかも3本も!!まじごめん!!!』
何故か盛大に謝られた。
やはりいい子だ。だが、、
『あぁ、、、』
答え合わせが終わった。
1番そうであって欲しくない答えだった。
『お前の分も残してやれば良かった、、嬉しくてつい、、』
彼女の手には村長が大切に育てたであろう白い立派な大根が3本握られていた。
彼女はサイコパスだった、、
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のんびり書いていきます!