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人生は唐突に。

面白い小説を読むと心が温かくなります。

小説書いてみたくなりました。


----

出生ガチャという言葉が存在するのであれば

俺は決して当たりの方ではなかったのだろう

まぁ、紛争地域に産まれるようなワイルドな人生よりはあたりなのだろうが。



高校3年の夏、家に帰ると親がいなくなっていた

驚きは少々、ただ予兆はあった。



小学生の頃に他界した父親

女手一つの母が選んだ夜職の厳しさ

ここ1年我が家に現れるようになった母と同世代の会話もしたことのない男

その男が現れてから露骨にかわった母の服装、俺に対する態度


ありふれた、どこにでもある、、故に残酷な話。


そして母はいなくなった。


クソが、、、、という気持ちと、まぁ、、、、


女手一つでここまでキツかったろうな、、という2つの感情が混ざり合い、文字通り言葉にならなかった。



机の上には1000円と、ごめんね、とだけ書かれた短い置き書きと、、

最後に食べたのがいつか思い出せない母のおにぎり。


サランラップに包まれた具のないおにぎり

無駄にでかい。


味はないおにぎりだが思い出は詰まっていた。


俺にも確かにあった幸せを感じていた子供の頃

運動会でかけっこで一等を取っただけで泣くほど喜んだ俺の両親、あの時もおにぎりだった。


経済的に崩壊しかけていた我が家では、俺にとってそのおにぎりはどこの高級レストランで味わう料理よりも心を満たしてくれる贅沢なディナー。


最後にそれを残してくれた事が救いであり、

『お母さん、、ありがとう。』


そうして俺は一人になった。






----------


翌朝

『とりあえず学校いくか、、』

今更学校行ってる場合なのかはわからないが

とりあえずどう生きていいのかがわからない


いつもの日常をなぞる、というかそれしかない。

唯一の救いは工事現場のバイトをやっていたこと。

それがうちの家計の半分くらい支えていた。



ここ最近の母の散財が非常に増えてたことを考えると一人になって急に困窮して野垂れ死ぬことはないだろう。なんなら少し生活には余裕が出るかもしれない。




教室に到着するなり、いつもの席につく。

日々の生活でいっぱいいっぱいであったこともあり、友と呼べる者はいなかった。

放課後の部活、知人との交友、興味は年相応にあったが、他者と交流するためのお金がなかった。



身長も175cmだし、顔も母似で悪くないはず、だからきっと金さえあれば女の子の友達とキャッキャッできてたに違いない、よし、どんまい俺。


部費があるなら生活費にあてる。

遊ぶ金があるならそれは来月の水道代だ。


それでも高校という場所にしがみついていたのは教育こそが唯一将来自分の環境を激変させる可能性があるのではないかと願う気持ちと、一応学力だけは奨学金をもらえる程度にはあったからだ。


いまやその奨学金も将来返済することを考えると十字架のように重くのしかかってくるのだが、それはまた別のお話。(笑)


とにかく、日々を生きることに一杯一杯で

必然的に付き合いが悪くなり知人はいなかった。


よくアニメや漫画ででてくる、人見知り、そうはいってもなんだかんだ話しかけてくる知人や、学園のアイドルや、女友達も、、期待に沿えなくて大変申し訳ないが本当に存在しなかった。

この学園にもアイドルと称される者は存在するのだろうが俺との接点は当然0、誰かとラブコメを繰り広げてるのだろうがそれを目撃することもないだろう。

勿論寂しいかと言われるとそれが正しくあるべき感情なのだろうが、それを感じる余裕は俺には無かった。



数人と挨拶程度の会話をした後、授業を真面目に聞く。流石に授業中は今後の生活の方向性について漠然と考えていた。そして、放課後を迎える。



当面は現在の状況把握が最優先だろう



『銀行まだやってるよな、、』

1番気になるのは口座、生活資金だ。

母が消失したというこの状況では銀行に入れているわずかだがある貯金は母が持っていっている可能性がある。まぁ、だとしても恨みはしないがとりあえずは把握だ。


把握した後には、口座の名義変更やら権限等諸々やる必要があるだろう。



『まだやってんな、、助かる』



駅から2-3分歩いたとこにある地方銀行にはいり、ATMに並ぶ。

とりあえず1週間は3千円で凌がないとな、、


ボロ家とはいえ家賃は継続的な出費だ。

必要最低限の電気水道ガス、生きると言うことはそれだけで、金銭を要求され続ける。まぁまぁお先真っ暗なのだが、なんとか前を向いて生きていかないと本当の人生終了だ。


ATMもあと3人で自分の番だという時、、


『きゃあぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』

これまで生きてきておよそ聞いたことない叫び声、

と、ドン、という鼓膜への振動を伴う音、、そしてこれは、、硝煙、、の匂い??


振り向けばカウンターの前で一人のショートヘアの女の子がマスクをしたひょろながい身長の男に片手で首を抱えられ、頭には、、、、、拳銃。

本物であることを示すためか天井には男が開けたであろう弾痕が一つ煙を立てて空いていた。



まさにニュースの世界がそこには広がっていた。


---------


『金、、あるだけこれに詰めろ、、急げや、、あと水をくれ』

ドスの聞いた低い声で銃を向けながら、カウンター越しの店員に指示をする男。

『は、はい、、ただいまお持ちします。お待ちください、、』

店員は20代くらいだろう、当然ながら初めて出会う眼前の死の恐怖に声を、手を震わせながら、それでも懸命に対応する。


『おかぁさん!!!!おかぁさん!!ぁあぁ、おかぁさーぁぁ!!!!!ぅあぁあああ!!!』

女の子は6-7歳くらいだろうか、状況も飲み込めてないだろう、本能が恐怖を感じ、叫んでいる。

残念ながらその叫び声は当然男にとっては苛立ちでしかない。


『うっせぇ!!!!!!!!!だまれやぁあああ!!!!!!!!!!』

拳銃を女の子の頭に突きつける。

威嚇だろう。


ただ相手は幼な子、、当然逆効果でしかない。

『うぁ、、うぁああ!!!!!!おかぁさんん!!!おかぁさん!!!おかぁさーーーー!!!!!!!!』


少し離れたところで母らしき人物が同様に女の子の名前を叫びながら号泣している。助けたいのだろう。

泣き叫びながら男に謝罪と娘の解放を懇願している。



子供のためなら親は死ねる。よく聞く軽い言葉だ。

だが本当の死を前にしてそれは虚構でしかない。

生物は我が子を誰よりも愛する本能があるのと同様に我が身もそれ以上に愛している。自分が死ぬと分かっていて、娘を助けるために男に飛び掛かることができるのは漫画の世界だ。

ただ目の前の惨劇を見ることしか出来ない俺はなんとなくそんな事を考えていた。この感情は、、嫉妬か?



男の目は淀んで、血走っていた。

何日も寝てないのだろう、正常な判断ができるのであればそもそもこんな破滅的な行動はとらない。

彼もまた追い詰められていた。食べるものもなく、飲み物もない。お金があればとりあえず飢えを凌げる。

あぁ、早く金が欲しい。ただそれだけの思考が男の行動原理だった。



--あぁ、、うるさいな、なんだこのガキは。

何故??何故なく??まだ痛いことも何もしてないだろう、何故静かにしない?何故店員は早く金をくれないんだ?水もだ。何故俺はこんなにこうなんだ??何故??何故飲み物をくれない?喉が、、喉が渇いているというのに!!!!!水くらいいいだろう!!??

『喉が、、渇いているんだ、、』

男はそう呟いて濁った瞳のまま女の子の頭に張り付いた死刑器具の引き金にゆっくりと指をかけた、その動きがあまりにも静かで、自然であり、


俺は理解した、、数秒先に女の子は撃たれるのだろう。



だから---


『ちょ、待てよ!!』


と◎MAPの物真似かと誤解されそうな単語で静止の声を上げていた。


当然男の視線はこちらに注がれる。


『水、、喉、渇いてんだろ??』

たまたま持っていた未開封の水、男にそれを提示する。

どこに水なんか買うお金あるの?と思うだろうがこれは水道が停められた時に親切な隣人にもらったやつだ。



『あ、、水。サンキュー、、』

男は予想外の水の申し出に戸惑いながらも水を受け取りに俺の方に歩いてくる、、女の子のことは完全に忘れている。本当に喉が渇ききっていたんだな、、

何故か少しだけ男に親近感。

空腹はまだ我慢できる、でも口渇感は、、、辛いよな、、。



あと数歩で俺のとこに辿り着く、フラフラした男。

俺も今この時だけはただ男に水を与えてあげたかった。何か歯車がズレればなるかもしれない自分の未来を重ねているのかもしれない。男に水が手渡される、、、、、、その瞬間、、

『いまだ!!!うおりゃぁああ!!!』

極めて愚かな部外者がヒーローにでもなろうというのか、、男の下半身にラグビーでよくみたことあるようなタックルを、かましていた、、



極めて愚かだと言ったのは男を捕えようとした蛮勇の事ではない。

何故、、下半身にタックルなんだ、、

、、、拳銃を、、持っているのに!!!



あと少しで水が手に入る、それを妨害された男にもはや引き金を躊躇う判断は残されていなかった。

だが、一つ間違いがあるとすれば、、

その引き金はタックルした男ではなく、俺の方を向いていた、、そして、、、


ドンッ!!!!!!!!!


俺の心窩部には綺麗な丸い穴ができていた。

天井と同じように。



-----

死ぬという感覚は不思議な感覚だ。

明らかに俺は死んでいる。

指一本動かせないし、何一つ聴こえない。


ただ、、思考が残っている。

だがそれは己の肉体の中ではなく、明らかに体外。


そうか、、ここからギリギリ生き返った者たちが三途の川とかを伝承している人たちなのかもな。


生前スピリチュアルな世界を一ミリたりとて信じていなかったものとしては、少し驚愕の体験ではある。

初めてVRのヘッドセットつけた時の衝撃に似ているか、、等とくだらない事を考えていると、少しづつ思考がしづらくなってきた。


考えが単語が、うまくまとまらない、霧散していくような、、、

そうか、、これが、、死ぬということか、、、


うん、、----この死に方は、悪くない----


側からみたら最低な死に方、不幸の極みだろう。

だから悪くなかったなんてただの負け惜しみに聞こえるはずだ。

だが、俺は、心から、この死に方は悪くないと思う。

真っ直ぐ生きた。

多分不幸な方だった。

色々と生きづらかった。でも逃げなかった。

生きようと、精一杯頑張った。

最後は確かに運がなかった。

でもあの男に水をあげようとした。それも多分悪ではない、最後まで、正しく生きた。

それだけで俺は悪くなかったと、笑顔で死んでいけると、一つ望みを言えるのならば、生きるという事を、俺は余り好きじゃないみたいだから2度と味わいたくはないな、、霧散する意識の中で最後に俺はそう願った。



-------




小説を書くのがこんなに楽しいとは。

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