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最弱無双のハイスコアラー  作者: |◎〻◎)双葉鳴
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六王睦月は落第生

「起きなさい、六王君!」

「むにゃ……ママ……あと5分」

「誰がママですか! ここは学園ですよ!」


 急速に意識を覚ますと、そこには鬼の形相で『まだママになった覚えはありません』という様相の座学の先生が仁王立ちしていた。


「うわっすいません!」

「あははは」

「ママだってよ、あいつ」

「カーチャンが恋しかったらさっさとおうち帰んな!」

「お前にゃこの学園は無理だって」

「ギャハハハ」


 ちょっと寝落ちしてただけだというのにこの言われよう。


 それというのも、僕がこの学園で一番成績が低いということからきている。

 そろそろ一学期が終わるというのに、いまだに【スコア】を稼げてないというのがあった。


 おまけに母親を恋しいことがクラス全員にバレた。

 なんてこった、もう終わりだ。

 やっぱり僕にこの学園は早かったんだ。


「今の時期にお昼寝なんて随分と余裕ね。そんなに自信があるの? 無能(む↓の↓う↓)君」

「誰が無能じゃい! 僕は六王(む→の↑う↑)だっての!」


 隣の席に座る委員長、佐々木さんは読みは一緒じゃないのと呆れ返る。


「あなた。いまだに学年【スコア】が0じゃないの。せっかく覚醒させた【才能(ギフト)】も活かせないまま。アルバイトに身をやつすばかり。本当に悪いこと言わないから、探索者になるのは諦めた方がいいわよ?」

「うぐ……聞きたくもない言葉をどうも」


 そう、僕はアルバイト生活から一念発起してこのたび探索者育成学園に入学したまではいいものの……覚醒した【才能(ギフト)】があまりにも使えなくて、落第生の名を欲しいままにしている。


 くそぅ、こんなはずじゃなかったのに。

 どこ僕の人生計画は狂ってしまったんだ?


「それでは全員傾注。【スコア】の順位発表を始める」


 【スコア】というのはダンジョンに赴き、モンスターを討伐した際に入手するバスターポイント【BP】

 討伐部位を持ち帰ることで得られる納品ポイント【NP】

 そして、ダンジョン独自の出土品であるトレジャーポイント【TP】に分類される。

 それらをコストに変換し、数値化し、この学園では成績として発表されるのだ。


 我らFクラスは15歳になるまで【才能(ギフト)】を一度も発現させないまま生きてきた生徒が集まるクラス。


 学期末の【スコア】発表次第では、次年度にクラスを上げる人だっている。

 その中で成績優秀者は念願のAクラスへの編入も夢じゃないのだ。うちのクラスで頭一つ飛び抜けて好成績を上げてる生徒といえば……


「一位、4205ポイント。佐々木寧々。BP、NP、TPともに学年内でも上位だ。これからも励めよ? お前はFクラスの誇りだ」


 クラス中がワッと賑わう。

 今俺の横でほくそ笑んでる少女こそが佐々木寧々。

 当然だとばかりに称賛を浴びている。

 僕はこの女が何かにつけて当てこすってくるので非常に気分が悪い。さっきオギャってたのも、いずれ揶揄われる材料になると思うと顔から火が出そうだった。


「そして最下位、0ポイント。六王睦月、貴様はこの学園に来て、一体何をやっているのだ?」

「その、頑張ってはいるんですが……」

「【才能(ギフト)】は発現しているんだろう? ならなぜスコアを算出できない」

「なんかエラーが出ちゃうんですよ、全ての項目で」

「またそうやってくだらない言い訳をして。学年末までにこの調子だったら学長に退学処分に掛けてもらうからな? 我々の本分はなんだ?」

「はい! 世界中に出現したダンジョンの沈静化。そしてトレジャー品を持ち帰り、復興中の世界のエネルギー源を供給することです」

「そうだ。だが、この中で一人だけ成果を出せてない奴がいる。少しでもいい、学年末までに1ポイントでも稼げ。でなければ高い入学金を出してくれた親御さんに申しわけが立たないだろう? 貴様もそこをよく考えておくことだな」


 そう言って、座学の先生が出ていく。

 僕は先ほどの話題で、また弄ばれるんだと思うと少しだけ気が滅入る思いだった。


「さっきの話なんだけど」


 ほら、言ってる側から我がクラスのエースが飛びついた。


「なんだよ、君まで僕のことを嘘つき扱いする気かい?」

「いえ、エラーなんて聞いたこともないものだから」

「事実、エラーになるからいまだに【スコア】の1ポイントすら稼げてないんだ」

「あなたの生徒手帳、壊れてるんじゃないの?」

「え、僕。学園側からもいじめられてる?」

「わからないけど、それを先生方に伝えた方がいいわ。スライムくらいは倒せるんでしょ?」

「効率は頗る悪いけど。倒せるには倒せるね」

「ドロップ品も落ちるのよね?」

「あー、それは内緒」


 佐々木さんの視線がスッと細められる。疑惑の目だ。

 正直、それがドロップ品であるかは僕には判別できてない。

 僕の【才能(ギフト)】はダンジョンテイム。

 ダンジョンの中でしか効力を発揮できず、ダンジョンの外に出たら、培ってきた全てがリセットされてしまう悪夢みたいな【才能(ギフト)】だった。


「原因、それじゃない?」

「やっぱりそう思う?」

「だからアルバイトしながら生活してるのね。【スコア】さえ稼げれば、重い課税制度から抜けられる。それが探索者に許された特権だものね」

「その代わり、死地に飛び込む勇気を試される。そのための探索者特約。この学園では仮免許を交付されるわけだけど、それが使えない時点で、僕はアルバイトするしかないわけ」

「死亡率が極めて高い職業であるというのは確かね。だからこそ、あなたには向いてないと思うんだけど」

「僕にだってやりたいことや、守りたい人がいるんだよ。そのためにも、お金がいる」

「そう、まぁ頑張んなさい」


 どこか説得を諦めたような顔で、僕を見送る佐々木さん。

 まぁ、僕としてもさっさと稼げるようにはなりたいものだ。

 とある目的のためにも。

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