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あの日の記憶

作者: 音無悠也

私の家にはいつからあるのかしれないけど、大きな古時計がある。

お母さんやお父さんに聞いても、いつからあるのかは分からなかった。

おばあちゃんに聞くと


「おじいちゃんなら知ってたんだけどねぇ…」


と、優しい笑顔で頭を撫でてくれた。

少し意地悪そうな顔もしていたけれど。


「もし知りたかったら、書斎に行ってみれば何かわかるかもねぇ」


そう言って、おじいちゃんの書斎に連れて行ってくれた。

おばあちゃんは、書斎の外で待っているからと私一人で頑張って探してみることに。

まだ私は中学に上がったばかりなので、いくつか読めない漢字があった。

けどその中には、簡単な文字で書かれた手帳があった。


「なんだろ?だいぶ古そう…」


表紙の皮もだいぶ年季が入っている。

何度も開かれたりしたのか、不思議と手に馴染む。

どうやら、この手帳はおじいちゃんが子供の頃からあるものらしい。

ちょくちょく、おじいちゃんの名前が出てくる。

言い回しとかが、教科書に出てくるような文章だから時々、読みずらいけど…。


一枚だけ、誰かわからない字で書いてある。


『この手帳があった棚の裏を見ろ』


この本があったのは、普通の本棚に見えるけど…。

と、目線を落としてみるとちょうど、私の身長くらいのところに少しだけ出っ張ってる部分があった。

押してみると、なんの抵抗もなく嵌る。

すると棚の下の部分が空いて部屋につながっていた。

ひみつの部屋だ!!


そこにはおじいちゃんのお父さんの頃からのことが日記で書かれていた。

読めない字も沢山あったけど、読んでわかったのはあの古時計はいつからあるのかわからないこと。

いつの間にかあったようだ。

けど、古時計の裏に何か書いてあるらしい。


部屋を出て、古時計を見に行く。

古時計の元につくと、おばあちゃんがいた。

なぜか、すごく穏やかな顔で撫でて眺めている。


「何してるの?」

「そろそろ、お別れの時かなってねぇ」


そんな、おばあちゃんの体は透けていた。

その時ふと、手帳の一文を思い出す。


『もしかしたら、あの時計はわしらを守ってくれてるのかもしれない』


もしかしたら、あの時計を通しておじいちゃんは見守っているのかもしれない。

そして、おばあちゃんは顔を見せてくれたのだろう。

いつの間にか、消えていたおばあちゃんも。

気になっていた古時計の裏を見ると、おじいちゃんたちが子供の頃とお母さんたちが子供の頃の写真が貼られている。


「どこにいるのぉ〜?」


母さんが呼びにくる。

古時計を見ている私を見て察したのか


「私たちのお守りよ」


そう言って、おばあちゃんのように撫でる。

その古時計は今でも時を刻んでいる。

今では、私の娘が不思議そうに見つめている。


「この古時計、いつからあるの?」


そんな問いをしてきた娘に、私は答える。


「いつからあるのかしらね」


その答えを聞いた娘は書斎に向かっていく。

あの時の私のように。

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