5話 ゴブリン討伐
「へっ? この綺麗な人がエルドラなの?」
「そうだぜ。ビビるよな」
ザックと待ち合わせ場所にしていた宿屋で出会うと開口一番にそう言われる。そりゃあ、背丈がだいぶ変わってるわけだからびっくりするわな。
「まいっか。取り敢えず3人部屋取っておいたからね。そろそろ晩御飯もできるし今日はもう宿で休もうか」
「重ね重ね悪いな。金はいずれ返すから」
「良いよ良いよ。エルドラが居なかったら僕たちトレントに殺されてたかもしれないからね」
「まあ、返してくれたらありがてえけどな」
快活にそう笑い飛ばすとザックとジャンが宿屋へと入っていく。俺はポケットから取り出した鉄のプレートを取り出し、少し感慨に浸る。思えばこれが初めて手にした俺の証なんだ。今まで何者か定まらず、ただただ居ないものとして扱われていた俺に突然できた新しい肩書き。龍王の息子なんてのよりも魅力的なものだ。
「冒険者か、良いな」
「何してんの、エルドラ。ご飯冷めちゃうよ」
「すまんすまん、すぐ行く」
ザックに促された俺は自分のプロフィールが書かれた鉄のプレートをポケットにしまって宿屋の中へ入るのであった。
♢
「エルドラに合いそうな依頼は~これかな?」
冒険者登録を済ませた次の日の早朝、依頼書が張り出されている掲示板にてジャンとザックと一緒に依頼を選んでいたところ、ザックが一枚の依頼書を手にして俺に差し出してくる。因みに今回、俺は一人で依頼に挑むことにした。ザックとジャンが一緒にやろうと言ってくれたのだが、断った。これ以上二人に迷惑をかけられないと思ったからだ。
「ゴブリン5体の討伐か」
天界には居ない魔物だな。似たような名前の奴は居たけど。ザック曰く、下界での初心者向け魔物らしい。
「普通だったら銅級以上じゃないと討伐依頼はやらないんだけどエルドラだからね。一個上の階級の依頼が丁度いいんじゃないかな?」
冒険者は基本的にはその等級の依頼しか受けないのだが、一応1つ上の等級の依頼までは受けられるらしい。
「ありがとう。せっかくだしこの依頼を受けてみるよ。二人はどうするんだ?」
「俺たちはこの銀級の依頼を受けるぜ」
ジャンが見せてくれた依頼の内容に書かれているのはオークの村の調査。オークの討伐自体は銅級の依頼書としてぶら下がっているが、オークの村の調査となるとワンランク上がるらしい。長とかが居るかもしれないからか?
「なんか最近、オークの動きが活発になってるらしくてな。その分、こんな調査依頼ですら依頼料が高騰してるんだ」
「活発って危ないんじゃないか?」
「俺達ゃ銀級冒険者だぜ? 危なくない仕事なんてねえよ」
言われてみればそうか。銀級ともなれば討伐依頼しかなくなってくるからな。
「それじゃまた宿屋で会おう」
バームの町の前で二人に別れを告げて俺は一人、依頼場所へと向かう。ていうかゴブリン討伐の依頼書を受付の女性に見せたら死ぬほど止められたんだが。初心者冒険者が討伐依頼を受けて帰らぬ人となるのが常らしい。ジャンとザックが居なければ薬草拾いの依頼に無理やり変更させられそうだった。
それから少し走って依頼場所へと到着する。ゴブリンはえーっと……?
「そういえばゴブリンの姿を知らないな。鑑定」
鑑定魔法を使って茂みに隠れてこちらの機を窺っている魔物たちの名前を確認する。ふむ、ホブゴブリンか。ホブっていうのがよくわからんが取り敢えずこいつらがゴブリンだな。
「よし、覚えたぞ。こいつらを狩っていけばいいんだな」
両腕に白い焔を灯す。攻撃魔法は覚えておらず、ギルドから支給された討伐証明を剥ぐ用のナイフしか持っていないため俺の攻撃手段は基本、この龍の焔に限られている。
「近くにいるこいつらから倒していくか」
茂みに隠れているゴブリンに接近して焔を纏った拳を叩きつけると、隠れていた3匹共が消し飛んでしまう。
「やべっ、討伐証明がなくなっちまった。次からは気を付けないとな」
そうして俺は見つけたゴブリンを手当たり次第に狩っていくのであった。
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