表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/18

4話 受付

 冒険者ギルドの中に入ると、屈強そうな見た目をした人間たちの姿が目に入る。人間一体分はあろう大きな剣を担ぐ者であったり、人間の体躯を軽く超えた魔物の遺体を持っている者だったりと中々に逞しい。こいつら案外、龍と引けを取らないんじゃないか。


「エルドラ、冒険者登録するならこっちだぜ」


 くいっくいっとジャンが親指を向ける先には同じく屈強そうな人間たちが数人並んでいる場所であった。その前方には冒険者ギルドで働いているのであろう者達が5人ほどテーブルを介して冒険者たちと話をしている。


 なるほど、天界で言う所の何をつかさどる神になるのかを決める会場での受付みたいなものか。まあ俺は聞いたことしかないんだけどな。


 ジャンに連れられるままその列の最後尾に並ぶ。ていうかさっきからやけに視線を浴びている気がするんだが気のせいか?


「おいおい、こんなとこにそんなガキを連れてきてんじゃねえよ」


 列の最後尾に並んでいると不意に後ろから誰かを(たしな)めるような声が聞こえてくる。15歳は確か下界では成人の筈な上にジンも無視してるし俺達の事じゃなさそうだな。すぐ後ろから声がかかったからヒヤッとしたが。


 そう思っていると、横で並んでいたジャンの肩に分厚い手が載せられる。そこには先程の声の主であろう男が立っていた。


「無視してんじゃねえよ」

「ああ、俺らに言ってたのか。気付かなかったぜ」

「気付かなかったぜじゃねえだろうが。ここは遊びの場じゃねえ。今すぐそこのガキを連れて帰りな」


 うん? こいつ、ガキってのは俺のことを言っていたのか?


「いや、俺15だが」

「んなわけがねえだろうが! どう考えても10歳の小娘にしか見えんわ!」


 はっ? 10歳の小娘? まあ確かに龍だから性別はどっちにでもなれるにしろ10歳とはどういうことなのか。そこで俺はジャンとザックが会った当初に言っていた事を思い出す。そうか、やはり俺は幼く見えるのか。


「このままでも良いと思ったが、やはり幼く見えるのは欠点だな。成長魔法(グロウ)


 見た目を年相応に見える様にしようと思った俺は自身に魔法をかけ、背丈をジャンと同程度まで伸ばす。


「これでどうだ? 少しはマシになっただろう?」

「はっ?」


 気だるげに男を見やるとポカーンとこちらを見ている。周囲の視線も先程よりもさらに強くなった気がする。


「え、エルドラ、どうなってんだその魔法?」

「どうなってんだもくそも無い。成長魔法を自分にかけただけだ」

「俺の知ってる成長魔法はせいぜい植物を成長させるのしか聞いたことがないんだが……」

「それって単純にあまり自分に使う者が居ないからだろ? 俺だって自分に使ったのは初めてだしな」

「まあ、それでいっか。てことで分かったかおっさん? エルドラは俺と同い年だしなんならこの見た目で男なんだぜ」

「あ、ああ。何が何だか分からなくなったしもうどうでも良いぜ。ハハ、ハハハハ」


 先程までの勢いはどこへ行ったのやら、話しかけてきた男はそのまま列に並びもせずにギルドから出て行ってしまう。


「おい、エルドラ。あんまりこれからは魔法とかこういう人が大勢いるところでは見せるなよ? 魔法を使えるってだけでかなり目立つんだからよ。お前の魔法は特にな」


 男が去った後、小声でジャンに注意される。下界では魔法すら珍しいのか。


「そうなのか。気を付けるよ」


 それから徐々に前に並んでいる人の数も減っていき、とうとう俺達の番となる。


「銀級冒険者のジャンだ。この依頼達成の報告で来た」


 そう言ってジャンは一枚の紙と銀色に光る板を差し出す。この銀色の奴がギルドカードって奴か。


「はい、確かに依頼主から連絡が来てますね。オッケーです」


 やや軽めの口調で受付の女性が紙に判を押す。


「あとこいつの冒険者登録をしたいんだが」

「はーい、名前を教えていただけますか?」

「エルドラだ」

「エルドラさんね。性別は?」

「男だ」

「はーい男性ですねー、男性!?」


 なぜか同じ言葉を繰り返して二度見される。別にどちらでもいいが今の形態は男だしな。


「す、すみません。綺麗な女性の方だなと思っていたのでつい驚いてしまいまして」

「別に気にしてない」

「そう言っていただけると助かります~。ではエルドラさんのギルドカードとジャンさんの報酬を用意しますので少々お待ちください」


 そう言って受付の女性は奥へと去っていき、少ししてから鉄製のギルドカードと報酬金を持ってきて現れるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ