2話 冒険者
「へえ~、二人とも冒険者って奴なのか」
道すがら、下界の情報を集めるべく二人から色々と聞いていた。この世界では冒険者なる職業が最も主流であり、下から順に鉄級、銅級、銀級、黄金級、白銀級、それ以上に分かれているらしい。白金級よりも上のランクについては各々に違う宝石の名前のランクが与えられるらしい。とはいえ前例が5人しかいないらしいけど。
「そうなんだよ」
「俺達はこれでも銀級なんだぜ? 凄いだろ?」
「上から3つ目ってことか。凄いじゃないか」
鼻高々に自慢するジャンに対して素直に賛辞を送る。冒険者は基本的には銅級が多いと言っていたし、恐らく相当な手練れで無ければ銀級まで上がることはできないのだろう。
「だろだろ? 俺達の年代で銀級まで到達してる奴なんてホントに数えるくらいしかいないんだぜ?」
「そうなのか。まあ確かに二人とも若そうだもんな。何歳くらいなんだ?」
「僕もジャンも15歳だよ。2年前から冒険者をやってるんだ」
「そうだったのか! 二人とも俺と同い年なんだな」
同い年だというのにかたや成功した者でかたや追放された者……この世の格差を感じる。そう思ったら目の前の二人が光り輝いているように思えた。
「えっ!? 15歳なの!? もっと若いかと思ってた」
「だよな? 俺も10歳くらいかと思ってたぜ」
ふむ、今の俺はそんなに幼そうに見えるのか。とはいえ人化の姿は龍の姿と同じで基本的には成長とともにしか変化しないから変えられないんだよな。一応、変装魔法を使えば姿は変えられるが変身魔法と違って魔力が途切れれば解けてしまうから意味ないしな。
「俺も冒険者になってみようかな」
「良いじゃん! やりなよ! さっきの魔法の練度を見た感じ、相当強そうだし、エルドラだったら僕たちなんてすぐ追い抜かれそうだよ」
「いやいや、ザック。流石にそいつは無理さ。だって俺は実践をしたことがないしそれどころか攻撃魔法すら碌に使ったことがないからな」
「そんなんでどうやってこの森に入ってこられたんだよ。ここ、魔物だらけだぜ? さっきも突然レッドウルフが襲ってきただろ?」
「たまたま魔物に気付かれなかったんだ」
「ホントかよ? まあ、悪い奴じゃねえってことは分かったから今更怪しい要素が増えたところで何とも思わねえけどよ」
「そう言ってくれると助かるよ、ジャン」
ふむ、この二人に森の奥で出会えたのは幸運だったな。天界では虐げらればかりだったから案外下界での暮らしの方が俺にはあっているのかもしれない。
「あれ? おかしいな。もうそろそろ街道が見えても良いと思うんだけど」
「おいおい、迷ったのか?」
「いや、そんな筈無いと思うんだけど」
ザックが立ち止まり、地図を確認し始める。こっちの方角だよな~とぶつぶつと呟きながら地図をなぞっているザックとジャンを尻目に俺はとあることに気が付く。
「なるほどな。こいつが原因か」
そういうと俺は近くに生えていた巨大な木に向かって、白炎を纏った拳を叩きつける。俺の攻撃を食らったその木はグゲエエッといううめき声をあげてその場で焼き崩れていき、先程までの光景がガラッと変わり、目の前に街道が現れる。
「さっきから妙についてくるなとは思っていたが、こいつが犯人だったみたいだな。ん? 聞いてるか?」
二人の方へ話しかけても一向に反応が無かったため、振り向いて問い返すと、二人ともが丸い目でこちらを見つめていた。
「えっ? 今のなに?」
「うん? だから魔物だって……」
「そうじゃなくて今の魔法のことだよ。そんな魔法見たことない。それに軽く都市級の魔物を倒してたし」
ああ、そうか。龍は魔法とは関係なく各々の属性に応じた炎を操ることができるが、人間はできないのか。
「こいつが都市級? その割にはあんまり強くなかったな」
先程二人から聞いていた話だと一般級、村級でその次が都市級のはずだからもっと強い奴だと思ったんだがな。この程度が都市級なら天界にはゴロゴロいることになる。
「あ、案外やるじゃん! エルドラ! けどあんまり調子のんなよ? 俺だってやろうと思えばそんくらいはできるしな!」
「お、おうわかった」
「エルドラについては驚くことがいっぱいだね。取り敢えずエルドラのお陰で目的の街道に着けたから町に向かおっか」
こうして俺は下界に来て初めての町へと思いを馳せながら足を進めるのであった。
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