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1話 忌まわしき白い龍

 俺の名はエルドラ・ドラグロード。この天界において最も偉い五天の一柱であり、龍族の支配者でもある龍王シャガラ・ドラグロードの息子である。


 しかし龍王の息子であると同時に龍族にとって災いの色として嫌煙されている白色の体を持つが故に一族からは忌み嫌われている。父親であるシャガラからすらも無視され続け、城では飯は出るものの基本的には居ない者として扱われるようになっていた。


 そんなある日、天界を前代未聞の大地震が襲い、多くの龍や天使たちが被害にあった。地震など小さいものですら起こるはずのない、下界でのみ起こるものだと思われていたのが天界でそれも大規模に起こったのである。そうしたら当然矢面に立つのは災いの子扱いを受けている俺である。


 龍たちからだけではなく天使たちからすらも罵声が浴びせられる中で久しぶりに父から呼び出しがあり、現在、龍王の間へと向かっているところである。


「入れ」


 龍王の間へと続く大扉の前で少し待たされた後、家来の龍に促されて中へと入る。扱いはまるで罪人みたいだな。そんなことをぼんやりと考えながら広々とした龍王の間を歩いていく。目の前に居る他の龍よりも一回りも二回りもでかい黒龍こそが俺の父、シャガラ・ドラグロードだ。


「来たか」

「はい、父上」


 久しぶりに顔を見たというのに何の感情も籠っていない父の言葉に落胆する。流石に息子である俺に対してこの前起こった大地震の罪を押し付けはしないだろうと少し期待していたのが今の受け答えでなくなったのが分かったからである。


「先の大地震、民が貴様のせいにしているのは知っておるな?」

「はい、存じ上げております」

「皆は大地震が起こったのは貴様のせいだと言っておる。大地震の罪を償わせよと。何かこれに対して言いたいことはあるか?」

「……ありません」 

「だろうな。災いの色を持つ貴様が居るからあのような事態に陥ったのだ。なら我が言いたいことは分かるな?」


 そう言うと父はこちらをジロッと睨みつける。


「貴様を天界から永遠に追放する」

「は?」


 その瞬間、俺の周りの床が白く輝き始める。何らかの魔法陣があらかじめ描かれていたのだろう。


「ちょっと待って……」


 言い終わる前に魔法が発動し、気が付けば俺は鬱蒼とした森の中に一匹佇んでいた。


「……嘘だろ。追放だと?」


 牢につながれるくらいは覚悟していたがまさか重罪人が受けるほどの罰を受けるとは夢にも思わなかった。結局父は災いの子と呼ばれる俺のことを排除したかったのだろう。何もないまま俺を追放すれば自身の息子を追放するなんてとどこかで言われるかもしれないが、地震の罪をかぶせて俺を追放すれば何も言われない。


 父にとって地震が起こったのはある意味で好都合だったのだろう。


「俺が何をしたってんだよ」


 生まれた時からこの真っ白な体に対して色々と言われてきた。父である龍王の面目のために大半は陰口だったが、中には面と向かって蔑んでくる者もいた。そんな誹謗を受けてもなお、何もせずに耐え抜いてきたというのにこの扱いだ。


「せめて一人だけでも噛み殺しておくんだった」


 天界では見られない青々とした空を見上げながらポツリとそう呟く。どうせ追放されるのならば、そんなことを追放された後に考えても意味はないというのに考えずにはいられない。唯一の救いは大して天界への執着がなかったことだろうか。ただこの何もない状況にはホトホト困るが。


 木々に囲まれて暫く呆然としていると、前方から何か声が聞こえてくる。不味いな、ここは下界だから龍の姿のままだと騒ぎになってしまう。


変身(トランス)


 俺は慌てて自身に変身魔法をかけてなんとなく覚えていた下界にいる生物の姿へと変身した。確か龍を信仰しているヒトとかいう奴だったかな? 長い白髪に龍であった名残があるな。


「本当にこっちで合ってるの?」

「う~ん、地図では確かにこっちなんだけどな~」


 少しして声の主が姿を現わす。どうやら俺が変身したのと同じ種族っぽいな。下界の事が全く分からなかったから都合が良い。こいつらに話を聞いてみるか。


「そこの者、少し良いか?」


 早速、その二人組に声をかけるも、どういう訳か俺の姿を見て固まってしまう。あれ? 俺としたことが変装魔法ミスってたか?


「うん? どうかしたか?」

「い、いや、こんなところで人と会うなんて思ってなかったからさ。それにあんた裸だし」

「なるほど、そう言えばヒトっていうのは服を着ているんだったな。装備魔法(イクイップ)


 俺は目の前に居る青髪の男の服装を参考にして装備魔法を使う。


「よし、これで大丈夫だな」

「あ、ああ」

「それで聞きたいんだが実はこの森で迷っていてな。ここからどうやってヒトの住む所へ行けるんだ?」

「ああ! そう言う事だったんですね! それなら僕たちも向かっているところですのでご案内しますよ!」


 俺が尋ねると茶髪の男の方が身を乗り出してそう言ってくる。その瞬間、慌てて青髪の男が茶髪の男の袖を引っ張って少し離れたところに行く。


「おいおい、ザック。正気か? こんなとこで裸でいた男なんてどう考えても怪しいじゃねえかよ」

「でも困ってるじゃないか。もしかしたら追剥にでもあったのかもしれないだろ?」

「そうだけどよ」

「なら話はもう終わりだね」


 うん? どうやら話し合いが終わったようだ。茶髪の男がこちらへと戻ってくる。


「すみませんね。うちのジャンがちょっと心配性なもので」

「いやいや、気にしないでくれ。こんなところに一人でいる俺が怪しいのは重々承知だからな」

「そう言っていただけると助かります。では先程申し上げたようにご案内しますね?」


 そうして俺達は軽く自己紹介を済ませた後、行動を共にするのであった。

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